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05-02-2019

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.18『勝敗よりも大事なもの』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.18
vs カマタマーレ讃岐
『勝敗よりも大事なもの』

これもサッカー、なのだろうか。

あれから数日が経った今でも、この試合を消化しきれていない自分がいる。4月28日、カマタマーレ讃岐をホームに迎えての第7節は、悪い意味で記憶に残る試合になった。

前半の早い段階で梅井大輝が退場し、10人になった。相手に押し込まれながらも、数少ないチャンスをつかんだ。74分にセットプレーで富澤清太郎がゴール。不可解な判定があったのは、その直後だった。

75分、右サイドからのクロスボールに合わせようとする讃岐のFW我那覇和樹に、相模原のDF小田島怜が寄せたプレーが、ファウルと判定されたのだ。小田島は我那覇の体をつかんでいたわけでもなければ、ボールが来るタイミングよりも早くぶつかっていたわけでもない。

空中に浮いたボールを、ゴールを狙う側とゴールを守る側が競り合う。サッカーで当然とも言えるプレーに対して、堀格郎主審は迷うことなくPKを宣告した。これを決められ同点に追いつかれると、試合はそのまま終わった。

個人的には、審判の判定についてとやかく言うのは好きではない。審判についての専門的な知識を持っているわけではないし、多くの観客の中で笛を吹く審判という仕事へのリスペクトは持っているつもりだ。

試合中はミスジャッジだと思っていたけど、あとで見たら正しい判定だった……という経験は誰でもあるだろう。人間の目というのは、自分が思っているよりもいい加減だし、どんな立場で見ているかによっても変わってくる。

僕自身はSC相模原のオフィシャルライターだから、相模原に有利な判定が下されれば喜ぶ。不利な判定だったら腹が立つ。そんな人間が、審判の判定に何かを言っても、まるで説得力がないだろう。これまでも審判については基本的に触れないようにしてきたし、これからもスタンスを変えるつもりはない。

ただ、今回の判定はあまりにもひどかった。現地で取材をして、家に帰ってからDAZNで何度も映像を見たが、印象は変わらなかった。あれがPKになってしまうのであれば、サッカーでコンタクトプレーはできなくなるではないか。そんな風に思ってしまうほどに。

救いだったのは、相模原の選手たちの試合中、そして試合後の振る舞いだった。早い段階で10人になりながらも、ワンチャンスをモノにして何とかゴールを決めた。歓喜の直後に、不可解な判定でPKを与えられた。普通だったら、審判を全員で取り囲んで抗議してもおかしくない。

相模原の選手たちはそうしなかった。どうしてPKなのか? というジェスチャーはしたものの、詰め寄ることもしなかった。ファウルをとられた小田島にしても、落ち着いた口調で主審に話していた。

なぜ、相模原の選手たちは激昂しなかったのだろうか--。勝手な想像になるが、僕は応援してくれる人の存在があったのではないかと思う。相模原の選手たちは試合後に全員がハイタッチをしている。自分たちを、どんな人が応援してくれているかを、文字通り肌で感じている。

この日の公式入場者数は3704人だった。たくさんの家族連れが来場して、芝生席ではピクニック気分でサッカー観戦を楽しんでいる人がいて、キッズエリアを元気に走り回っている子どもがいた。

SC相模原のオフィシャルライターになって2年目だが、僕はまだ選手がブーイングを浴びたり、サポーター同士が衝突したりといった場面を目撃したことがない。どんな状況であっても前向きな言葉をかけるし、応援することを楽しんでいる。そんなスタンスは勝てない時も変わらなかった。

プロクラブにとって、勝敗は大事だ。一つのプレーが、勝敗を分けて、クラブの運命を変えることもある。ただ、勝敗よりも大事なものも確かにある。何があったとしても、前向きに乗り越えていく。それは、SC相模原というクラブが12年という歴史の中で積み上げてきた文化だと思う。

リーグ戦初出場を果たし、先制ゴールを決めたキャプテンの富澤の言葉もまた前向きだった。

「勝ち切れたらベストでしたけど、粘り強く戦っていくという成功体験をみんなが少し感じられたんじゃないかなと。いつも良いゲームをして勝てたらそれが一番良いですけど、耐えて勝ち点1をとることもある。こういう苦しい時も勝ち点1をとったり、どうにか1-0で勝ったりといったチームになっていけたらと思います」

良いことも悪いこともある。納得できることも納得できないこともある。そうしたものを全員の力で乗り越えていく。これもサッカー、いや、これがサッカーなのだろう。

取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)