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10-30-2019

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.27『勝ち点1から得るもの』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.27
vs 藤枝MYFC
『勝ち点1から得るもの』

「勝てた試合だった」

試合後に選手たちから出てきた感想は、決して強がりではないだろう。藤枝MYFC戦は2位と12位の対決とは思えないような、拮抗した内容となった。

藤枝のシステムは「3-3-2-2」。2トップ+2シャドー、前線4人のユニットを中心に攻撃を仕掛けてくる。

「できるだけ中を締めよう」

三浦監督は相手のストロングポイントを消すために、中央のゾーンに人を置く守り方を選択する。これが奏功し、前半から藤枝が良い形でシュートを打つ場面は皆無だった。

「自分たちは中をどれだけ突いていけるか。中に入れていくところで、かなりミスが多かったと思います」

石崎信弘監督がそう振り返ったように、藤枝は中を締められているのがわかっていても、狭いところを通そうとしてきた。相模原は3バックとダブルボランチが連動して相手の攻撃を食い止めた。

自分たちより上の順位のチームに対し、守備から入ることでリズムを作り出す。ゲームプランがハマった相模原に先制点が生まれたのは34分。左からのコーナーキックが流れると、ファーで受けた平石直人が相手をブロックしながら反転からシュート。これがファーサイドに突き刺さった。

「シュートの振りが早いのは自分の良さでもあるので、それが出せてよかったです」

平石はホッとした表情を浮かべた。今シーズン6点目を挙げたものの、得点シーン以外ではミスが目立った。常に率直な感想を言うサイドプレーヤーは「今日はひどかった」と自分の出来が良くなかったことを認めた。

ただ、三浦監督が言うように「それでもゴールを決める」のが平石という選手のすごさでもある。もともとフォワードだったからこその得点感覚は、相模原の大きな武器となっている。

後半が始まるとギアを上げてきた藤枝に押し込まれる。攻撃を跳ね返しても、セカンドボールを拾われ、二次攻撃、三次攻撃を受けた。失点を喫したのは、そんな時間帯だった。

58分、藤枝の左サイドで起点を作られクロスを上げられると、ファーサイドに入ってきた右ウイングバックの鈴木準弥に合わせられる。一度はDF24阿部巧が弾いたものの、こぼれ球を“デカモリシ”こと森島康仁に詰められた。

「ホームなので当然1−1のままじゃいけない」(三浦監督)

1-1となった後、三浦監督は積極的に動いた。72分に伊藤大介を下げて水野晃樹、78分に梶山幹太を下げて稲本潤一を入れた。

これまで稲本は、リードした試合で守備を落ち着かせる役割で投入されることが多かった。今日のように1-1の同点から勝ちに行くためのカードになるのは珍しい。稲本自身も「出るんだ」と驚いたという。

三浦監督が稲本に求めたのは第一に守備のバランスをとること。ただ、同時に勝ち越すためのカードとしても送り出していたという。

「晃樹という良いキッカーが入ったので、イナにはセットプレーで1発というのも期待していました。ツグ(大石治寿)、ソウ(中川創)、そしてイナがいれば、セットプレーでとれるんじゃないかと」

相模原は最後までゴールを狙い続けた。88分には水野のロングスローから大石がヘディングを放った。あと少しでこじ開けられそうな予感はあった。

後半のラストワンプレーでのコーナーキック。背番号29、水野がコーナースポットにボールを置いた。「ゴー! ゴー! 相模原!」。ゴール裏だけでなく、メインスタンドも、バックスタンドも、目一杯の力でタオルマフラーを振り回した。

だが、左から水野が蹴り込んだボールはニアで跳ね返された。1-1。2位のチームを相手に健闘したものの、勝ち点3をつかむことはできなかった。

「最低限の勝ち点1ですけど、悔しい勝ち点1という印象です」

三浦監督は複雑な表情を浮かべた。試合内容としては拮抗していたし、チャンスの数もほとんど変わらなかったのだから当然だろう。ボランチとして90分間ハードワークし続けた千明は振り返る。

「守備の安定は割としてきたし、4試合で2失点はそんなに悪くはないとは思う。あとは、前半にチャンスがあったところで2点目が取れていれば。そうすれば、もっと上に行けるはず」

どうしての多少の贔屓目が入ってしまうが、藤枝と相模原の間には2位と11位という順位ほどの差はなかったと思う。勝ち点をほとんどとれなかった8月と9月を、もうちょっと踏ん張れていれば、藤枝と上位を争える位置につけていただろう。

ただ、勝負の世界にたらればはない。藤枝が2位にいるのには理由があり、相模原が11位にいるのにも理由がある。

後半の頭に強度が落ちてしまったのはなぜなのか。失点した場面は防ぎようがなかったのか。最後のチャンスでもっと工夫はできなかったのか。

一つ一つのディティールを詰めること、もっともっと勝負にこだわること。「勝てた試合だった」で終わらせてはいけない。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)