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12-12-2020

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.37 『俺たちは強い!』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.37
vs アスルクラロ沼津
『俺たちは強い!』

タイムアップの瞬間にこみ上げてきたのは、強烈な安堵感だった。第31節でヴァンラーレ八戸と引き分けたことで、2位から3位へと後退していた。J2昇格圏内である2位以内に食い込むには、できるだけ勝ち点を積み上げるしかない。

SC相模原は、生き残った。

三浦文丈監督は3日前の八戸戦から3人のメンバーを入れ替えてきた。キャプテンの富澤清太郎、2試合連続ゴール中の和田昌士、そして清原翔平がベンチスタート。八戸戦からは3日間隔での3連戦となる。ローテーションすることはもともと頭の中にあったという。

先手を取ったのはホームのSC相模原だった。ホムロが相手のマークがハッキリしない“ファジー”な場所でパスを受けると、DFラインの裏へ斜めに走った才藤龍治にスルーパス。オフサイドフラッグは上がらない。

「パスが出た時点でシュートまでのイメージが描けていた」という才藤がワントラップから右足を迷わず振り抜くと、逆サイドのゴールネットが揺れた。

1点をリードした後は沼津に押し込まれる時間が長くなってしまう。沼津は攻撃時にはボランチの1人がDFラインに下がって3バックでボールを回し、両サイドバックは高い位置まで上がってくる。

守備時にはSC相模原はウイングバックの夛田凌輔と星広太が最終ラインまで下がって、2シャドーの藤本淳吾と才藤がサイドのスペースを埋める。ホムロ1人で沼津の3バックを見ることになるため、パスコースを限定しづらく、高い位置からボールを奪いに行くのは難しい。

「守備に関しては最初から5-4-1のイメージでした。相手のサイドバックに対して、3MF(トップ下+ダブルボランチ)で追うのはコンディション的にも難しいかなと思ったので、相手の2ボランチにはうちの2ボランチ、相手のサイドバックにはシャドーが行くということで5-4-1の並びにしました」

疲労が残る中で高い位置からプレッシャーをかけていけば、体力の消耗が激しくなって足が止まるリスクがある。後ろに人数をかけて守れば運動量は抑えられるが、自分たちのゴールに近い場所でプレーされる。2つの選択肢を天秤にかけた結果、三浦監督は「うちの守備陣だったら沼津に攻め込まれても跳ね返せる」と後者を選んだのだろう。

前半を1-0で折り返した後半、沼津はさらに圧力を強めてきた。三浦監督は60分に和田、73分に清原を投入するが試合展開は大きく変わらない。

脳裏に思い浮かんだのは3日前の八戸戦だった。3分に和田のスーパーゴールで幸先よく先制しながらも、何度かあった追加点のチャンスを活かすことができず。59分にDFラインの背後をとられて失点して1-1で引き分けている。

この日も2点目をとれるチャンスがなかったわけではない。チーム最多のシュート数を放った藤本は反省の弁を口にした。

「僕が2点目をとっていれば、もっと楽な展開になっていたはず。今日は2、3本打ちましたけど、ちゃんと決めないといけないなと思っています」

83分には才藤とミルトンに代わり、三島康平と富澤が投入される。三島は前線でロングボールを競り合って、こぼれ球を必死に追いかけた。富澤はコーチングで味方を鼓舞し、ゴール前に入ってくるボールを跳ね返した。

93分、左から上がったクロスを沼津の選手がヘディングで合わせる。再三のピンチを救っていたGKビクトルが見送ったボールは、ゴール右角のポストを叩いて外れた。

96分9秒、主審がタイムアップの笛を吹いた。1-0。ほとんど見せ場はなかったし、不格好だったかもしれない。それでも、SC相模原は最も大事な勝ち点3を手にした。内容よりも結果が必要な試合で、しっかりと結果を出した。

「ボールは持たれていましたけど、最後のところは要所要所で抑えていたと思います。試合間隔や疲労面を考えればこういうゲームになることもある。今日は最後まで体を張って守り抜いた選手を褒めたいです」

1時間遅れの19時にキックオフされた他会場では2位のAC長野パルセイロがガンバ大阪U-23に、4位のFC岐阜がヴァンラーレ八戸に、どちらも1-0で勝ったため、SC相模原は3位のままで変動はなかった。

このまま2位の長野が連勝すればJ2昇格は決まってしまう。ただ、和田は「3位ですけど勝ち点差は離れていないし、逃げるよりも、追う立場の方が勢いづいていける」と前向きにとらえている。

何よりもチームは一つにまとまっている。試合後、ピッチの上では選手とスタッフによる円陣が組まれた。富澤の発案で3試合前から始まったという。円陣の中央で梅鉢貴秀が体をのけぞらせながら大声で叫んだ。

「行くぞ、絶対! 次勝って、次も勝って! 俺たちは強い!」

ホーム最終戦ではJ3王者のブラウブリッツ秋田を迎える。開幕から28戦無敗というJリーグ新記録を打ち立てたチームは確かに強い。でも、大丈夫。恐れることは、何もない。俺たちは、強い!


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)