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03-14-2021

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.41 『勝ち点1以上のもの』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.41
vs ザスパクサツ群馬
『勝ち点1以上のもの』


 2試合連続でのホーム、相模原ギオンスタジアムでの開催となった第2節のザスパクサツ群馬戦。天候に恵まれた(風は強かったけれども)京都サンガF.C.戦とは打って変わり、気温9.2度と季節が逆戻りしたかのような寒さの中での試合となった。

 キックオフ2時間前――。群馬戦のスタメンが発表された。そこには2019年の相模原加入以降、1試合も出場していなかったGK三浦基瑛の名前があった。「モト、スタメン!」「GKもっくん!」。サガミスタのSNSは試合前から“お祭り”になった。

 開幕戦で出場していた竹重安希彦が怪我で100%の状態ではなかったこともあるが、三浦文丈監督はそれだけが三浦をスタメンに起用した理由ではないと明かす。

「練習からいい顔つきでやっていましたし、試合が始まってもすごく落ち着いていました。『ゾーンに入ってきたかな』と思って見ていました。昨シーズン、J3で出しとけばよかったかなとも思いましたけど(笑)」

 1年目は田中雄大、2年目はビクトルと相模原には絶対的な守護神がいた。三浦は常に2番手、あるいは3番手として他のGKを支えてきた。この2年間で心が折れそうなことは「何度もあった」という。それでも、いつかチャンスが来ることを信じてずっとやってきた。

 スタメンで出るかもしれないと告げられたのは水曜日だった。試合前は「緊張はあったし、睡眠時間はそんなに確保できませんでしたが、家を出てからは緊張はなくなって頭の中はシンプルに試合を迎えられた」。

 渡辺彰宏GKコーチから言われたのは1つだけだった。「ファーストプレーをハッキリしろ」。GKにとってその日の出来はファーストプレーに大きく左右される。デビュー戦であればなおさらだ。

 三浦にとってJリーグの“ファーストプレー”は開始50秒で訪れた。群馬のコーナーキック。スタッフが、サガミスタの視線がピンクの16番に注がれる中、三浦はインカーブで向かってきたボールを前に出て大きくパンチングで弾き出した。

「序盤のコーナーキックをしっかり潰せたことで『今日はいけるな』と感じました」(三浦)

 三浦監督は京都戦からGK三浦を含めて6人を入れ替えてきた。0-2で敗れたとはいえ、京都戦は決して悪い内容だったわけではなかった。だが、三浦監督は「京都に対しては京都用のメンバーを組むし、群馬に対しては群馬用のメンバーを組む」と大幅なスタメン変更を決断した。

 今シーズン開幕前、全員が集まった場で三浦監督はこのように言っている。

「42試合、全員の力で乗り切るよ」

 チームが強くなっていくには、個人が伸びていくためには、チーム内で競い合っていく必要があると。昨シーズン、“不動の存在”と呼ばれるぐらい絶対的な選手がいるポジションにも新戦力を迎えたのも、そのためだ。

 開幕戦で右ウイングバックとして先発したのは石田崚真だった。昨シーズン、出場停止を除いて34試合中33試合出場した夛田凌輔でも、ポジションが約束されているわけではない。それは個人ではなくチーム全体へのメッセージになったはずだ。

 群馬戦のスタメンはGK三浦、最終ラインが川崎裕大、鎌田次郎、梅井大輝、ワイドが右に夛田、左に星広太、アンカーに川上竜、インサイドハーフに芝本蓮、清原翔平、2トップにはホムロと平松宗。

 アンカーの川上に関しては「群馬用のメンバー」という戦術的な意図が色濃く感じられる。京都戦では右センターバックで出場した川上の特徴は広い視野と正確なキックだ。23歳でギラヴァンツ北九州のキャプテンを任された川上は自らの役割を冷静に解説する。

「うちのワイドに対して相手は4枚なので必然的にワイドはかなり空くと分かっていたのでFWを見ながらシンプルにサイドチェンジをすることをいつもよりは意識していました」

 三浦監督が描いていたゲームプランは、相手の攻撃をしっかりと抑えながらも、自分たちがボールを持つ時間帯もつくることだ。そのために3バックとアンカーにはボールを動かせる選手を配置している

 とはいえ、相模原が狙い通りの試合展開に持ち込めたかというとそうではない。初出場した三浦を含めて守備陣の粘りでなんとか失点をゼロに食い止めたものの、最後までゴールネットは揺らせなかった。

「永遠の課題になるかもしれませんがとにかく最後のクロスの質だったりラストパスの質を上げること。あとは攻撃のポイントとして提示しているところがあるので、それをやり続けながら精度を上げていかないといけない」

守備面に関しては三浦監督は群馬対策として大きく2つのポイントを選手たちに提示していた。

 一つ目は、チャレンジ&カバーの関係を作ること。トップ下の大前元紀を攻撃の起点としてコンビネーションで崩してくる群馬に対しては1人ではなく2人が協力し合うことが必要になる。

 二つ目は、セットプレーをなるべく与えないこと。群前はコーナーキックやフリーキックでは大前から質の高いボールが飛んでくる。ファウルをしたり、タッチに逃げたりすればピンチに直結する。

 群馬のシュート数は23本。相模原の5本だから実に4倍以上を打たれている。それでも奥野僚右監督に「シュート数と結果が結び付かなかった」と言わせたように、決定的なピンチは1、2回しか作らせなかった。

 54分に藤本淳吾、68分に和田昌士、81分にユーリと攻撃的なカードを次々と切っていった。これはホームで勝ち点1をとることをよしとするのではなく、勝ち点3をとりにいこうという貪欲な姿勢の表れだった。

 群馬戦は相模原にとって大きな意味を持つ試合になった。3年目で初出場したGKが堂々としたプレーを見せた。新たに出場した選手たちが自分の実力を示した。そしてJ2で初めての勝ち点を獲得した。勝ち点1以上のものをつかんだと言っていい。

 試合後のZOOMでの記者会見で三浦監督は次の試合の目標を宣言した……らしい。実は広報が三浦監督が話す前にミュートにしてしまっていたので、記者陣には聞こえていなかったのだ。プレスルームにやってきた広報が、三浦監督の最後に言っていた“幻のコメント”を伝えてくれた。

「次は絶対に勝ち点3を取りたいです!」



取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)