取材・文=北健一郎、青木ひかる(SC相模原オフィシャルライター)
2月に開幕したリーグ戦も、いよいよ残り2試合。
当初、目標としていた「J3優勝」は叶わなかった一方で、クラブ史上初となる天皇杯ベスト8進出という快挙で、大きな注目を集めた。
その中で、これまで培ってきた経験を発揮し、チームの支え柱として力を発揮した、徳永裕大、高野遼、河野諒祐、高井和馬の4人組が一堂に集結。
プライベートの話から今季の振り返り、理想のベテラン像、そしてこれからの未来について、ざっくばらんに語り合った。
お互いの他己紹介に挑戦!
--まず、順番に隣の選手の“他己紹介”をお願いします。
高井 じゃあ、俺からね。こちらは、徳永裕大選手です。彼は、僕たち94年生まれの代ではスーパースターで、世代別の日本代表にも選ばれるような存在だったので、相模原で一緒になる前から知っていました。有名人です。
河野 なんか、浅くない?もうちょっとあるでしょ。
高井 待って、ここからだから。ピッチ内でも外でも「いると助かる存在」で、彼が出ると試合が回るし、集まると場が明るくなる。必要不可欠な選手です。なので、今日のこの対談も彼が盛り上げてくれると思います!
徳永 えー、めっちゃいい紹介してくれる!ありがとう。そうしたら、俺が(高野)遼の紹介ね。それこそ、世代別代表で一緒にプレーをしていたんで、相模原に来る前から知り合いではありました。とにかく足が速くて、去年のチームのアシスト王で正確な左足のクロスが特徴です。
高野 公式情報じゃん(笑)。
徳永 短所はこうやって、すぐ拗ねて怒っちゃうところ。去年はイエローカードも多かったんで、気をつけてください。
高野 今年は少ないから大丈夫!
徳永 サッカー以外の長所は、いつも家族ぐるみで仲良くさせてもらってるんですけど、意外とワードセンスが良くて、お笑い担当としてみんなを笑わせてくれます。関西人も認めるおもしろさです。ピッチの中では、あんまり見せない笑顔も可愛いですね!
高野 「関西人も認めるおもしろさ」はめっちゃうれしいな!じゃあ、俺の番。(河野)諒祐は、普段は大人しいんですけど、話してみると本当にサッカーが好きで、仲間思いな熱いヤツです。あと実はワードセンスがあって、クロスもうまくて、チームに必要な……。
高井 なんかみんなのやつ、真似してない?
高野 バレた?あとは、とにかく顔がいい。短所は、みんなで集まろうという話になった時に、一人だけちょっと士気が下がるようなことを言ってくること。たぶん喋ってたら分かると思います。
徳永 「顔がいい」はたしかにそう。ズルいなあ。
河野(笑)。最後は(高井)和馬ね。存在は知っていて、会ったのは今年が初めてなんですけど、キャンプが同部屋になって。「朝ごはん何時に行く?」とか「今日は何時に寝る?」って、僕の生活時間に合わせてくれるところが、まず優しくて好き。
高野 ええ!?「俺に合わせて」タイプじゃないの?
河野 あとはキャンプの時に、新加入選手の出し物としてみんなの前で一緒に漫才をやったんですけど、それも全部ネタを集めて考えてくました。ピッチ内では、ボールをもつとびっくりするようなプレーで点も決めて、沸かせてくれるので、「天才だな」っていつも言ってます。
徳永 なんか、和馬が一番いい紹介されてない?
高井 まあまあ、まだ足りないくらいですけどね。

気になる、4人の“パパ”の普段見せない一面は?
--今の他己紹介タイムでも、かなり仲良しなことが伝わりました。4人全員ご結婚されていますが、オフの日に集まったりもするんですか?
高野 子どももいるんで出かけたりはしないですけど、裕大の家に4家族で集まってご飯食べるとかはたまにしますね。
河野 うちの子と裕大の子は名前が同じなんだよね。子どもが全員女の子なんで、男性陣は僕たち4人だけで、肩身狭くやってます(笑)。
徳永 ネックなのは、僕と高野は家が近いんですけど、諒祐と和馬は全然違うところに住んでるんですよ。ホンマ、どこ住んでんねんって……。
河野 いや、それはね。僕だってもっと近かったらもっと会えるのにって思ってますよ。近くに来てよ。
高井 諒祐には合わせていかないと。
--女の子だと、パパとしては心配も多くなるのでは?
徳永 えー、そうなんですかね。僕は娘3人いますけど、彼氏ができるのが嫌だとかは全然ないですけどね。好きにのびのび育ってくれたらって思ってますよ。
高野 僕も全然ないですね。むしろ“変な虫”に、ちょっと鍛えてほしいくらいですね。世の中そんなに甘くない、いい男ばっかじゃないんだぞってことを学びながら強く育って欲しいです。
河野 めっちゃスパルタだね(笑)。
高井 さすが、日体大(日本体育大学)で培った、体育会系の精神。勉強になります。
--94年組同士だからこそ分かる、意外な一面はありますか?
高野 和馬は、めっちゃ美容好きですね。でも見た目どおりか。
河野 たしかに、キャンプの部屋も美容グッズがすごかったです。化粧水とか美容液とか、こだわりのものを何個も持ってきてました。
徳永 育児だけじゃなくて、家事も実はしっかりやってるっていうのは意外なんじゃない?なんか、和馬ばっかりになってるな。遼は、こう見えてけっこう髪型にこだわっていて……。切る前も最先端の流行を調べて、美容院選びからこだわってます。
高野 はい、全部嘘です。どう考えてもこだわってないでしょ。いつも一緒だし。だいたいこんな感じで、くだらない話ばっかりしてます。
高井 意外な一面は、深掘りしたらたくさんあるけど、ここじゃ話せないことばっかりなんじゃない(笑)?気になる人は、ファンサービスの時とかに、こっそり聞いてください。
それぞれのシーズンベストゲーム
--ここからは、2025シーズンの振り返りの話を聞ければと思います。それぞれ、今シーズンのベストマッチは?
高井 今年あんまり出れてないんですけど……。
徳永 和馬は、アウェイの長野パルセイロ戦一択でしょ。相手の応援の声も多い中で、途中出場で出てからのあのゴールは、だいぶ興奮しましたけどね。
高井 なんか、めっちゃ褒めてくれてありがとう(笑)。
徳永 僕はやっぱり、天皇杯ですかね。水戸ホーリーホック、ジュビロ磐田、川崎フロンターレ、ブラウブリッツ秋田、ヴィッセル神戸……どれもめっちゃ楽しかった。なんか負ける気がしなかったし、このチームならもう一回同じところまで勝ち上がれるんじゃないかなって思います。

高野 川崎戦はめちゃくちゃ楽しくて、神戸戦は個人としては、忘れられない一戦になっちゃいましたね……。シュートもPKも外したんで。でも、横浜F・マリノスで一緒にプレーした選手がたくさんいて、久しぶりに対戦できたのはうれしかったですね。
河野 でもそのあと、ホームの長野戦でゴールを決めてたじゃん。
徳永 あの試合、シュート打つ時めちゃくちゃ緊張してたよね?「背中ちっちぇなー」って後ろから見てたよ。だからまた、外すんじゃないかってちょっとヒヤヒヤした。
高野 めっちゃしてた(笑)。たしかに、思い出に残ったベストゲームで言うと、長野戦かな。天皇杯のこともあったし、あと普段、右足であんなシュート打つことないからね。たぶん初めてだと思うし、この先もうないと思います。
高井 諒祐は2アシストした、アウェイのヴァンラーレ八戸戦じゃない?
河野 だいぶシーズンの序盤だよね。移籍して、アウェイでは初勝利かな?あれはでも、ゴールにならないとアシストはつかないので、2得点とも決めてくれた武藤(雄樹)さんのおかげです。
高井 怪我をしている状態でのシーズンインだったし、なんかあっという間だったな。一番活躍できたのは、2ゴールできたブリオベッカ浦安との練習試合かも……。
徳永 朝、渋滞に巻き込まれて大変だったんだよね。それでも2ゴール決めるんだから、やっぱり天才だよ和馬は。
高井 それを公式戦でなかなか出せなかったのは、悔しいですけどね。まあ、「人生いろいろ」です。

「もしファンだったら」推したい、あの選手
--話にも出てきた通り、今年は天皇杯ベスト8という躍進もあり、いろんな選手が試合に絡んで活躍しました。今後、相模原の未来を担う、成長が楽しみな若手選手、注目選手は?
高野 僕は、福井和樹ですかね。出てる時も出てない時も、自分と向き合って取り組める姿勢は、本当に素晴らしいなって思います。試合に出ればシュートをどんどん打って「やってやろう感」が伝わってくる。ああいう選手は、自分がサポーターだったら応援したくなるなって思います。
徳永 若手じゃないんですけど、大ちゃん(加藤大育)は今年めっちゃ伸びたなって。まだ一緒にプレーして2年ですけど、去年とは全然違う。守備での対人やヘディングの強さも増しているし、ビルドアップも自分で運べて、シュートも打って……。なんかめっちゃいい選手になったなって、感じてます。
高野 たしかに。天皇杯とかでも、全然上のチーム相手に互角以上に戦えていたもんね。神戸戦に負けてから、さらにグッとパフォーマンス上がった感じもするし、今後が楽しみですね。
河野 え……誰だろ。(ラファエル)フルタードって、若手枠に入る?
高井 彼、まだ25歳だから一応入るんじゃない。あんまり、若手って言葉は似合わないけど(笑)。
河野 あ、いました。イチオシは猪瀬(康介)ですね!
徳永&高野&高井 うわ〜!猪瀬!!!
河野 本当に人間性がまず◎(花丸)。練習も手を抜かずにきっちり真面目にこなすし、文句も言わずにひたむきですよね。普段はお調子者っぽいところもあるけど、先輩を立てることを忘れないところも、みんなから好かれるポイントなのかなって。後輩力抜群な、いいヤツなんで、試合で活躍する姿を見るのが楽しみです。
高井 俺は、やっぱり杉本蓮かなあ……。光るものを持っている選手なんじゃないかなって思うし、なにより、最近は楽しそうにプレーしているのがいいですね。“リマーカブル”な存在です。
河野 なに、リマーカブルって。
高井 「非凡」って意味。ちなみに、僕が新しく始めるスクールの名前です。
高野 宣伝じゃねえか!
--ちなみに、もし自分がサポーターでこの4人の中で推し選手を選ぶとしたら、誰を応援しますか?
河野 「選ばない」は、ナシですか?
高野 だから、そういうとこだよ(笑)。士気下がることは言わない!俺は和馬かな。理由は顔がいいから。
徳永 なんか遼、顔ばっかじゃない?でも、俺も和馬かなあ……。自分じゃできないようなプレーを見せてくれるし、なんか応援したくなるんですよね。
河野 じゃあ、俺も和馬。生活リズムも合わせてくれるし。
高野 それ、ファン目線じゃなくて恋人選びの基準みたいになってるよ(笑)。そっち目線でいくと、彼氏にしたいのは和馬で、結婚したいのは諒祐だな。裕大は、相談相手。
徳永 俺、一番可哀想な立場じゃない(笑)。ちなみに和馬は、誰推しなの?この一票は、みんな欲しいよ。
高井 誰か一人選ぶなら……裕大かな。
徳永 よっしゃー!!!!え、けっこう素でうれしいんやけど。
高井 やっぱり優しいし、おちゃらけて何も考えてないように見えるけど、みんなが知らないところでいろんな気遣いをしてくれる。縁の下の力持ちじゃないけど、この94年組のこともうまくまとめてくれてるんで。
河野 すごい、ちゃんとした理由だった。
高野 ちょっと今、反省してます。

追求したい、理想のベテラン像
--若手選手も増え「ベテラン」と呼ばれるようになってきましたが、30代になって意識の部分やプレー面で変わったことはありましたか?
徳永 なんかあるかなあ……。というか、できれば“ベテラン感”は出していかずに、日本代表の長友佑都選手みたいな。いつまでも若手の心を忘れずに、アグレッシブでいきたいです。
高野 僕のモットーも「心も身体も25歳」なんで。若い選手が増えても、「まだまだ、おっさん扱いされるか!」という気持ちで、突っ走りたいですけどね。
高井 でもさ、衰えはしたくないけど“色気”は欲しくない?ちょっとのことじゃ慌てない、落ち着いた余裕というか。
河野 たしかにね。でも真面目な話、この間、遼ともそういう話は、ちょっとしたよね。「俺たちも、まだなりたくはないけど、ベテランの自覚は持たないといけないよな」って。
高野 自覚はしつつ、若々しさは忘れずっていうのが、一番強いよね。自分で「もうベテランだし」って言い始めるとどんどん老いていきそうだから、立ち振る舞いでは貫禄は出しつつ、プレーとかチャレンジ精神みたいなところは、いつまでも若手のままでいれたら最高ですね。
--「あっという間だった」という振り返りもあった2025シーズンも、あと2試合になります。今シーズンをどう締めくくり、来季以降につなげていきたいですか?
高野 僕は、今年もシーズン途中で怪我があって、自分としても消化不良なところもあるし、チームに迷惑もかけてしまったなっていう思いもあります。コンディションも今はかなり上がってきているので、残り2試合はまず怪我をすることなく、健康な体で走り切りたい。最後の最後まで全力を出し切って、来年もっといい1年を迎えたいですね。
河野 「まだまだ」って思いももちろんあるんですけど、一方で、いつ契約満了になったりサッカーを辞めなきゃいけない日が来るかもわからないじゃないですか。娘があともうちょっとで歩けるようになるんですけど、記念試合の花束贈呈をしてほしいんですよね。なので、その夢を叶えるためにも、まずは来年もサッカーが続けられるように、最終節まで自分の力を発揮できるように頑張ります。
徳永 めっちゃいい目標!僕としては、毎年必ず1シーズンに1ゴールは決めているんですけど、今年はまだなんですよ……。なので、こんなこと言って自分にプレッシャーを懸けるような感じになるんですけど、残り2試合で1点は取って、一つでも多くの勝利に貢献できたらなって思います。
高井 僕自身、今シーズンはなかなか思うように試合に絡めなくて、悔いの残る1年になったなというのが、率直な思いです。だけど、自分を信じてやることは、最後まで変わらないんで。練習からしっかりアピールし続けて、残り2試合でチャンスがもらえたら、少しでもいい結果を残したいです。
徳永 最後だけ、めっちゃ真面目になったね(笑)。
高野 こんな94年組の応援を、どうぞよろしくお願いします!




