
2016年6月19日15:00KICK OFF@相模原ギオンスタジアム
SC相模原 0−1 カターレ富山
[得点]
相模原:
富 山:41分北井佑季
|1点に泣いた試合でキャプテンが掛けた言葉
試合を終えてロッカールームに戻ったGK川口能活は、キャプテンとしてチームメイトに声を掛けた。
「負けはしたけど、ここ最近で一番、内容のいい試合だった。悲観することなく、気持ちを切り替えて次の試合に臨もう」
その言葉は、仲間を奮い立たせるために言った建前ではなく、本心だろう。J3リーグ第13節のカターレ富山戦に臨んだSC相模原は、自分たちが意図する攻撃の形を作れていた。それこそ相手を圧倒する時間も長かった。得点するチャンスも一度や二度ではなかった。それだけに悔やまれる1失点だった。
前半終了間際の41分だった。SC相模原は連動した守備により、相手をうまくサイドへと追い込むと、ボール奪取に成功する。そこからボランチの坂井洋平が縦パスを狙ったが、これが不運にも相手の足に当たり、カターレ富山の木本敬介のもとに転がる。これをうまくつながれると、DF國吉貴博にミドルシュートを放たれる。これがまた、ミスを取り返そうと戻った坂井の足に当たり、CKを与えてしまった。
そして、その右CKからDF北井佑季にヘディングで決められ、SC相模原は失点した。ファーサイドに上がったクロスを、川口は懸命に両手を伸ばして弾いたが、競り合っていたDF代健司の頭に当たってこぼれ、北井に押し込まれてしまったのだ。
「少し嫌な雰囲気というか、嫌な空気が流れていたんですよね」と、感じ取っていたからこそ、川口は「自分がもっとしっかり弾いていれば……」と、チームを救えなかったことを悔やんだ。
それは前節、大分トリニータを相手に萎縮して0−3の完敗を喫したチームメイトたちが、発憤していたからこその自責の念でもあった。守護神として、キャプテンとして、何よりもチーム随一の経験者として、チームを助けられなかったことに憤りを感じていた。
|キャプテンと同じ思いを感じ取っていたチーム
ただ、その思いは川口だけではなかった。出場停止が明け、2列目の右サイドで先発出場したMF岩渕良太も神妙な面持ちでミックスゾーンに姿を見せた。
「今日の敗因は決めるところの精度でしかない。チャンスの回数で言えば、僕が一番多かったと思う。実際、3回か4回は決めるチャンスはあった。そこで決めれば、チームは勝っていた」
岩渕と同様、ケガが癒え、前節から先発復帰を果たしたMF曽我部慶太も猛省する。
「前半1回、後半1回……決めなければいけないシーンはあった。それなのに前半は逆サイドに外し、後半はGKに止められてしまった」
岩渕が悔やむ決定機は、21分にDF天野恒太のクロスに飛び込みながらシュートを外した場面と、50分にDF保﨑淳のクロスに頭で合わせた場面であろう。
また、曽我部が挙げたのは、30分に保﨑のクロスを岩渕が落とし、ペナルティーエリア内でシュートしたシーンと、52分に菊岡拓朗の縦パスを受けて反転するとシュートしたシーンのことだ。
ともに決定機を外して無得点に終わり、チームを勝利へと導くことができなかったことを、彼らもまた責めていた。
|見えてきた攻撃の形と課題
事実、富山戦に臨んだSC相模原は、守備を念頭に置いてプレーした前半も、追い掛ける展開を強いられた後半も、幾度も好機を作り出した。
CKから1失点を喫した守備にしても、相手を自陣に引き込むと、坂井と飯田涼がサイドに相手を追いやり、チームとしてのボール奪取に成功。また、ボールを奪うと、そこからショートカウンターを繰り出し、素早く相手ゴールに迫った。
前節の大分戦では、会場の雰囲気やJ1経験のあるクラブの名前に萎縮し、戦う姿勢を見せられなかっただけに、今節見せた逆襲の狼煙に、薩川了洋監督も可能性を感じていた。
「内容的には、この間の大分にやられた0−3よりも数段に良くなっている。うちのほうが(チャンスは)多かったしね。やっぱり1点を決めきるか、決められないか。勝ったから向こう(富山)のほうが強いんだけど、内容には自信を持っている。J2にいたチームに対して圧倒できたということには、自信を持ちたい」
積み上げてきたものが、徐々にではあるが、目に見える形となって表れつつある。そんな未来を覗かせるような試合ではあった。だからこそ、最後尾からその様を見ていた川口も、こう言葉を続けてくれた。
「失点した後、みんな取り返そうとする姿勢を見せていたし、ここ数試合では一番いい試合をしていた。確かに連敗は痛いですけど、何もできなかった大分戦では、みんな、自信を失いかけていたけど、負けていい試合ないことは分かった上で、今日はそれでも前向きに捉えられる」
|今季最初のターニングポイントを迎える
ただし、だ。90分を通して見れば、まだまだ、なくせるミスも多ければ、チャンスはあったとは言え完璧に崩し切ったと明言できる場面は少なかった。結果的に無得点に終わった事実が示すように、フィニッシュにおける個人の精度や質も含め、取り組んでいかなければならない課題は多い。試合終了間際にはFW服部康平を入れ、ゴール前にロングボールを放り込み会場を沸かせたが、その形は意図した攻撃でもなければ、目指す形でもない。
第11節を終えて首位に立っていたSC相模原は今季初の連敗により、7位へと後退した。厳しいことを言うのは、現状の7位がチームの目標でもなければ、終着点でもないからだ。薩川監督も試合後には、はっきりと言葉にした。
「J2でも戦えるチームを目指していきたい。今、どうこうというサッカーを自分はやろうとは思っていない」
首位との勝ち点差はわずか3である。ここで追いすがるのか、それとも引き離されるのか。まさにSC相模原は、今シーズン最初のターニングポイントを迎えようとしている。