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11-15-2023

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SCS CLUBSTAFF INTERVIEW Vol.2 『東郷建峰×深瀬ナシーム 』

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ユニフォーム、グッズ、ポスター、カード、SNS画像まで……SC相模原のデザインを支えるコンビがいる。

2014年からクラブに関わる東郷建峰さんと、経営参画していた株式会社ディー・エヌ・エーから出向している深瀬ナシームさん。

年齢もキャリアも大きく異なる2人は、お互いの強みを生かし合いながら、膨大な量のクリエイティブを創り出している。

「SC相模原で働きたくてアピールしまくった」(ナシーム)


──SC相模原のデザインを担当する2人にうかがっていきます。まず、東郷さんが相模原に関わるようになったのは?

東郷 きっかけは、2014年シーズンの最終節に、相模原で働いていた下村泰司さんから「クラブ内にデザインをできる人がいないからチラシを作ってほしい」と依頼されたことでした。1シーズンを通して一緒にお仕事をするようになったのは2015年からで、関わってからもう9年になります。子どもで言えば、もう小学3年生になる歳ですよ(笑)。

──それまで、スポーツに関わる仕事はされてきましたか?

東郷 昔、他のJクラブでスローガンを筆で書いたことがあるんですけど、それが初めてスポーツに関わった仕事でした。鹿児島ユナイテッドFCのエンブレムとユニフォームのデザインをさせてもらったこともありますけど、相模原のようにシーズンを通して携わる経験はそれまではなかったですね。

──ナシームさんはいつからクラブに携わっているのでしょうか?

ナシーム 僕がこのクラブで仕事をするようになったのは、2022年の3月からです。相模原との最初の接点は2021年のサガミハラエナジーフェスでした。「DeNAがSC相模原と一緒にどんなことをしているのか」とお客さんとして観戦してみたら、チームのことがどんどん好きになっていきました。運がいいことに自分の部署の上長が相模原にも関わっているということを聞いて、それからはサッカー好きをアピールしまくって(笑)。

──相模原に関わる前はどんな仕事をしていましたか?

ナシーム 2016年にデザイナーとしてDeNAに新卒入社して、主にアプリやゲームのデザインをしていました。

──ナシームさんは生まれも育ちも日本ですか?

ナシーム 父がインド人、母が日本人なんですが、地元は高井戸(東京)です(笑)。日本で暮らしている時間の方が長いですけど、中学生の時はニュージーランドにいて、大学の時はイギリスの学校に通っていました。

──日本で暮らしていた時もよくJリーグを観に行っていたのでしょうか?

ナシーム それがJリーグは観に行ったことがなくて、プレミアリーグとセリエAの試合ばかりを観ていました。特に、トッテナムがすごく好きで。

──そんなナシームさんが、なぜSC相模原のファンに?

ナシーム 初めて観に行ったJリーグがさっきお話しした“エナフェス”で、隣に座っていたコアサポの方が応援の仕方を僕に教えてくれたんです。「優しい、熱いサポーターがいるクラブだな」とSC相模原のことを好きになっていきました。

──2人が初めて会ったのは?

東郷 シーズン前の写真撮影の時です。第一印象は「若くてこんなにいい子がいるんだ」と。おじさん目線ですが(笑)。

ナシーム サッカーの仕事をしている人に憧れていたので、選手に指示を出している東郷さんの後ろ姿を、目をキラキラさせながら見ていました(笑)。今、こうやって一緒に仕事ができるのが楽しくてしょうがないですね。

──ちなみに、2人は仲がいいんですか?

東郷 僕は兄弟みたいな関係だと思ってます。年齢は15歳も離れてますけど(笑)。ナシームくんとはウイイレ(eFootball)でオンライン対戦をすることがあるんですが、結構負けてます……。

ナシーム ゲームをしてる時は先輩・後輩は関係ないので、ガチで勝ちにこだわってます(笑)。お互いの仕事がひと段落した後、夜中の12時からキックオフすることも……。


「ユニフォームデザインは特別なこと」(東郷)


──相模原のグッズは多種多様な制作物があります。そもそものコンセプトはどのようにして考えられているのでしょうか?

東郷 昨季まで、J3リーグのロゴがJ1、J2と違ったじゃないですか。それが悔しくて、「デザインだけでもJ1、J2と並ぶぐらいのものにしてやろう」というのが根底にありました。いろいろな海外のクラブとか、バスケや野球のチームを参考にしながら、このクラブらしさを出せないかと考えてやっていました。クラブ創業者の望月重良さんがアーセナルが好きだったので、テイストを取り入れることもありましたね。

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──東郷さんはユニフォームデザインも手がけています。

東郷 僕がデザインをしたのは2019年、2020年、2021年の3シーズンですね。2019年の迷彩柄は、「イタリアのチームで採用していたクラブがあったけど、緑の迷彩は見たことがないな」ということでデザインしてみました。通常の迷彩だとちょっと彩度が薄くてどちらかと言えばカーキっぽいですけど、それを相模原のカラーでやってみたら面白いんじゃないかと。でも、ただの迷彩柄というのもつまらないので迷彩の柄が全部六角形でできているようにして、自分のなかで「新しいものができたな」という感覚でしたね。ちなみに、2020年のユニフォームも水玉じゃなくて六角形でできているんです。

──六角形だったんですね!

東郷 そうなんです(笑)。六角形がドットになって並んでいて、エリの色を初めて白に変えたシーズンでもありました。相模原らしく、ワンポイントにこだわりを入れてデザインしていました。ユニフォームは選手もサガミスタも毎試合身につけるものですし、そのシーズンの象徴になるので、そのデザインに携われるのは特別なことですよね。「責任重大だな」と感じつつも、責任を感じすぎることなくやってみたら面白かったです。

──「東郷さんの魂が吹き込まれている」と言っても大袈裟ではないですよね。

東郷 みんなに見てもらったり、買ってもらうものなので、一つ一つに自分の気持ちを込めて作っています。


「デザインコンセプトは大きく3つ」(ナシーム)


──SC相模原では今季から「デザインコンセプト」という細かいガイドラインを定めたそうですが。

ナシーム コンセプトを考えたのは僕と東郷さんと、DeNAの藤永(忠男)さん、黒田(知誠)さんですね。この4人で「デザインチーム」として動いていて、「今季はどういったものを伝えていこうか」とガイドラインを何度もすり合わせて決めています。デザインに迷ったり悩んだりしても軸があるので軌道修正できますし、ブレることがないですね。

コンセプトは主に3つに分けられるんですが、一つは会社に関するコミュニケーションです。SC相模原からの会社案内やスタッフの名刺デザインは、“オフィシャル感”を出すためのものにしています。

もう一つは選手や試合、観戦体験をよりよく見せるもので、そこにキーワードを与えています。今季はフレッシュな若手選手がたくさん入ってきたシーズンなので、力強さや勢い、常に溢れ続ける熱量を伝えようという目的があります。

最後の3つ目は、街との接点に関する制作物に対してです。例えばファンクラブやファンに向けたイベント、ガミティを使ったイベントの“トンマナ”も考えました。人間味を感じられたり、明るくて楽しさが感じられたり、チームだけでなく選手も応援したくなるようなコンセプトを意識していました。

──仕事の内容については、それぞれ違う分野を担当しているのでしょうか?

ナシーム そうですね。基本的には僕がディレクションをしていて、東郷さんは主にデザインをしています。お互い全く違う強みがあると思っていて、東郷さんは似顔絵もなんでも描けてしまうんですが、僕はイラストが苦手で。その反面、写真の加工に関しては自分の方が得意で、お互い助け合って一緒にものづくりをしています。

東郷 依頼を受けたものに対して、どういう方向にするかナシームくんと話し合ってから一度僕の方で形にして、それを見ながら2人で「やっぱりこうしよう、ああしよう」とブラッシュアップしていってます。その上で担当者の方の意見も取り入れて、さらに揉んで完成に近づけています。

「開幕前は時間との戦い」(東郷)

──今季は元日本代表選手で人気解説者でもあった戸田和幸氏が監督に就任したことが大きなトピックでした。開幕前は顔も名前も知られている戸田監督を前面に押し出していることが多かったですが、どんな狙いがあったのでしょうか?

ナシーム そうですね。チームのなかで一番名前が知られているのは戸田監督で、そこはしっかり見せることを意識していました。でも、新しい選手たちのこともサガミスタに早く知ってもらいたかったので、みんなが正面を向いた写真を使ってわかりやすく見せようと東郷さんと話し合って決めました。

東郷 出来上がったポスターや駅に飾られたデザインを見て「最初に決めたコンセプトでよかったな」と改めて思いましたし、楽しみでしかなかったですね。ユニフォームも一緒に見せるデザインにできたと思いますし、背景もいつもと違った変化をつけられたので「サガミスタからどう見られるかな?」と思って見ていました。

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──SNSのビジュアルも試合ごとやイベントごとに作られていますが、これもどんな流れで形になっているのでしょうか?

ナシーム それも先ほどお話しした3つのデザインコミュニケーションのコンセプトからピックアップして作っています。今季で言えばフレッシュな印象のものにしたい狙いがあるので、背景などに白色をできるだけ多くして新鮮味や清潔感があるようなものにしました。あとは選手全員の写真に同じような加工をしています。SNSは五月雨式に投稿されますが、いつ見ても「これは相模原の投稿だな」というのを感じられるように。

──SNSだけでも相当な量のデザインをされていますよね?

東郷 そうですね(苦笑)。

ナシーム 量は半端ないですよね……。

東郷 会場周りに飾る選手のノボリのデザインは一気に作りましたけど、SNSの誕生日投稿は誕生月ごとに作業を分けて作りました。


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──例えば、エナジーチップスのカードも2人が手がけたのでしょうか?

東郷 エナジーチップスのカードが一番大変でしたね(笑)。

ナシーム 「どういうデザインだとかっこよくて集めたくなるか」とか、「選手のサインを入れたらレア感が出るんじゃないか」など東郷さんと話し合って決めました。宣材写真を撮影する時には2人でイメージしていた構図を伝えて、それ用に写真も撮ってもらえたので、事前に行動できていたことがよかったです。

東郷 開幕前は他にも用意することが多くて、時間との戦いです。大変だったよね。

ナシーム 猫の手も借りたいぐらいでした(笑)。今季は今までと比べていろいろな施作がかなりアップグレードされて、その繋がりでデザインチームの作成する量も昨季と比べて倍になっています。東郷さんが「ヒーヒー」言っている状態でしたね。

東郷 いやいや、全然大丈夫ですよ(笑)。


「家族の一員として仕事をしたい」(ナシーム)


──後半戦に向けたポスターは、どんなコンセプトで作られたのでしょうか?

ナシーム 1年を通しての「フレッシュさ」というメッセージはキープしつつ、後半戦の告知ポスターは広報の高佐さんから「選手11人とガミティを入れたい」というオーダーをもらって、それを元に東郷さんと話し合って作りました。

東郷 高佐さんが描いたラフをそのままデザインするんですけど、ラフが命ですね。

──高佐さんが描いたラフを見たことがありますけど、“結構ラフな”ものじゃないですか?

東郷 ラフでもラフがあることが大事なんです。入れてほしい言葉を文章だけでもらうやり方もありますけど、ラフのあるなしでは1と100ぐらい違うので本当に助かっています。

高佐 私としては天才的に描けてたと思ってるんですけど(笑)。

東郷 うん、伝えたいことが伝わるラフ、伝わらないラフがありますけど、高佐さんは伝わるラフを送ってくれます(笑)。

高佐 私が思った通りのものを東郷さんはデザインしてくれるので、本当にすごいんです。ガミティのLINEスタンプも、私のラフをそのままデザインしてもらってます。

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──ちなみにガミティの生みの親も東郷さんなんですか?

東郷 原案は一般公募です。そのイラストをJリーグっぽいマスコットへと書き起こしました。愛着がすごく湧いていて、今は「この子を悪く言ったらどうしてやろうか」と思うぐらいです(笑)。

──もはやガミティの親じゃないですか。

東郷 たくさんの中の1人だと思っています(笑)。自分が関わったマスコットが愛されていて、僕もうれしいです。もちろん、ガミティがいろんなところに出向いてくれているおかげもあると思います。

──今のSC相模原は、東郷さんとナシームさんのように元々クラブに関わっていた人、DeNAとの繋がりで関わっている人が融合している期間だと思います。

東郷 僕が最初、相模原に入った時はデザイナーとして“ただデザインをしていただけ”でした。それがある時、ホームゲームで抽選会のお手伝いをすることがあったんです。毎週来てくださっている人と出会って「このデザインをどう思っているか」とリアルに知れたことで、一緒にSC相模原を作っている感覚になりました。

2021年にDeNAが参画してきてナシームくんと一緒に仕事をするとなった時に、ナシームくんも地域や人とのつながりを大事にしようという考えでデザインを作っていたんです。自分と同じ方向を向いているからこそ、すごくいいコンビで仕事ができているんだなと感じます。

ナシーム 先ほど東郷さんが言ったように、デザインのガイドラインは大事なことですけど、それはあくまで手段であって、「全員のサポーターと家族のように接することができれば、このチームの成長につながるんじゃないか」と初めて相模原の試合を見た時から感じています。DeNAからデザイナーが出向いてきて一緒に仕事をしているというのではなく、「家族の一員として仕事をしたい」という気持ちで東郷さんとやれているのが一番大きいです。


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