
2017明治安田生命J3リーグ第13節
2017.06.18 15:00KICKOFF@相模原ギオンスタジアム
SC相模原1−0藤枝MYFC
[得点]相模原:5分徳永裕大/藤枝:−
|思い切りの良さが生んだ徳永のJ3初ゴール
両チームのフォーメーションであり、選手の並びを確認し終えようかという前半5分だった。4−1−3−2システムを採用したSC相模原は、左サイドから大きく逆サイドへと展開する。これにより3−4−2−1システムを用いる藤枝MYFCを揺さぶると、攻撃時は右SBの辻尾真二が高いポジションを取り、最終ラインが3バック気味になる可変システムが機能した。CBの右に位置する米原祐から、サイドに張る辻尾へと縦パスが入る。戻りながらパスを受けた辻尾は、ダイレクトで素早く前線に運ぶと、ジョン・ガブリエルがヘディングでさらに前へと送った。これを徳永裕大がFWを追い越す動きで拾うと、滑り込んでくるDFを交わし、左足でゴールネットを揺らした。
SC相模原は流れるような攻撃で、前半5分という早い時間帯に貴重な先制点を奪取。徳永にとって、それは記念すべきJ3初得点だった。
「今日はボランチではなくサイド、よりゴール前に関われるポジションだったので、前半立ち上がりから、相手SBとのスプリントでは負けないようにしようと、試合前から思っていた。(得点は)まず、そのスプリントで相手SBを置いていけたというところと、ジョンから良い落としが来たので、前を向いた瞬間にはもう、シュートに行こうと決めていた。右利きなんですけど、相手が滑り込んでくるのが早くて、それも見えていたから、切り返して左足で打ちました。時間的に前半立ち上がりだったこともあって、最初は思い切ってシュートで終わろうという気持ちが、あのゴールにつながったんだと思います」
|前線3人それぞれが決定機を迎えるが追加点は奪えず
SC相模原は2トップのジョン、久保裕一、さらに2列目の中央でプレーする保﨑淳の3枚が、前線から連動したプレスを掛けることで、相手を追い込んでいく。
「淳には『前の2枚を動かしてくれ、距離感を整えてくれ』と話していた」と、安永聡太郎監督が明かすように、2トップがファーストDFとなりコースを限定することで、2列目の保﨑が相手に食らいつく。そこを突破されても、菊岡拓朗や徳永、さらにはアンカーの岡根直哉がインターセプトを狙い、高い位置でボールを奪えていた。藤枝はパスをつなぎつつ、サイドを攻略すると、ゴール前にクロスを供給してきた。だが、そのハイボールも梅井大輝、米原祐、工藤祐生、さらには最終ラインに加わった岡根らが長身を活かして空中戦を制すると、相手の攻撃を弾き返した。
前半38分には、菊岡から斜めのパスが通ると、徳永がクロスを上げる。これに久保が飛び込み頭で合わせたが、シュートは惜しくも枠を逸れた。1−0で折り返した後半は、相手もサイドからクロスを供給する回数が増えたが、前に出るのではなく、守備意識を強めた辻尾も含めた最終ラインで対応した。
後半6分にはカウンターを仕掛ける。自陣で保﨑がボールを奪うと菊岡につなぐ。菊岡がドリブルで駆け上がると、右を走るジョンへとパスを供給した。左には、ボールを奪取した保﨑が駆け上がって行く。ジョンは懸命に戻るDFを横切るように絶妙なスルーパスを送ったが、長い距離を走った保﨑のシュートはゴール左に外れた。後半27分には保﨑のヒールパスから徳永がラストパスを送り、ジョンがフィニッシュしたが、これも枠を捉えられず。久保も、保﨑も、ジョンも枠を捉えることができなかった。
|今の自分に何ができるか。その思いがハードワークを生む
ただ、前後半合わせて13本のシュートを浴びながら、SC相模原は無失点に抑えて0−1で勝利する。そこにはチーム全員が見せたハードワークであり、相手のクロスを弾き返せる守備陣の自信があった。キャプテンの岡根が語る。
「後ろは前のために我慢しているし、前は後ろのために走ってくれる。そこの関係はすごくいいと思います。今は全員が1点しか取れないということが分かっている。もちろん、2点、3点と取れたらいいですけど、今の自分たちの力をみんなが分かっているというのもある」
無失点に抑えたGK川口能活も、岡根の言葉に同調するかのようなコメントを残した。
「追加点が取れればよかったですけど、誰一人として手を抜いている選手はいなかったし、その中でしっかりと勝ち点3を取れたことは良かった。最終的に中の危険なエリアさえ、抑えられれば、ウメもヨネも跳ね返してくれていたので、それほど怖いシーンはなかった。2点目を取れれば良かったですけど、シュートを外した選手たちも一生懸命戻ってきて、守備をしてくれていた。そういう姿勢が僕は大事だと思う。今は自分たちに力がないという上で、みんながハードワークしているので、そういうひたむきな気持ちを持ってやっていくことが、今のチームには大事かなと思います。そんなに何もかもうまくはいかないですから」
今の自分たちに何ができるか。ピッチに立つ11人がそれを判断し、向き合い、全力を傾ける。その思いが、DFは最後のところで身体を張るプレーにつながり、前線は試合終盤もボールを追うプレーにつながっている。最後まで前からボールを追い続ける姿が印象的だった保﨑が話す。
「前線でオレが守備のスイッチを入れる。裕一も守備ができるし、ジョンも意外と足が伸びるから、あいつらをファーストDFで(プレスに)行かせて、次のセカンドでオレが食いつければなって思ってた。(雨でグラウンドが)スリッピーだったから、相手に蹴らせてしまえば、ウメとかヨネもヘディングでは負けないし、セカンドは裕一とジョンがいれば競り勝てる。ちょっと、オレが遅らせれば裕一が戻ってきてくれるし、オレが戻れないときは裕一が戻ってくれていたからさ。そこは本当に感謝している」
|徳永や米原らルーキーが確かな成長を刻んでいる
チームとしての課題は明らかだ。2点目を奪い、展開を、試合を、楽にすることである。保﨑が続ける。
「本当に2点目だよね。今日は、オレも、裕一も、ジョンもチャンスがあったからね。申し訳ないと思う。ことごとく外したからさ。責任は感じるよね。良いところまで行くのは、前でプレーしていればあることだし、良いところまで行くんだけどねって言っているチームも腐るほどある。そこを仕留めないと、前を務めている価値はない。守備の気持ちも分かるだけに、あそこで決めてあげなければって思う。力がないなって」
その思いは、J3初ゴールを決めた徳永や、スタメンに定着しつつある米原といったルーキーにも見られる。徳永が言う。
「もっと真二くんとコミュニケーションを取って、前に出て行く回数を増やしたいのと、あとはシンプルに、技術的なミスだったり、集中力を切らしてしまう場面が何回かあったので、そこを突き詰めていかないと、連勝とか3連勝にはつながっていかないと思う。また自分の課題が見つかったので、次の練習から取り組んでいきたい」
米原にもチームを牽引する気概が芽生えている。
「監督にも声を掛けてもらったのですが、周りはルーキーと言おうが、チームを引っ張っていく存在にならなければいけないって。最終ラインで声を出して、自分が牽引するくらいの気持ちでやれって言われました。その信頼に応えるためにも、練習中からそこを意識するようになって、少しずつ変わってきていると思います」
練習中に安永監督がよく発する言葉がある。
「それじゃあ、J2やJ1でプレーできないぞ!」
その思いは、徳永や米原といったルーキーだけに向かっている言葉ではない。保﨑、菊岡、それこそ川口も含め、チーム全員へのメッセージでもある。今の自分に何ができるか。さらに明日の自分に何ができるか。個人として成長しようとする思いが、チームを強くする。そして、その思いは献身性へとつながっていくーー。次節は首位・ブラウブリッツ秋田戦である。キャプテンの岡根が言った。
「秋田戦もそうですけど、相手関係なく、もっと結果を出して、うちにもいい選手がたくさんいることを知らしめたい。上のカテゴリーに抜かれるくらい注目されるようになりたいですよね」
SC相模原は今、個がチームのために成長しようとしている。