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06-05-2019

 お知らせ 

KITAKEN MATCHREPORT Vol.20『大切なもの』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.20
vs いわてグルージャ盛岡戦
『大切なもの』

シュート数はSC相模原の15本に対して、いわてグルージャ盛岡は2本。最終的なスコアは1-0だったものの、90分を通して相模原が圧倒したと言っていい。

試合の流れを決定づけたのは開始からの5分だ。今シーズンの相模原には、どちらかといえば、スロースターターという印象があった。ふわっとした感じで入ってしまい、立ち上がりに失点を喫することも少なくなかった。ただ、この試合はまるで違った。

2分、左ワイド・平石直人のクロスに川上盛司が飛び込む。その直後には、2トップを組んだ大石治寿との連携から上米良柊人がシュートを放った。上米良のシュートがDFに当たって得たコーナーキックから、大石がニアで合わせたヘディングはクロスバー。

良い立ち上がりになった理由を、伊藤大介が明かす。

「このゲームに向けて、球際やセカンドのところを強調してトレーニングしてきました。自分たちの目指すサッカーを変えずに、弱さというか足りないところに焦点を当ててやってきて、それが立ち上がりから出せたと思います。いつもと違った入りができたというのをやっている僕たちも感じていました」

今年から三浦文丈監督が率いるチームは、「相模原スタイルを確立する」という目標のもとに、攻撃的なサッカーの構築に取り組んできた。実際に、昨年のチームに比べると、ボールを持つ時間は明らかに長くなったし、攻撃する回数も増えた。4節のギラヴァンツ北九州戦、5節のロアッソ熊本戦では、J2経験のあるチームを相手にも主導権を握る戦いを披露した。

ただ、試合を重ねれば相手も分析をしてくる。顕著だったのが、8節のAC長野パルセイロ戦、9節のY.S.C.C.横浜戦だ。高い位置からプレスをかけられ、選手同士の距離感が開き、パスを受けた選手が孤立する。球際の競り合いに持ち込まれ、ボールを失って、守備に回る時間が長くなる。ボールを持てなければ、相模原スタイルを出すことなどできない。

どうするべきか--。三浦監督が出した答えは「試合に向けたアプローチを変える」ことだった。

「相模原スタイルを確立しようとやってきましたが、ちょっと足踏みしていると感じていたので、そこを右肩上がりにするにためにどうするか。まずは、戦う。トレーニングの中でも試合と同じぐらいの厳しい状況を作って、そこをはがせるようになったらレベルアップにつながるんじゃないかと」

盛岡戦では、開幕から一貫して採用してきた3-4-3から、中盤の人数を1人増やした3-5-2にシステムを変えた。

グルージャのシステムは3-4-3。パスの供給源となる中盤のダブルボランチには、インサイドハーフの伊藤と6節以来の復帰を果たした梶山幹太がマンツーマン気味につく。その後方に守備力のある小田島怜を配置して、セカンドボールを拾う。90分を通じて相模原がペースを握れたのは、この中盤の3人によるところが大きい。

ずっと攻め続けた先に、ゴールネットを揺れたのは、スコアレスドローの予感も漂い始めた85分だった。梶山がペナルティーエリア内でボールを受けて、相手DFを背負った大石にパスを出す。大石のポストプレーからシュートを打ったのは伊藤だった。“相模原のファンタジスタ”の今シーズン初ゴールは、チームに勝ち点3と初の連勝をもたらす貴重なものになった。

この日のヒーローとなった伊藤は、チームの仲間への感謝を口にした。

「1週間の練習が良い雰囲気でできていて、ピッチに立っている選手だけじゃなく、ベンチの選手も、ベンチに入らなかった選手も含めて、チームでやってきたことが結果につながったと思います」

三浦監督の記者会見に先立って配られた公式記録には、今日の試合を象徴する数字がプリントされていた。

「盛岡 後半 シュート 0」

90分間、体を張り続け、泥臭くボールを追いかけ、ゴールを目指して攻め続けた。間違いなく、今季のべストゲームだった。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)