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07-22-2020

 お知らせ 

KITAKEN MATCHREPORT Vol.31『千明のガッツポーズ』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.31
vs ヴァンラーレ八戸
『千明のガッツポーズ』

ヴァンラーレ八戸戦のキックオフを告げる笛が鳴ったのは、アスルクラロ沼津戦のタイムアップから、およそ47時間後のことだった。

7月15日、SC相模原は沼津とのアウェイを0-0で引き分けた。決定的なチャンスを何度か作ったものの、ゴールをこじ開けるには至らなかった。J2昇格を目指すチームとして勝ち点1は満足のいく結果ではない。それでも、三浦文丈監督は前向きな言葉を残した。

「評価しなければいけないのは、しぶとくやっていること。あとはトレーニングマッチで負けていないので、決してネガティブになりすぎないようにしたい。次はホームで八戸戦なので、なんとか勝ち点3をとれるように頑張りたいです」

極めて短い時間の中で、沼津戦の課題を分析し、体力の回復を計り、八戸戦に向けて準備しなければいけない。

「2日しかないのでコンディション的にきつい選手もいる。ドクター、トレーナーとも選手の状態を確認しますが、何人かは入れ替えざるをえないんじゃないかと思っています。11人だけじゃサッカーはできない」

三浦監督の言葉通り、八戸戦のスタメンでは沼津戦から3人の入れ替えがあった。

GKはビクトル、DFは夛田凌輔、田村友、白井達也、星広太、ダブルボランチは梅鉢貴秀、鹿沼直生、サイドは右が松田詠太郎、和田昌士、2トップは三島康平と清原翔平。

センターバック富澤の位置に大卒ルーキーの白井が、ユーリとホムロのブラジル人2トップに代わって三島と清原が起用された。

昨年から怪我がちだった富澤に関しては、無理をさせて長期離脱につながる怪我をするリスクを避けるためだろう。ユーリに関しては「30分限定でパワーを出させようと思った」と三浦監督が明かしている。ただし、三島と清原の“日本人2トップ”にしたのは八戸のサッカーを封じ込める目的もあったと思う。

八戸はセンターバックと中盤の底に位置するアンカーの3人を中心にボールを動かしてくる。そこで自由に持たれてしまうと、これまでの4試合と同じように守備に回る時間が長くなる展開になってしまう。

守備では先頭にいるFWがコースを限定したり、後ろの選手たちがボールを奪いやすい状況をつくったりすることが必要になる。ただ、ブラジル人が2トップにいる場合は、ちょっとしたポジショニングやボールに行くタイミングを試合中に修正するのは、言葉の問題もあって簡単ではない。

三浦監督は試合前のミーティングで「サイドを変えられないように、2人ではめ込んでいく形」を強調していたという。実際に、三島と清原は常にお互いの位置を確認しながら、八戸のビルドアップの起点となる2CBとアンカーを監視していた。

相手がパスを出してくる方向を誘導することで、後ろの選手は先手をとって動くことができる。前半から何度も高い位置でボールをとれていたのは、2トップから始まる連動した守備ができていたからだ。

先制ゴールが生まれたのは13分。夛田が最終ラインから右前方のスペースにフィードを送ると、松田が抜け出す。松田がマイナス方向にクロスを送ると、長い距離を走ってきた和田が正確にシュートを流し込んだ。

「良いボールが来たので、浮かさないように、ふかさないように、抑えて打とうと思ったら、ちょうど良い感じでミートしたので入ってよかったです。結構速いボールだったので、来たボールを面を作って、そっちのサイドに流しこうと思って、イメージ通りでした」

相模原ギオンスタジアムで、3試合目にしてようやく訪れた歓喜の瞬間だった。富澤がベンチだったことで和田の左腕にはキャプテンマークが巻かれていた。「プロになってからは初で、違和感がある」とのことだったが、開幕から攻守に責任感のあるプレーをする姿からは、チームリーダーの風格が漂いつつある。

良い形で試合に入れたが、八戸も反撃をしてくる。GKビクトルを中心とした守備陣が体を張って失点を許さない。ただ、前半終了間際の45分、八戸の高見啓太にゴール前でターンからシュートを決められてしまう。同点で前半を折り返すことになった。

後半、三浦監督が動く。ハーフタイムに清原に代えてホムロを、54分に三島に代えてユーリを投入。ゴールを決めて勝ち点3をとりにいく――。この交代策はピッチで戦っている選手への、そしてスタンドやDAZNで観戦しているサガミスタへの明確なメッセージでもあった。

68分、ゴール中央の位置でボールを持ったホムロが右の松田に出す。松田は対面のDFを縦にズラすと、素早い足の振りからグラウンダーのクロスを入れる。これに合わせたのはホムロ! 得点を期待されて後半から投入されたホムロが決める理想的な形で、相模原が勝ち越す。

「すごくうれしい。チームを助けるためにプレーしているので、うれしい気持ちでいっぱいです」

ここまでは良かった。ただ、そこからタイムアップを迎えるまでは何度も冷や汗をかいた。ユーリとホムロの2トップになったことで、前半のように守備がハマらなくなり、相模原陣内に押し込まれる時間が長くなったのだ。和田は言う。

「5分とか10分とか最後に押し込まれるのはしょうがないかもしれないけど、押し込まれる時間が長かった。自信を持ってつないで、自分たちの時間をつくることをやっていかないといけない。勝っているからこそ、引くんじゃなくて、もう1点とるぐらいの気持ちでやりたいです」

三浦監督は80分に才藤龍治、88分には富澤を「全体的にはよくやっていたけど、若いなというミスがちょっと目立ってきた」白井に代えて入れる。ボールを追いかけ回す才藤と、豊富な経験を持つ富澤の2人がそれぞれの役割を全うしたこともあって2-1での逃げ切りに成功した。

中2日という難しい状況を乗り越えて、SC相模原が2020年のホーム初勝利を手にした。

「ホームで勝っていなかったので、内容は積み上げなければいけないけれども、勝つことによって良い流れ、雰囲気は出てくるんじゃないかと思っています」

個人的にうれしかったことがある。それが勝ち越しゴールが決まった後、ベンチの選手たちが立ち上がってホムロを迎えたことだ。心の底からガッツポーズをしていたのが、ここまで5試合すべてにベンチ入りしながら、まだ1分もピッチに立っていない千明聖典だった。

千明だけでなく、ベンチ外になった選手も含めて、自分が試合に出たいという気持ちがないはずはない。それでも、自分が出られない時でも、チームのためにできることをやり切る。この勝ち点3はピッチに立っている選手だけでなく、日々の練習から切磋琢磨してきた、すべての選手の力でつかんだものだ。

Jリーグ初出場を果たした白井は試合後に言った。

「ギリギリの試合を拾った後が本当に大事だと思うので、3連戦に向けて良い準備をしていきたいです」

このチームは、まだまだ上に行ける。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)