相模原ギオンスタジアムの外周エリアに出現する、巨大なガミティを模したふわふわ遊具。
今季からホームゲームの際に登場した“SC相模原キッズパーク”を支援するのは、クラブのトップパートナーであり、相模原市を拠点とする光学ガラス・特殊ガラスメーカーの株式会社オハラだ。
普段ガラスの商材を扱う企業がなぜ、キッズパークを手がけるようになったのか。総務人事センター 人事部 人事課長の中村大亮(なかむら だいすけ)さんに企業の考えや思いを聞いていくなかで、中村さんが熱狂的なサガミスタであることも発覚した。
会社の課題解決と地域貢献のため、キッズパークが登場
──オハラさんは今季から登場したSC相模原キッズパークの支援をされてクラブと関わりを持っていますが、普段はどういった事業を展開している会社なのでしょうか?
当社はガラスの製造メーカーです。窓や瓶など一般的なガラスとは異なる高性能・高均質な光学ガラスを作っていて、カメラのレンズや内視鏡をはじめ、半導体製造装置用レンズ、大型天体望遠鏡や衛星といった宇宙関連機器にも使われています。
──そんな会社がなぜSC相模原のスポンサーを始めることになったのでしょうか?
歴史を少しお話させていただくと、当社は1935年に大田区の蒲田で創業しました。戦時中に空襲から逃れるために相模原市へ移り、約80年、相模原市を拠点に事業活動を行ってきました。
SC相模原とのつながりについては、望月重良さんがチームを作られたばかりの頃にアプローチを受けていたこともあったそうですが、スポンサードするようになったのは2022年のエナフェスで協賛のお声がけをいただいてからでした。そこから、やるなら何か目的を持って協賛しようという思いで関わらせてもらうようになりました。
──クラブへの協賛を通じて、どんなメリットを見出そうとしましたか?
協賛をしていくなかで、当社の企業価値や知名度向上につながればと思っています。我々は高卒者採用で地元の学生を採用しているのですが、いわゆるBtoB、企業向けの事業をメインにしているため、「オハラ」の名前を見ていただくことが少なく、どうやって応募者を増やすかが課題でした。そこで「相模原で宇宙にも関連する製品を作っている企業がある」と子どもたちに興味を持ってもらいたいという思いから、最初は来場者に配布されたスペシャルユニフォームの背中にオハラのロゴを入れてもらい、スタジアムの園路にブースも出していました。
──相模原市にはWEリーグのノジマステラ神奈川相模原やラグビーの三菱重工相模原ダイナボアーズといったプロスポーツチームもあるなかで、なぜJリーグのSC相模原に協賛することになったのでしょうか?
地域に密着したクラブであることですね。それと当時はSC相模原の観客動員数が一番多く、そういった理由を説明してスポンサードの許可をもらったことも記憶にあります。協賛が決まって初めてのエナフェスでは天気がよくてお客さんもたくさん入っていて、当社ブースに来てくれたお客さんからは「小学校の社会科見学で行ったことある!」といった声も聞けましたし、協賛に対する感謝の声をもらえることもあって、よかったなと感じました。
──エナフェスでの協賛から始まり、クラブとはどのようにして関係性をより深めていったのでしょうか?
翌2023年のエナフェスでも協賛させてもらいましたけど、採用活動の“種まき”としては名前を出し続けないと大きな効果がないので、スタジアムのバックスタンドに看板を出させてもらうようになりました。SC相模原とはそこでより密接な関係になり、もっと大きなスポンサーになってほしいというクラブ側の思いも感じていました(笑)。ですが、金銭だけの支援をする関係というのは難しく、「なにか課題感を解決していくような関係になれないか」と思っていたんです。その時に「ジモトアイプロジェクト」を始めることをお聞きして、そこでパートナーシップを組んで地域や当社の課題解決につなげていけないかという話で進んでいきました。
──「ジモトアイプロジェクト」は教育・ウェルビーイング・環境保全の3つを重点領域としています。オハラさんとしては、どんな関わり方をしていこうと考えられていましたか?
環境面や食糧などいろいろありますけど、当社の課題解決も視野に入れて一緒にできることを考えた結果、子育て支援に力を入れていこうとなりました。子育てをしながら働いている社員も多く、福利厚生面の様々なバックアップも行っていましたが、託児所を会社単独で設けようとしても利用者は限られますし、自社ですべてを賄うことは難しい。ただ、子どもから大人まで親しみのあるSC相模原をハブに、クラブのスポンサーさんや地域の会社と組めば、課題解決と地域貢献の両方ができるんじゃないかと思いました。
──その取り組みの一つが、スタジアムの外周エリアに誕生したキッズパークだった。
そうです。クラブから提案をいただいた企画で、子どもが中で遊んでいる間、一瞬ですけれども保護者の手が空きますし、出てきた子どもが楽しそうな顔をしていたら幸せな空間がそこで出来上がるじゃないですか。そんな空間をキッズパークでは実現できていると思います。今はガミティの存在感が強いですけど、毎回そのほかの遊具を変えてもらっていて、さらに充実したスペースにしていきたいですね。
──中村さんはふわふわの中に入ったことはありますか?
「入ってもいいですよ」と言ってもらえたことはありますけど、恥ずかしくて(笑)。ただ小学6年の娘は実際に遊んで楽しんでいました。
──キッズパークを作って、週末に家族全員で足を運んで遊ぶ場所を作りたいという思いはクラブと合致しそうですよね。
そうですね。ホームスタジアムはスタグルも含めてすごく充実していて家族連れで楽しめる場所ですし、小さい頃からサッカーに触れるきっかけになってほしいという気持ちが私のなかにはあります。サガミスタにならなかったとしても、スポーツを好きになって一喜一憂して、職場や学校とは違う仲間を作ってと、自分の生き甲斐になるものを見つけてほしいなと思っています。
サガミスタとしてホームゲームは皆勤中。社内では普及活動も
──中村さんは週末の試合にはどれくらいのペースで足を運んでいるのでしょうか?
ホームゲームは全試合行ってますね。昨季からサガミスタになったんですけど、皆勤を続けていて家族みんなと見ています。
──社内で普及活動もされているのでしょうか?
私がホーム戦社員招待の応募窓口になっていて、抽選のうえいただいたチケットのQRコードをメールで配信しています。
──抽選しなければいけないくらい、応募者数がいるんですね。
そうですね。ただ、初めて応募してきた方を優先するようにしています。ぜひ試合の雰囲気を味わってほしいので。
──ちなみに、中村さんはアウェイゲームにも行かれたりするのでしょうか?
はい。去年は松本にもいきましたし、沖縄にも行きましたね。夏休みの最後の方だったので、家族を連れていって。
──かなりディープなファンになっていますね(笑)。
元々サッカーが好きでJリーグはもちろん、JFLも見ますし、OBで運営担当の鈴木淳さんが所属している、神奈川県教員SC(神奈川県リーグ1部)の試合も見ることがあります(笑)。
──お子さんも一緒になってサッカーを見ているのでしょうか?
自宅で自分が見ている試合を横で見ていることはありましたけど、子どもがスタジアムで初めて観戦したのはSC相模原の試合でした。最初は、試合よりもかき氷だったりスタグルが美味しいというところや、ふわふわを楽しむといったところから入って、「楽しい場所」という印象を持ってもらうだけでもいいと思います。私はずっと相模原市で暮らしてきて、複数の路線が通っていて、大型商業施設もあり、生活しやすい街だと感じています。一方で、市民として誇れるものをもっと作れる気がしているので、SC相模原がそんな存在のひとつになってくれたらいいなと思いますね。
──西谷義久代表取締役社長は、「シビックプライドを持てる街になるために、スポーツの力を活用したい」という話を常々していますよね。
茨城に祖母の家がありまして、その昔、鹿島アントラーズのジーコを目当てに試合を見に行ったことがあるんですけど、鹿嶋中の人が集まっていて、その時に「サッカーってすげえな」と思いました。相模原市は、都内で働いている人にとっての“ベッドタウン”なんですよね。相模原に住んでいてもこの街に関心がない人もいると思います。そういう人に、「うちにはSC相模原がある」と思ってもらえるようなチームになってほしいと思っています。
──昨季は勝てていなかった時期が長く続きましたけど、中村さんがホームゲームに通い続けた理由はなんだったのでしょうか?
試合に行くのをやめようと思ったことは、なかったですね。試合はスタンドから見ていた方がピッチ全体を見ることができますけど、いつからかゴール裏に行くようになりまして、あの熱気や選手へのポジティブな声かけに感動しましたし、負け続けていてもそういうファンがいるチームは絶対に強くなるだろうなと感じます。昨季にホームで開催された奈良クラブ戦は嬉しかったですね。ずっと勝てていなかったトンネルを抜けて選手の笑顔も弾けていましたし、周りのサガミスタも、家族みんなも泣いてました(笑)。
──継続して応援しているからこそ、クラブに対する思い入れや勝った時の喜びは強くなりますよね。
はい。だんだん選手の顔つきやプレーぶりが変わってきたのを感じますし、一緒の空気を共有しているからこそ、悔しさや喜びという同じ感情を分かち合える。1試合だけを見た時の感情とはまったく違いますね。だからやめられないんだと思います(笑)。同じようにハマる方を増やしていきたいですし、最近はグループ会社の社員にも声をかけています。自分の周りでもサガミスタの輪が少しずつ広がっていってほしいですね。
キッズパークを各地に出張させていきたい
──今、クラブと一緒になって進めている計画はありますか?
「ジモトアイプロジェクト」を動かしていくにあたって、社内のプロジェクトメンバーとSC相模原さんの社員が組んで、共同プロジェクトを今、進めています。子育て支援を形にするために、キッズパークをいろいろな場所で展開して、いずれは託児所を一緒になって運営したいという話があります。5月に当社の敷地内にあるローズガーデンを一般公開した時に、ガミティのふわふわが初めて出張するということもありました。従業員や近隣の方にも親子連れでたくさん来てもらって、楽しんでもらうことができました。
──オハラさんによるキッズパークが相模原に笑顔を増やしていく。
そうですね。各地でどんどんそうした活動を増やしていけたらいいなって思います。J1を中心にスタジアムに託児所を設けているクラブもあって、同じようなことができないかと構想を進めています。保育士さんがいてはじめて実現できることですが、調べていくと、地元大学やスポンサーによる協力もあるようなので、すごく参考になっています。また、当社は製造業なので、モノづくりの楽しさを子どもたちに伝える企画などもできたらおもしろいと思っています。
──今後はクラブと共にどんなことを実現していきたいですか?
当社は長い歴史をもつ企業ではありますが、時代の変化とともに新たなことにチャレンジをしなければいけないステージにいます。SC相模原も昨季は選手がガラッと変わりましたし、DeNAさんが親会社として入って次のステージへ本格的なチャレンジを始めているフェーズだと思います。一緒になって相模原という地でチャレンジして、成長していきたいなと思っています。あとは地域貢献もしていきたくて、その一つが子育て支援になります。そこで幼い頃からSC相模原にも触れてもらって、そしてオハラのことも知ってほしい。いつかは「相模原市と言えばSC相模原があってオハラもあるよね」と思ってもらえたら嬉しいなと思います。
──逆に、このインタビューを読まれてオハラさんへなにか貢献したいと思うサガミスタもいると思いますが、なにをすればいいでしょうか?
サガミスタのみなさんに私たちの製品を買ってくださいと言うわけにはいかないですし、そうですね……もしSC相模原とのプロジェクトに賛同いただけましたら、当社のことも応援いただけると嬉しいです。今年の5月にX(旧Twitter)アカウントも開設しましたので、こちらもぜひフォローをお願いします!
https://x.com/OHARA_glass_PR