SC相模原

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10-23-2016

 試合結果 

Vol.15 J3第26節鹿児島戦マッチレポート

20161023_MR_J326_01 2016年10月23日13:00KICK OFF@相模原ギオンスタジアム SC相模原 0−4 鹿児島ユナイテッドFC [得点] 相模原:— 鹿児島:28分赤尾公、47分中原優生、81分、88分藤本憲明 |前節の5失点に続き、今節も4失点でチームは4連敗 試合を終えてスタジアムを後にする、まさにその去り際、工藤祐生は絞り出すように言葉をこぼした。 「本当に早くヤスさん(安永聡太郎監督)に1勝目をプレゼントしたい……もっと早く1勝できると思っていたのに……今はこんなにも勝つことが難しいのかと感じています」 指揮官が安永監督になってからは、川口能活に代わってキャプテンマークをつけている。失点が増えている現状に誰よりも責任を感じているからこそ、その表情には険しさと悔しさが滲んでいた。 2016年10月23日、SC相模原はホームに鹿児島ユナイテッドFCを迎えたJ3第26節で、0−4の完敗を喫した。 これによりチームは4連敗。安永監督が指揮してからは1分5敗と、未だ勝利を挙げられずにいる。加えてグルージャ盛岡に0−5の大敗を喫した前節に続いての4失点という結果に、指揮官もさすがに落胆の色を隠せなかった。 20161023_MR_J326_02 |守備をセットして戦った前半は決定機を作り出せず 勝ちたい、勝利を届けたいと考えているからこそ、鹿児島との一戦ではスタイルを変えてまで臨んだ。大量5失点を喫した盛岡戦を受けて、SC相模原は前からプレスを掛けてボールを奪いに行くのではなく、4−1−4−1システムによる守備ブロックを形成することで、相手を自陣に誘い込み、ボールを奪おうとした。 開始早々の4分にはロングボールからFWの藤本憲明に抜け出され、GK川口能活の好セーブで難を逃れるという窮地はあったものの、守備を強く意識した戦い方は、前半の28分に失点するまで狙いどおり遂行できていた。 1トップで起用された石田雅俊も自陣に戻り、2列目の岩渕良太、トロ、菊岡拓朗、井上平が相手の横パスに対して連動した守備を見せていく。そして、サイドに相手を追い込むと、攻撃を食い止めていった。 ただ、11人が一定の距離感を保ち、ポジションをセットするその戦い方は、守備を強く意識するあまり、チーム全体の重心をも後ろに傾けてしまった。そのため、ボールを奪っても前への迫力が出せない。すなわち、全く攻撃に打って出ることができず、チャンスらしいチャンスを作り出せなかったのだ。 組織的にボールを奪っても、相手のハードワークも手伝って、再びボールを失ってしまう。また自陣に戻って相手を追い込み、奪って攻めようとしては、またボールを失う。この繰り返しの中で、SC相模原は好機を演出することができなかった。 そして迎えた前半28分、パスミスから相手にボールを奪われると、MF赤尾公にミドルシュートを放たれる。これがDFに当たり、コースが変わると、鹿児島に先制点を許してしまった。 安永監督就任後、初めてとも言える守備的な戦い方をした前半、シュートはFKから工藤が放ったヘディングの1本だったように、決定機と呼べるような場面は皆無だった。 20161023_MR_J326_03 |後半反撃するも、結果的にゴールを奪えず 追いかけるSC相模原は、ハーフタイムで石田を下げ、深井正樹を送り込む。そして、ここから反撃なるかと思われた後半2分、DF赤井秀行がつり出され、その裏のスペースを使われると、鹿児島のMF中原優生に2点目を決められた。 記者には、両チームの監督による指示が記載されたハーフタイムコメントなるものが配られるが、安永監督からの指示には「下を向かず走り切る」とのコメントがあった。だが、それが手元に配られるよりも早く失点したチームは、大きく出鼻を挫かれ、また下を向いてしまっていた。 それでも2点を追いかける後半は、前からボールを奪いに行くことで、チャンスも作った。後半11分に赤井に代わって飯田が中盤に入り、坂井洋平がCBに下がると、細かいパス交換により、攻撃にテンポとリズムが出てきた。後半7分には深井が左サイドを突破してクロスを挙げると、岩渕がヘディングシュートを放つ。後半21分にも自陣から細かいパス交換で相手ゴール前まで運ぶと、岩渕のスルーパスに、左SBの保﨑淳が走り込んでシュートを放った。また、後半27分にも飯田が展開したことによるチャンスから、途中出場した近藤祐介が決定機を迎えた。 ただ、安永監督就任後の5試合で3得点の攻撃陣は、この日もゴールネットを揺らすことはできなかった。安永監督になってから攻撃的なポジションを任されるようになった岩渕は猛省する。 「前節もシュートを外しまくってしまっていただけに、今回こそは取り返さなければと思っていたんですけど、結果的に得点を奪えず、不甲斐ないですよね……5試合で2得点だし、チャンスはないわけじゃないので、責任は感じています」 20161023_MR_J326_04 |苦しい状況だからこそ、チームのために 加えてチーム全体が得点を奪おうとするあまり、前掛かりになりすぎて大きくバランスを崩してしまった。結果、相手の反撃を受けたとき、両SBの2人ともが上がっていて、工藤、坂井のCB2枚しか残っていない状況に陥っていた。もともと、坂井はCBではなく、失点の多さを考えれば、チーム全体としてリスクマネジメントしておくべきである。保﨑が上がっているのであれば、逆サイドの普光院誠は下がる。それは逆もしかりである。また、1ボランチのトロは下がっておく。もしくは、攻撃していないサイドのMFも状況に応じては、守備を意識しておく必要があった。急ごうとするあまり、リスクを度外視してバランスを崩せば、3失点目、4失点目を奪われるのは、必然と言えたかもしれない。 試合後、指揮官は「得点に関しては基本的に水ものだと思っているのですが、僕が監督に就任して、3得点18失点ですかね。それが18失点10得点くらいで来ていれば……それでも良くはないですが……18失点3得点という現状がある」と振り返った。 得点も奪えなければ、失点も多いというのが正直、今のSC相模原が置かれている現状である。ただ、鹿児島の浅野哲也監督が勝因に「いい守備からいい攻撃ができた」と語ったように、SC相模原のベースもそこにあるはずだ。 「前から行く」にしても、「ブロックを作る」にせよ、いい守備のベースがあってこそ、ゴール前での自由であり発想は生きることになる。 試合後、安永監督はこうも語っている。 「現状、今の(DF)ラインの設定でやるのは難しいのかなと、もう少し時間が掛かるのかもと、自分の中で初めて迷いがでたというか……。そこの部分はひとつ自分の中でどう解消していこうかなということを感じたゲームでもあります」 だからこそ敢えて期待したい。指揮官が、チームが、ぶれることなく戦えるかどうかを。就任直後の大分トリニータ戦や栃木SC戦、さらにFC琉球戦では、結果こそ伴わなかったが、ピッチにはワクワク感が漂っていた。「試合終了のホイッスルが鳴ったら全員がぶっ倒れるようなチーム」と安永監督が指針を掲げたように、就任当初は未完成ながらも、相手の鹿児島が見せたようなハードワークやチームのために身を粉にして走る選手たちの姿があった。 前は前、後ろは後ろではないし、攻撃も守備も別物ではなく一体である。攻撃陣は守備陣を助けるためにゴールを奪い、守備陣は攻撃陣を信じて失点を抑える。その犠牲心こそが、チームとしての一体感を生み、念願の勝利につながるはずだ。 去り際に工藤は、もうひと言、言葉を発していた。 「シーズンも終わりが近づいてきて、みんないろいろと考えることはあると思うけど、相模原のために、このチームのためにプレーしたいと思えない選手がいるとすれば、その選手はピッチに立つ資格はないと思う」 工藤は神奈川県1部リーグ時代から数えて今シーズンで在籍7年目を迎えている。だからこそ、思いは強い。 川口もまた工藤に「苦しいときだからこそ、チームをもう一度、引き締めよう」と試合後に語りかけたという。 アウェイ2試合を挟んで迎える11月13日の藤枝MYFC戦は、今シーズンのホーム最終戦となる。結果が出ない中でも、今節は4312人の人が足を運んでくれた。苦しいシーズンをずっと見守ってきてくれたサポーターのためにも、最後は笑いたい。チームへの犠牲心こそが、きっと、その答えとなる。