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04-18-2019

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.17『複雑な敗戦』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.17
vs ブラウブリッツ秋田

『複雑な敗戦』

 試合後に残ったのは不思議な感覚だった。スコアは1-2。SC相模原はブラウブリッツ秋田に敗れた。ただ、ピッチ上の内容と実際のスコアに、これほど開きがある試合も珍しい。

 それは秋田の間瀬秀一監督にとっても同じだったようだ。記者会見の第一声は、およそ勝利監督とは思えないものだった。

「この試合の結果だけを見た人と、この試合を実際に見てもらった人のギャップが激しいんじゃないかという試合です。自分が指揮したチームがこんなに守り続けたことは初めてですし、こんなに守り続けて勝ったのも初めてです。正直、複雑です」

 前節、アウェイでロアッソ熊本に劇的な勝利を収めた相模原は、3週間ぶりのホームに帰ってきた。先発メンバーには若干の変更があった。熊本戦で負傷退場したミルトンのポジションには、途中出場した小田島怜がそのまま入るとともに、ボランチに稲本潤一が今季初先発を果たした。ジオヴァンニが外れて、シャドーの位置に梶山幹太が上がった。

 メインスタンドから見て、右から左に強い風が吹く中でキックオフ。前半、風上に立った相模原は何度もチャンスを作った。6分に伊藤大介が強烈なミドルシュートを放てば、14分には稲本のパスに走り込んだ川上盛司が折り返して阿部巧が合わせる。

 ゴールが決まるのは時間の問題かと思われた。だが、相模原はまたしても先制を許してしまう。24分、DFラインの背後を突かれると、深い位置をえぐられてクロス。最初のシュートはGK浅沼優瑠が弾いたものの、こぼれ球を押し込まれた。

「ゲームはコントロールしているけど、一瞬の隙を突かれてしまう」(末吉)

 先制されたものの、相模原の選手たちにネガティブな雰囲気はほとんどなかった。熊本戦では2点を先行されたところからひっくり返している。チャンスをしっかりと決めれば、十分に勝てるという自信がチームにはみなぎっていた。

 同点ゴールは37分。梅井大輝がロングスローを入れると、ニアで稲本が触ってコースを変える。ゴール中央のスペースに入ってきたのは、伏兵・川上だった。北九州戦では梅井のスローからジョンが直接合わせて決めた。当然、相手はそれを警戒してくる。それ見越し、別のパターンを仕込んだのが実った形だった。

「練習でもやっていましたし、ジョンのところに何人か行くなと思ったので、そこをしっかり突けたのはよかった」(稲本)

「イナさんとは、スローインの前にコミュニケーションを取っていましたし、狙い通りでしたね。僕のところが空くのはわかっていたので」(川上)

 川上のJリーグ2シーズン目にしての初ゴールは、相模原の2試合連続の逆転勝利へのプロローグになるかと思われた。しかし、そうはならなかった。前半終了間際、ゴール前に放り込まれたボールをキャッチに行った浅沼とヘディングで跳ね返そうとした梅井が交錯。ペナルティーエリア内にこぼれたボールを拾った秋田の選手を、近くにいた稲本が引っ掛けてしまう。宇田賢史主審は迷わずPKスポットを指差した。

「あそこは自分がキャッチしたほうが流れになると思ったので『キーパー!』と声をかけて取りに行ったんですけど、それがウメくんに聞こえていなくて、かぶってしまった感じです。ウメくんは『あんまり無理して出ないでいいよ』とも言っていたので、そこは試合の中で判断していきたいです」(浅沼)

 あの場面は、通常のセオリーであればGKが飛び出した方が最も触る確率が高かっただろう。ただ、194センチの梅井であれば、ジャンプして競り負けることは考えにくい。たらればではあるが、GKの浅沼は飛び出さずに梅井に任せてもよかったかもしれない。スタメンとしては2試合目の浅沼と守備陣の連携不足が露呈した失点シーンだった。

 1-2で折り返したハーフタイム、三浦文丈監督は「ポジティブに捉えよう」と選手たちに声をかけた。ボールは握れている、チャンスは作れている、自分たちを信じてやれば必ず逆転できる--と。

 ただ、2点差をひっくり返した熊本戦の再現はならなかった。前半だけで9本を数えたシュートは、後半は2本に留まっている。前半同様にボールは支配していたにも関わらず、フィニッシュに持ち込む回数が激減してしまった。

 三浦監督は後半の頭から上米良柊人、移籍後初出場となる水野晃樹、ラスト5分でジオヴァンニと攻撃的なカードを次々と切った。それでもゴールに至らなかったのは、守りを固めた相手を崩しきるほどの攻撃ができなかったからだ。

 記者会見の終わりに「悔しいなぁ」と本音をこぼしながらも、指揮官は前向きな姿勢を崩さなかった。

「自分たちがボールを握るサッカーをしていこうとする中で、今日のようにブロックを作ってくるチームは必ず出てくる。その次のステップとして、どうやって崩していくかが課題になってくる」

 これから対戦するチームは、相模原のパス回しを分析して対策を講じてくるだろう。勝ち点を積み上げるためには、そうした相手を上回っていくことが必要になる。ジョンをおとりにしてロングスローから決めた、この日のゴールのように。



取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)