SC相模原

SC相模原

MENU

NEWS DETAIL

12-27-2023

 その他 

SCS CLUBSTAFF INTERVIEW Vol.3 『日野卓哉×下條雅也 』

S__9117808.jpg


今季、SC相模原のグッズの売り上げは過去最高記録を更新した。

グッズを企画し、販売の戦略を立てるのは日野卓哉さんと下條雅也さんの2人。

今年、営業担当から異動してきた日野さんと7月に復職した下條さんは、一体どんなロジックで売り上げを伸ばしていったのか。

そしてこの2023シーズンは、クラブにとって特別な意味を持つ年でもあった。クラブ創設と共に歩んできたgol.とは15周年記念の節目であり、サプライヤー契約を結んだ最後の年に、さまざまなメモリアルグッズも企画してきた2人は、いかにしてグッズを生み出してきたのか。


取材・文=北健一郎、舞野隼大(SC相模原オフィシャルライター)

これまでの経験を生かし、奔走する2人

──今シーズン、売り上げをかなり上げたというグッズ担当のお2人について迫りたいと思うのですが、まずは相模原に入社した年、関わったきっかけからそれぞれ教えてください。

日野 入社したのは2013年で前職は営業をしていたんですけど、転職活動をしていたタイミングにJFL昇格を決めたSC相模原が求人で営業の募集を出していたことがきっかけでした。元々は野球をしていたので望月(重良)さんのことも最初は知らなかったですけど、「地元の大和市に近いところでJリーグ参入を目指しているチームで働いてみたい」と思ってダメ元で応募してみたんです。

それで小西さん(小西展臣/現取締役)に面接もしていただいて、縁があって入社することになり、去年までの10年はホームタウンやチケット担当をしながらも基本は営業をしていました。今年、初めてこの会社で異動というものを経験してグッズ担当になり、最初は「どんな感じになるんだろう」という不安が大きくて、未知の世界に入った感覚を今でも覚えています(笑)。

下條 入社は2015年からで、一番長く携わっていた業界は小売業でした。サッカー雑誌の編集をやっていたこともあって、物と付き合っていることが長くて、それ以外に自分でコンサルティングや不動産の会社を起こして、新規店舗や経営がうまくいってない会社を支えていく仕事もしていました。

僕は望月さんと一緒にこのクラブを立ち上げた方と元々の知り合いで、「サッカーが好きなら、SC相模原の事務所へ遊びに行ってみなよ」と言ってもらえたことと、事務所に行った時に「(試合の運営を)ちょっと手伝ってみる?」とスタッフの方に言われたことがチームに関わるきっかけでした。それで「Jリーグに参入してからやりくりに苦労している」ということも聞いて、スタッフの一人として働いています。ここ2年は体調を崩していた影響で休職させてもらっていまして、今は無理をしていないですけど、回復してきたので7月に復帰しました。日野さんをはじめ、みなさんが気を遣ってくださって徐々に体もいい状態に近づいています。

──そうして、今は2人がコンビを組んでグッズ担当を担っていると。

日野 下條さんが職場に戻ってくることはすごく嬉しかったですけど、まさか一緒にグッズ担当をするとは予想していなかったです。振り分けとしては、自分がグッズの企画と発注をしていて、下條さんにはうちのオンラインストアの担当してもらっています。下條さんはうちに長くいる方ですし、小売の経験も生かしながらオンラインストアでの企画をいろいろ考えていただいて、そこで夏以降の売り上げがグッと伸びました。

230402-023-scaled.jpg

工夫を凝らし、売り上げが爆発的に向上

──すごく驚いたのは、毎週のように新作が発売されていたことですけど、やはりなにか狙いがあったのでしょうか?

日野 「毎回新しいものを出そう」と決めました。今季、ホームゲームの平均観客動員数は約2300人でしたけど、グッズ売り場でグッズを買ってくれる人は300人ぐらいに絞られます。その人数を400人、500人と増やせれば必然と売り上げも伸びていきますけど、それは(グッズ担当の力だけでは)なかなか難しいので、300人の方にグッズ売り場へいかに毎回足を運んでもらうかが大事になりますけど、なにもしなければ人は集まらなくなる。いろいろ作りましたけど、自分と下條さんで他クラブやいろんなスポーツクラブのグッズを参考にする以外に、グッズ業者さんからご提案をいただいたり、ファンからの声を受けて作ったものもありました。

心がけていたのは奇抜なものや斬新なものを作るのではなく、定番なものをしっかり作ってしっかりと宣伝して、売り場に並べて買ってもらうという、当たり前にできることです。売り場にも少し工夫を施して、今までは3×6mのテント4つで販売していましたけど、今季からはテントをもう2つ増やしてレイアウトを変えました。あとは雨が降った時、風に乗ってテントの中にも吹き込んでくるので「こんな環境では売ってられない」と思って、バックスタンドの軒下に場所を移動させてみました。最初は「どこにあるかわかりにくい」という意見をいただくこともありましたけどチャレンジしてみた結果、来てくれた人は雨に濡れずに帰ることができましたし、売る立場としてもストレスを感じることなく仕事ができました。

──それ以外にハーフタイム後、グッズ売り場をコンコースに移動させる取り組みもされていましたよね。

日野 それも自分が「やってみたいな」と思って始めたことでした。勝った時は特にですけど、移動した方が試合後の売り上げがすごく伸びるようになって、シーズン終盤はあそこで売るようにしていました。売り場での商品の見せ方も毎回変えたり、在庫を把握して売れる・売れない商品を分析して、残っている商品はセールにかけたことも売り上げ向上につながって、具体的な数字で言えば昨季の1.5倍売れました。今まででグッズが一番売れた年はJ2にいた一昨年でしたけど、その年よりも1.3倍売れていて、今季が史上最高の売り上げになったんです。

下條 日野さんは長くクラブで働いていた経験からお客さんがなにをほしいかよくわかっているんです。今の相模原は稲本潤一や川口能活のような有名な選手はいないですけど、ガミティを推したり、先ほど言われていたように毎回新しい商品を売り場に並べている。小売の専門的なことを学んでいないのに、やるべきことをしっかりとやり切っていました。だから僕はそうでないオンラインストアのサポートに徹することができました。

──下條さんは復職してオンラインストアに携わるようになって、どんなことから手をつけていきましたか?

下條 やったことはシンプルで、公式HPの動線をお客さんの目につく場所に置いたことです。あとは、オンラインストアへ流入が一番多いのはクラブのリリースからなんですけど、新作をそこで買ってもらったついでに他のものも買ってもらえるような見せ方にしました。

──シーズン後半にはオンラインストアがものすごく活性化していきましたよね。

下條 「Jリーグオンラインストア」が秋にリーグ全体のセールをした時、サッカーファンや初心者のファンがチームを横断してグッズを買っていたんです。そこで他クラブよりも目立つ商品画像やバナーを(深瀬)ナシームくん ( https://www.scsagamihara.com/news/post/scs-clubstaff-interview-vol2 )に作ってもらったら爆発的に売れていきました。

日野 セール期間中は割引率を結構高くして、しっかりと告知を打ったことも大きかったです。一番売れたグッズが2022シーズンのユニフォームだったんですけど、それはJリーグ全体の売り上げで2位を記録で、価格戦略が功を奏しました。

下條 当時一番安かったユニフォームが3,300円だったので、他のクラブを出し抜くならそれよりも価格を抑えた税込3,000円以内にすることでした。それに、ユニフォームの在庫をたくさん抱えていたので、安くして数を減らさなきゃいけない状況でもあったんです。それでチームのサポーターではなく、Jリーグのユニフォームを集めているような方へ向けた商品画像をデザインしてもらいました。

──値段を低く抑えすぎて、正規の価格でいち早く購入していたサポーターから「なんでこんなに安くするんですか」と言われることはありませんでしたか?

日野 9月9日の15周年記念ドリームマッチの際に昨季のレプリカユニフォームを1,000円で、オーセンティックユニフォーム3,000円で売って、今季のユニフォームをセール価格で販売したのは、シーズンが残り2試合になった時でした。9月の時点で今季のユニフォームも低価格で売っていたら「なんでだよ」と言われていたかもしれないので、タイミングはすごく慎重に考えました。

下條 ホームゲームでもオンラインストアでも「安いですよ!」という打ち出し方は絶対にしませんでした。ドリームマッチの時も「gol.さん15年間ありがとう」と、一枚でも多くのユニフォームをみんなに着てほしい気持ちがあって、いいイメージを持ってもらうために日野さんと売り方を協議しました。

──10月には下條さんが中心になって、15本限定で「SCSダイバーズウオッチ15周年記念モデル」を販売しました。これにはどんな背景があったのでしょうか?

下條 グッズの売り上げをもう一押し、二押ししたいと考えた時に、今までと同じようなものを売ってもお客さんは被ってしまうので、「いっそのこと高単価の商品を作ってみよう」と思ったからです。ただ、売れ残るとリスクが高いので、受注販売できるものにしたのと、40代の男性が客層に多いことも考えて、時計に行き着きました。15周年記念のグッズなので昔からのファンにも喜んでもらえるよう、シゲさん(望月重良創業者兼フェロー)にも協力してもらいました。

https://x.com/sc_sagamihara/status/1715309973562155508?s=46&t=tF2lX-eOcW55iL-SSDxOKA

──価格は税込で26,800円でしたけど、反響はどうでしたか?

下條 リリースが19時に出て僕が電車に乗って家に帰っている間に売り切れました。どこが(高すぎない)ギリギリのラインか価格設定が難しかったですけど、「チームが愛されているんだな」と嬉しくなりましたね。

腕時計第二弾バナー公式HPサイズ.jpg

誇りに感じられるような、人と人をつなげるグッズを作っていく

──今季で15周年という一区切りを終えて、来季はユニフォームサプライヤーが初めて変わる大きな節目になると思います。現時点でどういうことをやっていきたいと考えていますか?

下條 相模原に入る以前から「仕事は顧客第一」だと思ってやっていました。奇をてらったことではなく、初心を持ち続けたまま、来季も当たり前のことを当たり前にしたいですね。やれることはまだまだあって、サポーターから何を求められているか考えたいですし、チャンスの年でもあると思っていますので、みんなにより喜んでもらえるようなことを考えていきたい。来季はホームゲームの方にも関わっていくことになると思いますけど、「グッズ売り場はプレミアリーグのレトロな雰囲気にしたいな」と思っています。グッズをより買いやすい動線にして、布を張るとかタオルマフラーがたくさんぶらさがっている圧迫陳にして、入っただけで楽しめるような雰囲気を作りたいですね。海外の露店みたいなものをイメージして、そういう雰囲気のなかで商品を売っていきたいです。

日野 グッズショップの雰囲気作りは下條さんにやってもらって、自分は今、来季からサプライヤーになっていただくアンブロさんのユニフォームを含めた準備を進めています。今年たくさん売れた「MAN OF THE MATCH レプリカ」やFPのホームからアウェイ、GKバージョンのユニフォームを着たガミティのぬいぐるみや、ニューエラさんとのコラボキャップは前任の氏家さんが準備していたものでした。ただ、開幕戦にはなかった商品もあって、チャンスロスもかなりしてしまいました。今、心がけていることは来季の開幕戦で新商品をしっかりと用意して、みなさんに買ってもらえるようにすることですね。それに、ルヴァンカップにも参戦することになりますが、カテゴリーが低い方がホームになるので、上のカテゴリーのクラブとの対戦になってもキチンと対応できるように進めています。

S__9117809.jpg

──あらためて、グッズ担当の役割や使命を2人はどのように感じられているか教えてください。

日野 「俺がSC相模原を応援している!」と自信を持って、誇りに思って身につけてもらえるグッズを作りたいと思いながらずっと仕事をしています。多くの方の手に取ってもらいたいし、試合の日だけではなく日常でも身につけてもらえるようにしたくて、それがある意味、クラブの宣伝を兼ねていると思っています。そこから広がって、いずれはグッズを通じてチケットも売りたいですし、スポンサーがつくようにしたいです。

下條 個人的には復職したばかりの立場なので、今は狭い範囲にフォーカスして仕事をさせてもらっていますけど、だからこそ見えるものがあります。ただどんな働き方をしても変わらないことは、サポーターのことをどれだけ思って、感じられるか。グッズはクラブとサポーターをつなげて交流させるアイテムだと思っています。それにはある程度のレベルが必要だと思っていますけど、僕が驚いたのは、異動して1年目の日野さんがこれだけのものを一人で仕入れて一人で販売していること。松本山雅FCのサポーターが「相模原のグッズ、レベル高すぎない?」と言っていたのが聞こえた時はうれしかったですね。リーグ全体で見ても、グッズは「付属物」のようなイメージがあるかもしれないですけど、だからこそ改善したりJリーグのなかで突き抜けられる余地があるので、そうしたことを実現できるようなグッズ担当になりたいと思っています。

日野 質問の答えとは違いますけどどうしても載せてほしいことがありまして、今年すごく多くの方にグッズを購入してもらえました。でもそれは、多くの方々のご協力があったからだと思っています。特に2019年からの付き合いであるジャイアントステップスさん(http://www.giantsteps.co.jp/page1) には本当にお世話になっていて、普段うちのグッズを保管してもらったり、ホームゲームの時には倉庫からグッズを持って来てもらって一緒に設営したり、レジスタッフの方を確保していただいたりしています。ですのでジャイアントステップスさんがいなかったらホームゲームでのグッズ販売は成り立っていないですね。

下條 ジャイアントステップスさんと関わるきっかけは、クラブの営業担当が連れてきたことからでした。予算規模の大きくないクラブでしたけど、営業担当から「断るつもりでもいいから一度話を聞いてくれ」と言われて実際に会ってみると、代表の方がすごく熱い方で、その想いに押されて契約をすることになって、今も一緒にお仕事をさせてもらっています。日野も言いましたけど、ジャイアントステップスさんがいなければホームゲームでの販売はもちろん、オンラインストアの発送も追いついてなかったです。

日野 ジャイアントステップスさんだけでなく、グッズを作ってくださった業者さんもそうですね。自分は正直、デザインセンスがまったくなくて、業者さんにデザインをある程度してもらうこともありましたが、特に広報の高佐(華子)さんにはX(旧Twitter)での発信やグッズへのアドバイスをいただくことが多く、その意見から作ったものもかなりあるので、そういったサポートにも非常に感謝しています。

そして、gol.さんですね。今年で最後になりましたけど、クラブ創設当時から大変お世話になりました。今年はラストイヤーでしたけどgol.さんとしても15周年を祝ってくれて、記念のTシャツやパーカーは芦澤貴之社長がデザインしてくださったものでした。あと、今年は歴代全ユニフォームのラバーキーホルダーを作りましたけど、あれはgol.さんが持っているデータがなければ作れなかったものでした。本当にいろいろな方々にご協力いただいて、ド素人からのスタートでしたが、なんとか1年間走り切ることができました。

231021-009.jpg



ファミリア▶️https://www.scsagamihara.com/familia

scsfamilia.png