SC相模原

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05-08-2017

 試合結果 

03/J3第7節沼津戦マッチレポート

20170507_MR_J307_01 2017明治安田生命J3リーグ第7節 2017.05.07 13:00KICKOFF@相模原ギオンスタジアム SC相模原2−2アスルクラロ沼津 [得点]相模原:64分、90+5分ジョン・ガブリエル 沼 津:14分薗田卓馬、90+2分青木翔大 |悪い流れだった前半に先制点を奪われる 1カ月ぶりとなるホームゲームを待ちわびてくれていたのか、ゴールデンウィーク最終日にもかかわらず、相模原ギオンスタジアムには6015人もの観客が来場した。家族がスタジアムグルメに舌鼓を打ち、友人同士が楽しそうに、これから始まる試合展開に話を弾ませている。それはJ3リーグが創設して4年目を迎えているいつものスタジアムであり、いつもの風景だった。 ただ、何の脈略もなく申し訳ないが、筆者には明らかにいつもとは異なる違和感があった……。 風下に立たされたSC相模原は、14分にいきなり失点を喫する。相手陣内でファウルを取られると、そのリスタートから右サイドに展開される。アスルクラロ沼津が最終ラインから狙ったロングボールが、FW中村亮太にわたるとクロスを上げられてしまう。ボールは逆サイドまで流れたが、MF前澤甲気に拾われると、その折り返しをFW薗田卓馬に右足で合わされ、先制点を奪われた。 ロングボールに対応しようとしていた左SBの麦倉捺木は、中村にあっさりと入れ替わられ、クロスに揺さぶられた守備陣は誰もが対応できず、ゴールを決めた薗田を完全にフリーにしていた。 間違いなく悪い流れだった。 CBを担う梅井大輝は「風が強くて、ウォーミングアップのときよりもボールが伸びてきた。相手は右サイドから攻めてくることは分かっていたのに、うまくいっていない時間帯でクロスからやられてしまった」と悔しがった。その梅井とCBでコンビを組む工藤祐生も「風もあったし、相手が背後を狙ってきたことでラインを下げすぎてしまったかもしれない。前半はウメ(梅井)ともきつかったなって試合後に話したんです」と、同じ見解を残した。 指揮官の安永聡太郎監督も同様である。 『前半、風下に立つというところまでチーム全体で考えて(試合に)入ったところだったんですけど、そのまま受けてしまって、ボールがなかなか前線に入らなかった。各駅停車でボールを動かしたことで、相手のプレスの餌食になった。ロングボールに対してもチームとしての意思統一が図れていなかった」 劣勢に立たされていたのは、失点シーンだけではない。25分にも警戒していた右サイドの突破からMF染矢一樹にシュートを打たれた33分にもGKのロングキックから薗田にフリーでヘディングシュートを見舞われた。 その一因は開始6分に、1トップを務める久保裕一が相手と接触し、頭を打っていた影響が多少なりともあった。前線の久保が身体を張って縦パスを受け、そのセカンドボールに2列目、3列目が反応することで相模原の攻撃は組み立てられていくのだが、脳震盪状態にあったのか、足もとがふらついていた久保は、ボールを収めることができずにいた。それでも久保は、23分に菊岡拓朗のクロスをヘディングシュートし、枠を捉えたのだから、賞賛すべきであろう。ただ、明らかに前半の相模原は劣勢に立たされていた。 20170507_MR_J307_02  |ジョン・ガブリエルの初ゴールで巻き返す そのため安永監督は後半頭から久保に代えてジョン・ガブリエルを投入する。56分には菊岡に代えて川戸大樹を送り込んだことで、再び前から追えるようになると、風上に立ったことも奏功して息を吹き返していった。 そして右サイドから再三、攻撃を仕掛けると、64分には試合を振り出しに戻す。徳永裕大からのパスを受けた麦倉が、その前から試みていたように、得意の左足でゴール前にクロスを上げる。これをファーサイドに飛び込んだジョンが打点の高いヘディングシュートでゴールネットを揺らしたのである。 安永監督も「あの2人は感覚が合う」と認めるホットラインによるゴールだった。加入後の初ゴールとなったジョンも「練習からやっている形ですが、麦倉選手が本当に良いクロスを上げてくれるので、練習から合わせている部分がしっかりと試合で出て、すごくうれしく思います。自分にとっても自信になりました」と語った。麦倉もまた「ジョンとはピンポイントで合うことがことが多い。ジョンが(ゴール前に)入ってくるタイミングがいいんだと思います。練習でも得点できているので、一緒に出られればチャンスは増えてくると思います」と、結果が出たことを喜んだ。 20170507_MR_J307_04 |アディショナルタイムに試合は大きく動いた その後は互いに疲労もあり、オープンな展開となったため、相模原、沼津ともにカウンターから好機を作り出した。ただ、1−1で試合が終わろうかとしていた90+2分、人数を掛けて攻撃に打って出た相模原は、相手陣内でMF千明聖典がボールを失ってしまう。そして逆襲を受けると、中央をドリブルで駆け上がられ、左サイドへ展開されてしまう。そこからオーバーラップした藤原拓也にクロスを上げられ、フリーで青木翔大に決められ、再びリードを奪われてしまった。 ただし、試合はこれで終わらなかった。安永監督も「またか」「今日もか」と、一瞬、ツキのなさを悔やんだというが、選手たちは諦めていなかった。90+5分、左CKを得ると、辻尾真二が入れたクロスをGKが弾いたところに、再びジョンが詰めて同点に追いついたのである。アディショナルタイムで逆転を許した相模原は、再び同点とし、勝ち点1を獲得した。それは試合後の記者会見で、相手指揮官が思わず「負けた」と言い間違えてしまうほどのインパクトだった。 ただ、シュート数も示すように、決定機の数で言えば、相手に軍配が上がるだろう。後半にはクロスバー直撃のシュートもあれば、GK藤吉皆二朗のファインセーブで難を逃れた場面もある。麦倉のクロスからジョンというひとつの形で得点を奪いながらも、その後は同様の形を作り出せなかった攻撃には、課題が残った。 「ベンチから見てても、外から見てても、そこに入れればって思うんですけど、そこからもう1個こねてしまう。(クロスを)入れる覚悟がないから、ひとつ横に出す。僕が全部を作ってしまうのは嫌なので、徹底していないところもありますが、そこからチャンスになってるのであれば、自分たちで考えて、それを実行してほしいという思いもある」(安永監督) ただ、創設10年目だから思うわけでもないが、これまでの相模原ならば、アディショナルタイムに逆転されれば、全員が頭を下げ、戦意を失っていた。だが、1−2になっても選手たちは誰一人諦めず、逆転すら狙っていた。工藤が言う。 「今日はたくさん観客が入っていて、その声に後押しされたところもある。みんな諦めていなかった。追いついた後、逆転する時間はなかったけど、戦う気持ちをチームとしてまとまって出すことができた。最後まで諦めずにやれたと思う」 20170507_MR_J307_03 |土壇場で追いつけたのは成長の証 冒頭で筆者が感じた違和感は、前半の悪い流れでも、試合終盤の失点でもない。その理由は、相模原ギオンスタジアムに行けば、必ずいる人がいなかったからだ。その人はいつも試合前に私を見つけると、活躍を期待している選手について、うれしそうに語ってくれた。また、アウェイの取材に行けない筆者のために、前節の試合内容や展開を熱く語ってくれもした。 いつからそうした会話をするようになったのかは思い出せない。古くはチームが県リーグを戦っていた時代から、それは日課になっていて、JFL昇格を懸けた地域決勝の会場でも自然と会話を交わしていたように思う。 その方の訃報を聞いたのは4月末だった。練習場に足を運ぶと、サポーターの方が教えてくれたのだ。だが、お互いに自己紹介すらしていなかったため、失礼ながら名前も知らず、にわかには信じられなかった。だから、スタジアムに足を運ぶ今日の今日まで実感できていなかった。 思い起こせば、いつもポジティブだった。劣勢で前半を終えても、数少ない好機を例に挙げ、それを続けられればと可能性を示唆してくれた。たとえ敗戦したとしても、チームの可能性を探し、未来への希望を熱弁してくれた。 だから、今日はホームで勝ち点2を失った試合だったかもしれないが、土壇場で勝ち点1を得る成長を示した試合と考えたい。 スタジアムに足を運ぶ理由はさまざまだ。ただ、ここに来なければ感じ得なかった興奮であり、歓喜であり、楽しみがある。出会いもそのひとつだろう。 何より、その人が相模原の話をする姿は心底うれしそうで、まるで生き甲斐のようにすら感じられたからだ。選手たちには、そうしたスタンドからの思いを感じてもらいたい。試合後、違和感の正体であるさみしさを噛みしめながら、再び日が射してきた相模原ギオンスタジアムのトラックを歩いていた。 そして工藤が語ってくれた言葉を思い出し、頭の中で繰り返していた。 「きっと、今季は粘り強いチームになりますよ」 そう、私は空に向かって心の中で呟いた。