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12-19-2020

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.38 『諦めの悪いやつら』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.38
vs ブラウブリッツ秋田
『諦めの悪いやつら』

タフなゲームだった。ホーム最終戦となるブラウブリッツ秋田戦は、球際でのぶつかり合い、空中での競り合いが90分間を通して繰り返された。

「何とか勝ち点3を狙いたかったのですが、秋田さんはさすがJ3王者だけあって最後まで集中が切れなかったですし、うちもこじ開けることができませんでした」(三浦文丈監督)

J3をぶっちぎりで優勝した秋田のサッカーはSC相模原との共通点が多い。攻撃ではロングスローを多用し、セットプレーからの得点数が非常に多い。何よりも全員が粘り強く、諦めずに戦う。

「秋田さんはセットプレーから54得点中25点をとっていて一番の脅威です。勝つためにはセットプレーを防がないといけない」

だが、37分にSC相模原はセットプレーから失点してしまう。ロングスローを投げると見せかけて後ろの味方に下げて、リターンを受けた選手がフリーでクロスを入れるという変化をつけた形だった。

「アウェイでの秋田戦の失敗を活かして、相手のやることへの対策や準備はできていたのですが……」(富澤清太郎)

秋田は先行逃げ切り型のチームだ。セットプレーなどから先手を取ったら、そこからガッチリと守備を固めて、前がかりになった相手の裏をついて追加点を狙う。それがJ3王者の“勝ちパターン”だ。

痛恨の失点と言っていい。それでも、SC相模原はすぐさま取り返した。

41分、左サイドの星広太の縦パスがスイッチとなって、鹿沼直生がヒールで落とす。そこに3人目として入ってきたのは才藤龍治だった。ペナルティーエリア内、左45度、目の前にはいるのはGKだけ――。

「最初はファーに打つつもりだったんですが、打つ瞬間にニアに低いボールで打ち抜くイメージが湧いたので、思い切り振り抜きました」

ニアのコースを狙った才藤のシュートは、J3でダントツの失点数の少なさを誇ってきた秋田の守護神・田中雄大でも止められなかった。SC相模原は前半のうちに同点に追いつくことに成功する。

それにしても頼りになる男だ。爆発的なスプリントによる裏への飛び出し、90分間ハードワークできるスタミナ、あらゆるポジションをこなす万能性、チームの大きな武器となったロングスロー。この13番がいなければ、後半戦の快進撃はなかっただろう。

三浦監督は後半に次々にカードを切っていく。75分に和田昌士と清原翔平の2枚替えで前線をフレッシュな選手に入れ替え、84分には“最終兵器”ユーリまで投入する。だが、秋田の強固な守備を最後まで崩すことはできなかった。

どうしても勝ちたかった。1時間遅れで行われているAC長野パルセイロとFC岐阜で長野が勝った時点でSC相模原のJ2昇格の可能性は事実上消滅してしまう。それでも、監督も、スタッフも、選手も、誰一人として諦めてはいなかった。

ホーム最終戦セレモニーでマイクの前に立った三浦監督は、ファン・サポーター、スポンサー、行政の方々への感謝の気持ちを述べた後、熱のこもった言葉で挨拶を締め括った。

「俺はね、諦めが悪い男なんで、最後今治で絶対勝って待ちます!最後まで戦うんで、よろしくお願いします!」

キャプテンの富澤もそれに続いた。

「僕自身も、監督以上に、諦めが悪いんで。信じて、最終戦勝って、その時を待ち、昇格したいと思います。このメンバーにパワーを送ってください!」

もしかしたら……相模原ギオンスタジアムから発せられた熱い思いが250km離れた長野Uスタジアムに届いたのかもしれない。長野と岐阜の2位・4位対決はどちらもゴールが生まれずドロー。これにより最終戦で長野が引き分け以下で、SC相模原がFC今治に勝てば逆転でJ2昇格が決まる。

試合後のオンライン記者会見で終わったばかりの長野と岐阜の試合結果を伝えられた三浦監督は興奮気味に話した。

「なんかあるよ、これは。今シーズン、粘り強くやってきたから。とにかく、みんなの思いを背負って、最後まで戦ってきます」

第16節から18試合負けなし。楽に勝った試合はほとんどなかったけれども、全員が力を合わせて勝ち点を積み上げてきた。1チーム、また1チームとJ2昇格争いから脱落していく中で最後までしぶとく生き残った。

12月20日、アウェイのFC今治戦。諦めの悪い監督が率いる、諦めの悪い選手たちは今シーズン最後の戦いに挑む。その背中には、めちゃめちゃ諦めの悪い、たくさんのサポーターがついている。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)