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07-16-2019

 お知らせ 

KITAKEN MATCHREPORT Vol.22『たかが一歩、されど一歩』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.22
vs FC東京U-23
『たかが一歩、されど一歩』


 勝ち点3は手の届くところにあった。FC東京U-23戦は後半アディショナルタイムに追いつかれ、3-3の引き分けに終わった。

「複雑な気持ちだなぁ……」

 記者会見場の椅子に腰掛けると、三浦文丈監督は本音を漏らした。ジェットコースターのようにめまぐるしい90分だった。18分、相模原の左サイドから攻められ、要注意選手の1人だった、U-20日本代表の原大智に先制点を決められる。

「立ち上がりのところで、ゲームにしっかり入るように言っていたんですが、相手に勢いがあって押されました」

 それでも、相模原は徐々にゲームの主導権を握り返す。同点弾を生んだのは、チーム総得点の2/3を占めるセットプレーだった。31分、右サイドのコーナーキックで末吉隼也が選んだのは、ショートコーナーだった。

「スカウティング通りです。あそこで2対1を作ってファーサイドを狙ってというのは前日の練習でやっていたんですけど、そこが良い形で出たと思います」(末吉)

 末吉→上米良→末吉→上米良とつないでクロス。これを頭で合わせたのはリーグ戦では5月19日のY.S.C.C.横浜戦以来の先発出場となるジオヴァンニだった。三浦監督からペナルティーエリアの中でのプレーを増やすことを求められていた10番が結果を出した。

 1-1で折り返した後半の立ち上がり、またしても失点を許す。相模原の左サイドでユ・インスに前を向かれ、グラウンダーのクロスを宮崎幾笑に蹴り込まれた。再びビハインドを背負った相模原。64分、三浦監督は1枚目のカードを切った。ジオヴァンニに代えてジョン・ガブリエルを投入。3-4-3から3-5-2にシステムを変えた。

「2トップだと、1人がある程度外に流れても、もう1人が中に残れるという状況が増える」(大石)

 相模原の狙いはより明確になった。サイドを崩し、クロスを入れ、ゴール前で合わせる--。それでもゴールが生まれないと、三浦監督はサイド攻撃の効果を高めるため、次の手を打った。

 80分、末吉と梶山幹太のダブルボランチを2人同時に下げて、ベンチスタートだった伊藤大介、サイドプレーヤーの水野晃樹を入れた。ここで三浦監督は複数のポジションを動かしている。

「伊藤を(ボランチ)で使う時に、どうしても攻撃的なので、守備的な選手を置かないといけないなと。ジョンとツグの2トップになった時に、横(サイド)からの攻撃がポイントになるので、(クロスの精度が高い)水野を入れるために、川上をどうするか。川上を(センターバックに)下げて、小田島を(ボランチに)上げたほうが、全体のリスク管理をしながら、横から入っていく形を出せるんじゃないかと」

 交代直後、相模原に追い風となるゴールが生まれる。梅井大輝のロングスローをジョンが頭で触ると、ゴール前の平石直人の足元へ落ちる。「今日はスリッピーだったので、トラップがうまく決まらなくて、何回か失っていたんですが、あそこはうまく決まって」。サイドを主戦場とする平石だが、ストライカーのような落ち着きでGKの股を抜いた。

スタジアムの盛り上がりがピークに達したのは88分、右サイドの伊藤がゴール前にクロスを供給する。競り合った大石の頭を超えたボールが左サイドに流れる。長い距離を走って、このボールに追いついた平石は中を見た。そして「ツグくんと完全に目が合った」。

 Jリーグ通算47ゴール。ストライカー・大石の真骨頂はゴール前でのワンタッチプレーだ。ただし、その技術を発揮するには相手のマークを外した瞬間を見逃さずに、パスを出してもらえるかどうかが生命線になる。

 練習中から大石は「俺はここに動くから、ここに出してくれ」と平石に要求し続けてきたという。平石が横に出したクロスの先には、フリーになった大石が走り込んでいた。

 ゴールネットが、揺れた。相模原ギオンスタジアムも、揺れた。

 2度のリードを追いつき、試合をひっくり返した。残り時間はアディショナルタイムを含めても数分しかない。勝ち点3は目の前にあった。しかし、相模原は守りきれなかった。90分、原にこの日2点目となるゴールを決められ、3-3。

 DFラインを統率した丹羽竜平は、3失点の要因として「行くべきところで行けなかったこと」を挙げた。

「プレッシャーに行くところで行かないと、相手は技術がありますし、シュートを狙ってくる。一歩でも半歩でも寄せていきたい。ああいうところの質を高めていかないと、今日みたいにもったいない失点をしてしまう」

 振り返れば、第12節のガンバ大阪U-23戦、第15節のヴァンラーレ八戸戦もそうだった。どちらも1-0で勝利したが、リードした後はボールへのプレッシャーがかからず、ほとんど一方的に押し込まれている。

「最後の締めるところでゆるみが出たのは見直さないといけない」(末吉)

 どうすれば勝ち点3をとれるのか。強いチームになっていくためには、チーム内でシビアに要求し合うことが必要になる。大石が「ここにボールを出してくれ」とチームメートに要求し続け、ゴールという結果を出したように。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)