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07-14-2020

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.30『勝ちたかった理由』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.30
vs AC長野パルセイロ
『勝ちたかった理由』

勝ちたかった。タイムアップの笛が鳴った後に湧き上がってきた、素直な感情だった。良い試合はした。戦う姿勢を見せた。ただ、勝ち点3がほしかった。

J2昇格という目標を果たすためには。

7月6日、SC相模原は条件付きながらもJ2クラブライセンス申請を行ったことを公式HPで発表していた。Jリーグによる審査を経て発表されるのは9月下旬。まだライセンスの交付が決まったわけではなく、喜ぶには早すぎる。それでも、クラブにとって大きな前進となったのは間違いない。

2014年のJ3参入以来、SC相模原には「結果を出してもJ2に上がれない」という状況がつきまとっていた。明確な目標が持ちづらいことが、チームが年々順位を落としていった要因の一つにあるのは確かだろう。

J2ライセンスの取得はSC相模原にかかわるすべての人にとって悲願だった。J3で2位以内になれば、J2に上がれる可能性がある――。

ブラウブリッツ秋田から移籍してきた新戦力の夛田凌輔は正直な言葉を口にした。

「みんな口には出さなかったけれども、スタジアム建設運動のことや、コロナの影響もあって、本当にわからないところだったので。ホッとしたというのが大きかったです。あとは自分たちがどれだけ順位を出せるか。ピッチで全力を注ぐだけだなと思っています」

7月11日のAC長野パルセイロ戦は、J2ライセンスの申請発表後、初となる公式戦だった。加えて、今回からはリモートマッチでない。通常の半分程度はあるものの、スタジアムの周りにはキッチンカーが並び、スタンドには緑のユニフォームを着たファン・サポーターがいる。

だからこそ、勝ってJ2昇格に向けて弾みをつけたかった。

三浦文丈監督は3-2で今季初勝利を挙げたアウェイの藤枝MYFC戦と同じスタメンを並べた。GKはビクトル、最終ラインは右から夛田、田村友、富澤清太郎、星広太、ダブルボランチに梅鉢貴秀、鹿沼直生、サイドは右が松田詠太郎、和田昌士、2トップはユーリとホムロのブラジル人コンビだ。

試合は藤枝戦と同様に、立ち上がりから長野に押し込まれる展開に。15分すぎまではほとんど相模原陣内でゲームが進んでいった。ただ、ある程度は想定していたという。

「長野さんは攻守の切り替えがめちゃくちゃ早くて、10人のFPがめちゃくちゃ走ると感じて選手にも伝えました。そういうチームには、そんな簡単にはいかないよ、粘り強くやらないといけないよとインフォメーションしながら入っていきました」

相模原にとって最初のチャンスは17分、左サイドの開いた位置でボールを持ったホムロがライナー性のクロスを入れる。そこに飛び込んだのは右サイドバックの夛田。渾身のダイビングヘッドは外れたものの、そこから相模原の時間帯になっていく。

32分がショートコーナーから和田が右深くまでえぐって折り返す。ユーリが入っていくが決められない。38分には松田がホムロとのワンツーから抜け出してユーリへ横パス。しかし、DFに寄せられてシュートは枠を外れてしまう。前半はそのままスコアレスで折り返す。

1人1人がハードワークをしてくる長野をどうやって攻略するか。スカウティングを踏まえて、三浦監督は選手たちにヒントを与えていた。

「守備の戻りが早いので、戻す前に攻めるのがチャンスだよと。カウンターを一つ決めたかったなと。ボールを回している時は、ボールに対して激しくくるので、そこを利用してワンツーや3人目が入ってくプレーをどんどんやろうよと強調していました」

攻撃の起点となっていたのがホムロだ。10番を背負うブラジル人ストライカーは、前線でボールをおさめてタメを作って、トリッキーな体勢からのパスを何本も繰り出した。

ただ、決定的なチャンスになったのは数えるほどだった。公式記録上ではシュート本数は相模原が11本、長野が5本と倍以上打っているものの、決定的と呼べるものは数えるほど。効果的なカウンターから3点を奪った藤枝戦とは対照的な試合展開と言っていい。

左サイドで攻守に奮闘していた和田が、ゴールをこじ開けられなかった要因を分析する。

「前半からずっとボールを持たれる展開になって、なかなか攻撃に力を使うことができていなかったですし、とったボールをつなぐところでのミスも多かった。だいぶ(相手を)引き込んじゃったので、なかなか自分たちの時間が短かったので、そこは反省点です」

守備から攻撃に切り替わった後のパスがつながらず、カウンターを仕掛けることができず、再び相手にボールを持たれてしまう。アタッカーたちは守備によって体力を削られ、攻撃に出ていくことができない。

三浦監督は「どこかで決まるんじゃないか」「交代のカードを切るか」というせめぎ合いをしながらピッチサイドから試合を見つめていたという。だが、藤枝戦でユーリが決めたように後半の早い時間でゴールが生まれることはなかった。

70分以降、清原翔平、才藤龍治、三島康平と攻撃のカードを次々に切っていく。それでも、試合展開を劇的に変えることはできなかった。94分に左サイドからフリーキックを獲得して、梅鉢がこぼれ球を放ったものの決まらずにタイムアップ。開幕戦に続いて、ホームでは2試合連続引き分けとなった。

長野はタフなチームだった。実力が拮抗した相手に勝ち点1という結果は決して悪いものではない。ただし、J2に上がるためには、こういう試合で勝ち点3をとることが大事になる。

ただし、いつまでも結果を引きずっている時間はない。新型コロナウィルスによって開幕が遅れた影響で、過密日程をこなさなければならない。チームとしての総合力が問われる。

「連戦が続くこと、夏場ということで、厳しさもあると思いますが、どのチームも同じ条件です。僕たちボランチに与えられた役割では運動量は大きなウェイトを占めている。いくら体がきつくてもやらなければいけない仕事かなと思います」

90分を通じてピッチを走り回っていたボランチの梅鉢は、すでに次を見据えて気持ちを切り替えていた。タフな試合を引き分けての勝ち点1。これをプラスにできるかどうかは、中3日で迎えるアウェイのアスルクラロ沼津戦にかかっている。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)