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09-10-2019

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.24『新しい景色』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.24
vs ザスパクサツ群馬
『新しい景色』

これから花火が上がるというのに、相模原ギオンスタジアムにはどこか重苦しい雰囲気が漂っていた。第22節のザスパクサツ群馬戦、SC相模原は0-1で敗れた。これで3連敗。第19節のいわてグルージャ盛岡戦(○4-3)以来、勝利がない。

群馬は第18節から4連勝して首位に躍り出ていた。とりわけ、前節のAC長野パルセイロ戦は90分に同点、そしてラストワンプレーで逆転するという劇的すぎるものだった。

上昇気流に乗っているチームと、勝てずにもがいているチーム。試合前の時点で、SC相模原にとってかなり難しい試合になることは容易に予想できた。

「相手は1位で、良い状態にある、攻撃でもアグレッシブに、守備でも粘り強く戦える精神状態にあるのはわかっていた」(富澤清太郎)

キックオフと同時に群馬はものすごい勢いで襲いかかってきた。良い距離感でつながるパス回しに、ボールを失った後の素早いプレス。サッカー用語でいう「圧をかけてくる」状態が続く。立ち上がりから15分ぐらいは、ほとんどSC相模原陣内で試合が行われた。

「悪い時は悪いなりにやろう、耐える時は耐えよう」

三浦文丈監督は試合前のロッカールームでこう声をかけていたという。サッカーには「流れ」がある。よほどの実力差がない限り、どちらかが90分間ずっと攻め続けることはない。相手の勢いがすごい時間帯でも、それを耐え抜けば、どこかで自分たちの時間帯が訪れる。

だが、SC相模原は耐え切れなかった。14分、ペナルティーエリアに侵入してきた相手選手に対し、稲本潤一が止めに行く。わずかに遅れた足が引っかかって、ファウルをとられてしまう。PK。これを群馬の10番、青木翔太に決められる。

スコアが動いたことで、試合の流れにも変化が起こった。相手陣内でプレーする時間が増えて、チャンスを少しずつ作り始めた。最も惜しかったのは23分、コーナーキックから富澤がファーで折り返し、GKの正面でギリェルミが合わせる。誰もが入ったかと思ったが、ゴールラインでカバーに入った相手選手に当たってゴールならず。

0-1で折り返すと、ハーフタイムには守備の修正が伝えられた。群馬のキーマンである、トップ下の加藤潤也をどのようにマークするのか。DFラインとボランチの間にポジションをとる加藤には、前半から何度もやられていた。

基本的にはボランチのヴィニシウスか稲本のどちらかがつく。ただ、加藤は視野から消える動きをしてくるので、どうしてもマークが外れることがある。パスが入った時に、誰がつぶしにいくべきか。ポジション的には、センターバックの富澤が近くなることが多いが、相手の1トップである髙澤優也をフリーにはできない。共通認識がうまくとれず、加藤にゴール前の中央、いわゆるバイタルエリアでパスを受けられ、そこで攻撃の起点を作られていた。

後半、SC相模原は守備のオーガナイズを変えた。相手にボールを持って押し込まれた時は、3バックから4バックに変化する。具体的には左センターバックの阿部巧が左にスライドし、センターに富澤と中川創、右サイドバックに川上盛司が落ちる。

1トップの髙澤をセンターバックの2枚のどちらかで見る形にして、トップ下の加藤がフリーになっている時は、加藤から距離が近い方がつぶしに行く。中断期間中に加入したヴィニシウスはボール奪取力に優れた選手だが、とっさの状況でのコミュニケーションは難しい。それによる守備のズレを補完するための戦術だった。

こうした戦術変更ができたのは、左センターバックに阿部が入っていたことも大きい。ここまで基本的に左ウイングバックとして起用されていた阿部だが、丹羽竜平、梅井大輝の2人の出場停止という緊急事態によって、3バックの一角に入った。

「梅くんや竜平さんと違って高さはない。運動量や攻撃の部分で2人よりも多く出せると思っていた」と本人が言うように、マイボールになった時の攻撃参加や、1対1で走り負けないスピードはサイドの選手ならでは。センターバック・阿部はこの試合の最大の収穫と言っていいだろう。

攻撃時には、富澤と中川がワイドに開いて、真ん中にボランチのどちらかが落ちて3バックを形成。そして、阿部が左サイドの高い位置をとって、平石直人を前に押し出し、左サイドで厚みのある攻撃を展開した。これらは驚くことに、ベンチからの指示でやったのではなく、選手たちが自発的に行ったものだったという。

「僕としては少しでも高い位置をとりたいし、ビハインドだったので、チームとして生かそうとしてくれたんだと思います」(阿部)

「サイドで崩せそうな感じがあったので、人数を増やして、距離感を近くしてパスをつなぐのが有効なんじゃないかと」(富澤)

後半、SC相模原は首位のチームを何度も脅かした。相手の強みを消して、自分たちの強みを出す。それらを試合中に相手を見ながら行うのは、決して簡単ではない。ゴールを最後までこじ開けられなかったのは事実だが、このチームが確実に成長していることが見えたのもまた事実だ。

キャプテンの富澤は言う。

「今は苦しいところですけど、ちょっと踏ん張って良い流れに持っていけたら自信になる」

苦しいのは、応援される側も、応援する側も、一緒だろう。だからこそ、乗り越えよう、この苦しさを。その時、このチームは一つ上のステージに行ける。その景色を、みんなで見よう。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)