
2016年7月16日15:00KICK OFF@相模原ギオンスタジアム
SC相模原 1−2 ガンバ大阪U−23
[得点]
相模原:29分岩渕良太
G大阪U−23:12分堂安律、26分内田達也
|前半の2失点を巻き返せずに1−2で敗戦
もしかしたら薩川了洋監督の意図には反しているかもしれない。ただ、試合後の選手たちの声を聞いたからこそ敢えて提言したい。
「ミスを恐れるな」と——。
ガンバ大阪U−23に1−2で敗れた試合を薩川監督はこう振り返った。
「最低でも勝ち点1は取らなければならない試合だった。それが立ち上がりにミス、ミス、ミスの中から失点した。それでまたミスからCKの流れで失点した」
薩川監督は、試合前日のミーティングで、ある場面を抽出した映像を選手たちに見せた。それはミスによりチャンスをふいにしているシーンを集めたものだった。熱き指揮官は試合後の記者会見で、それを明かした。
「(うちは)もったいないシーンがすごくあるんだよね。今週のミーティングでもそれはやってきた。あまりにミスが多すぎて30分しか映像は見せなかったんだけど、30分の中で30数回あるんだよね。例えば、前に運べるところでバックパスして(相手に守備を)セットされてしまうだとか。フリーでヘディングしているのに味方に繋げず、相手のボールにしてしまうだとか」
実際にG大阪U−23戦では前半にミスから2失点を喫した。前半12分、左サイドからスローインをつながれると、堂安律に左足を豪快に振り抜かれた。さらに前半26分、今度はCKを与えると、初瀬亮の上げたクロスを内田達也に頭で押し込まれた。先制点の場面ではシュートを打たれる前にボールを奪取する機会があった。2失点目はミスからボールを失い相手にシュートチャンスを作られていただけに、避けられたセットプレーではあった。
相手の運動量が保たれていた前半は、完全にG大阪U−23に流れがあった。G大阪U−23は、自陣からDFの背後を目がけてロングボールを配給してくれば、中央やサイドのギャップをうまく使って攻撃を仕掛けてきた。まるで、それはJ1を戦うトップチームの攻撃を彷彿させた。
|ミスを恐れるあまり消極的になった試合
相手を自陣に引き込んでボールを奪い、そこから攻撃を繰り出すのが、今シーズンのSC相模原の戦い方である。ただ、選手たちはミスを恐れるあまり、プレーが消極的になり、ボールを奪っても前に運べず、また運んでも慎重になりすぎるあまりに、再びボールを奪われた。さらに失点を恐れてか、チャンスで枚数をかけられず、決定機やフィニッシュという部分でもアイデアや迫力が乏しかった。まさにミスを恐れるあまり、ミスを併発していたように映った。
0−2となった3分後に鮮やかなゴールを決めて1点を返した岩渕良太も実感していた。
「悪いところはたくさんあると思う。ミスはなくさなければいけないのは分かるんですけど、なぜ、そのミスが起きたのかというところまでチームとして共有できていない。マッチデイプログラムに平さんのインタビューが載っていて、試合前に読んだんですけど、そこで平さんが言っていたとおりで、みんながボールを受けるのを怖がっているところがあったかもしれない。ミスを恐れてチャレンジしなくなるというか……」
中盤の底でプレーする坂井洋平も同じ思いだった。
「みんながミスを怖がってプレーしていたように思う。ミスをしないよう、しないように考えすぎて、プレーが消極的になっていたかもしれない。だから、一人ひとりのプレーが小さくなっていたように思う」
同点に追いつこうとした後半は、盛り返した。56分には菊岡拓朗とシンバのコンビネーションからゴール前の深井正樹へとつながった。後半15分に新戦力の近藤祐介が投入されると、その直後には相手ゴールに迫ったし、後半25分にもシンバのボール奪取からチャンスをつかむと、その近藤がシュートした。
ただ、チームは逆転することはできなかったし、2点目を奪うこともできなかった。クロスを上げてもゴール前での人数や工夫に欠ければ、シーズンを通しての課題とされている質も足りなかった。
確かに薩川監督は「ミスを減らせ」と指摘したかもしれない。だが、決して「チャレンジするな」とは投げかけていないはずだ。選手たちの言葉を聞けば聞くほどに、そう感じられた。何より岩渕の得点が生まれたきっかけは、相手のパスを奪おうと思い切って前に出た、工藤祐生のインターセプトがあったからではなかったか。
|ミスを指摘し合うのではなく、チームとして補う
川口能活はチームの課題を語った。
「ボールを失うことが悪いのではなくて、みんなでそれをカバーしていかないと。確かにミスをなくすことは大事だけど、誰でもミスはするんですよね。(リオネル・)メッシだって、クリスティアーノ・ロナウドだってミスはするんです。でも、そのミスに『何やってるんだよ』って言うのではなくて、それをチームとしてどうカバーするか。失点シーンもリスクマネジメントができていたり、いい距離感が保てていれば回避できた。シーズンを通してみれば、守備陣ががんばっている試合もあるし、攻撃陣ががんばっている試合もある。プレーの結果、試合の結果に対して、言い合うことも必要だけど、誰もが負けようとしてやっているわけじゃないし、誰もがミスしようとしてやっているわけでもない。お互いでカバーし合わないと」
ミスを恐れるあまり、全員がセーフティーなプレーだけを選択していれば、何も生まれない。チャレンジするからこそ、ゴールも生まれるし、サポーターも心を奪われる。頼もしきキャプテンは言葉を続けた。
「僕だってサツさんから、あれは取れただろうとか、あれは触れただろうって言われますからね。でも、ミスしたって、プレーで見返せばいいんですよ」
薩川監督が言及するようにイージーなミスは減らすべきである。川口が言うように起きたミスをチームとして補う必要もある。その上でゴールを奪うために、個々がチャレンジする姿勢もまた必要だ。
|チームにポジティブな声を掛ける新戦力たち
前節、久しぶりに勝利を手にした後での敗戦に落胆は大きいが、チームにはポジティブな要素もある。それは新戦力たちの「声」だ。チームを最後尾から見守る守護神はすでに感じている。
「ヒデ(赤井秀行)とかヒロノリ(石川大徳)とか声でカバーしてくれる選手が入ってきてくれたのは、ものすごくプラスの要素ですよね。お互いのミスを指摘する声が多かったのが、彼らはポジティブな声を掛けてくれている。僕も『切り替え、切り替え』っていくら言ってもGKなので、なかなか届かない。フィールドの選手が言うのとでは違う。連敗が続いて、良い声が出なくなっていた時期がありましたけど、今日も試合後には選手同士でよく話し合っていましたし、シーズン当初の雰囲気に戻ってきたところがある。今日の負けは確かに痛いかも知れないけど、ここをバネにしていければと思います」
期待すべきは、選手たちが同じ思いを抱いているということだ。それこそマッチデイプログラムのインタビューで話を聞いた井上にしても、この試合後に思いを聞かせてくれた岩渕にしても、坂井にしても、そしてキャプテンの川口にしても、何が課題で、何をすべきか、そして何を変えなければならないかが分かっていることだ。答えが分かっているのだから、あとは行動するだけである。
指摘ではなく対話が、チームを上昇させる。自分ではなく仲間への犠牲心こそが、チームを躍進させる。