2015明治安田生命J3リーグ 第17節
2015年6月21日 13:00KICK OFF@相模原ギオンスタジアム
SC相模原 3−1 ブラウブリッツ秋田
[得点]
相模原:4分須藤右介、57分、70分飯田涼
秋田 :77分米沢令衣
|開始4分に奪った先制点が試合を決めた
「勝利できたポイントは先制点だと思います」
試合後の記者会見で辛島啓珠監督が語った内容こそが、ブラウブリッツ秋田戦の焦点であろう。
前節のグルージャ盛岡戦に3−2で勝利したものの、森勇介と工藤祐生の二人が退場となり、今節は出場停止により、彼らを欠くなかで試合を迎えた。代わりにCBには安藝正俊が、右SBには寺田洋介が起用されたが、いずれも今シーズン初先発であり、初出場だった。少なからず不安がある状況で迎えた試合だったが、そのすべてを開始4分の先制点が吹き飛ばしてくれた。
右サイドをオーバーラップした寺田は、飯田涼からパスを受けると、グラウンダーのクロスを入れる。それは雨が降りスリッピーなピッチ状態を把握した上での最高の選択であり、上質なラストパスだった。ニアに送り込まれたボールに須藤右介が走り込む。滑り込みながら左足で合わせたシュートはゴール左に決まった。
狙い通りの得点だった。辛島監督は「本当は言いたくないですね」と苦笑いを浮かべながら、少しだけチームの狙いと意図を教えてくれた。
「秋田は比較的サイドが空くという話はしていた。それだけに中央ばかりに固執するのではなく、サイドを使っていこうと。まさに1点目はその形からの得点だった」
また、この得点に初先発した寺田が、アシストで絡んだことも大きかっただろう。安藝にしても1点のリードを奪ったことで精神的なプレッシャーから解放されたはずだ。すべてはこの先制点が、SC相模原の優位性を導いていった。
|相手に主導権を握られるのも想定内
先制した相模原ではあるが、その後は秋田に主導権を握られる時間帯もあった。3−4−3システムを採用する秋田は、2シャドーがボランチとDFラインの間に顔を出し、うまくゲームを組み立てていく。21分には、敵将の間瀬秀一監督も微妙な判定に嘆いたが、スルーパスに反応したMF川田和宏にDFの裏を突かれて、決定機を作り出されてしまう。ただし、これはオフサイドの判定になり、SC相模原としては救われた格好となった。
その後もSC相模原は、パスを散らしながら組み立ててくる秋田に押し込まれる。それでも22分には中央で縦パスを受けた飯田が、前を走る樋口寛規にスルーパスを送ったが、わずかに合わない。高原直泰がいつも以上に中盤まで下り、攻撃のリズムを作ったが、高原から好パスが展開されても、その後が続かなかった。
だが、それも試合後のコメントを聞けば、選手たちが割り切って戦えていたことが分かる。最終的には1失点したが、中央を通してくるパスにしても、背後を狙ってくるクロスにしても安定して弾き返していた安藝が話してくれた。
「秋田が前半からいい入りをしてくることは分かっていた。その分、後半は体力も落ちてくるので、逆にスペースも空いてくるということは言われていた。ボールを支配れるのもある程度、想定内というか。こっちが先制したことで、相手も前がかりになってくるだけに、奪った後は逆にチャンスになると思っていた」
まさにこの日のSC相模原は試合巧者だった。運動量あるサッカーを展開してくる秋田は、前半から飛ばしてくる。その消耗から後半になれば体力も落ちてくる。そこをうまく活かして、逆にカウンターで仕掛ければいい。そして、そのプランを決定付けたのが57分の飯田涼のミドルシュートだった。
|鮮やかかつ豪快な飯田のミドルシュート
左CKの流れからだった。GKが弾いたボールをつなぐと、飯田がドリブルで中に仕掛ける。「最初はクロスを上げようと思っていた」と話す飯田は、「ファーストタッチで相手を交わせたら、次は思い切り打ってやろうと思った」と話すように、右足を振り抜く。それは鮮やかかつ豪快なゴールだった。飯田の右足から放たれたボールは鋭く、そして美しく、ゴール右に吸い込まれた。
ファジアーノ岡山時代に指導した経験がある間瀬監督も「飯田は岡山時代に自分が育てた選手でもある。彼はあの位置から狙える選手。秋田でも飯田を超えるような選手を育てたい」と絶賛した。
2−0となったことで、秋田はより前がかりになる。それは安藝が語っていた通りの展開でもあった。そして極めつけは70分だった。飯田の個人技が炸裂する。左サイドから樋口が中に仕掛ける。DFも密集していたため、シュートできずボールは飯田の元へ。「こぼれてくるだろうと思っていた」という飯田は、ゴール左でボールを持つと、飛び出してきたGKをも交わしてゴール右スミにシュートを流し込んだのである。「GKが近くにいたので、シュートを打ったら当たるなって思ったから、うまく交わせてよかった」と話してくれたが、まさに高い技術の為せる業だった。
ファジアーノ岡山ネクストから加入し、デビュー戦となったY.S.S.C.横浜戦で早速ゴールを決めた飯田は、その後、トップ下やボランチで出場機会をつかんできた。テクニックがある彼は攻撃にリズムをもたらすことができ、その上、この試合では2得点と決定力を発揮。SC相模原に新たなる攻撃のバリエーションをもたらす彼のプレーは、ワクワク感がある。スタジアムに足を運ぶサポーターを大いに魅了し、楽しませている。
3−1で勝利した秋田戦は、77分に左サイドを突破されると折り返された際にマークがずれ、1失点したのは次節への課題である。ただ、試合終盤の猛攻をしのぎ、しっかりと勝ち点3を奪取したのは、安定してきた証拠と見ることもできるだろう。次節は再び3連勝を懸けて藤枝MYFCをホームに迎える。