SC相模原

SC相模原

MENU

NEWS DETAIL

04-03-2019

 その他 

KITAKEN MATCHREPORT Vol.16『2年目の壁を乗り越えろ』

JLG3_19051_027.jpg


KITAKEN MATCHREPORT Vol.16
vs ギラヴァンツ北九州

『2年目の壁を乗り越えろ』

 関門海峡に面したミクニワールドスタジアム北九州。SC相模原がここに乗り込むのは、昨年4月以来、およそ1年ぶりだ。1年前のギラヴァンツ北九州戦は、1人の選手にとって大きなターニングポイントになった。

 開幕から5試合勝ち星なしで迎えた第6節、西ヶ谷隆之監督は正GKの変更を決断した。川口能活がサブに回って、代わりにスタメンに指名されたのは、桐蔭横浜大学から加入した田中雄大だった。

 そして、田中はプロデビュー戦で最高のスタートを切る。ルーキーとは思えない堂々としたプレーで完封すると共に、初勝利をチームにもたらしたのだ。これ以降、SC相模原のゴールマウスは22歳に託されることになった。32試合中26試合出場は1年目としては上々と言っていいだろう。

 昨季終了後、「金魚のフンのようについていきたい」と語っていた憧れの存在だった川口能活が現役引退。その川口から相模原の1番を受け継いだ。そして、開幕戦からスタメン出場を続けている。

 ターニングポイントとなったアウェイの北九州戦。1年前、自らの道を開いた場所は、しかし、田中にとって苦い記憶が残る場所となった--。

 昨季、J3リーグで最下位に沈んだ北九州は、小林伸二新監督の下で文字通り生まれ変わった。開幕から3連勝スタート。首位に立っている。「首位のチームにアウェイへ乗り込んで戦うということで、チャレンジャーの気持ちで挑もうと話していた」(三浦文丈監督)。

 前節でガイナーレ鳥取に2-1で勝利して今季初勝利を挙げたSC相模原としては、ここで首位の北九州に勝って勢いに弾みをつけたいところ。三浦監督は鳥取戦と同じスタメンをピッチに送り出した。

「今シーズンで一番良い内容だったのかなと個人的には思います」

 ボランチの末吉隼也が振り返るように、前後半を通じてSC相模原は多くの時間でボールを支配し、シュートも多く放った。末吉が一番の変化として挙げたのは「選手同士の距離感」だ。

「開幕のときはお互いが遠くて、つながっていかなかったんですが、そこはどんどん良くなってきています」

 ビルドアップをする時に、シャドーの伊藤大介やジオヴァンニが相手のボランチやセンターバックの間にポジションをとる。相手の守備を中に食いついたら、タッチライン際に開いたウイングバックがフリーになる。ウイングバックがボールを持った時は、シャドーやボランチが素早くサポートして複数の選択肢をつくる。

 1試合目はぎこちなさも感じられた選手同士の連携は、実戦を重ねることによって明らかに改善されている。この選手はどんな特徴があるのか、何をすれば良さを引き出せるのか、そうした共通理解が生まれつつあるのが大きい。

 負け惜しみでもなんでもなく、試合内容では上回っていたのはSC相模原が上回っていたと思う。北九州の小林伸二監督の「すごいしんどいゲームだった」というのは本音だろう。

 だからこそ、前半も後半も大事なところで失点してしまったという印象が強い。1失点目はコーナーキックから、2失点目はジョン・ガブリエルの同点ゴールが決まった直後に喫している。

 1失点目は高さで勝つのが難しいからとニアで触る形を狙っていた、北九州のスカウティングがハマったものだった。2失点目はDFラインの背後に浮き玉のパスを送られて、1対1の状況になった。

「GKが前に出てきているのが見えた」という北九州のFW佐藤颯汰は、体をひねりながらループシュート。弧を描いたボールは、GK田中の頭の上を越えてゴールネットを揺らした。佐藤の飛び出しはオフサイドにも見えたが、フラッグは上がらなかった。

 試合後の整列で伊藤が田中を呼び止めているのが見えた。そこで話されたのは2失点目のことだった。

「2点目のプレーの時に、ループになった瞬間にプレーを止めるなと。プレーを止めたつもりはないですが、客観的に見たらおっしゃるとおりですし、最後まであきらめなければ何かが変わっていたかもしれません」

 失点はもちろんGKだけの責任ではない。パスを出す選手にもっと寄せられなかったのか、飛び出したFWをフリーにしてしまったのはなぜなのか。しっかりとした検証がなされるべきだろう。ただ、田中はあくまでも自分に矢印を向けた。

「自分がやるべきこととしては、立ち位置だったり、シュートを打たれた後のステップの切り替えだったりがどうなったのかを、映像を踏まえて改善していきたいです」

 1番を背負い、開幕からゴールマウスを任せられながら、チームを勝利に導くプレーができていない。どうしてうまくいかないのか。どうやったら止められるのか。田中は今、もがいている。

「自分に求められているレベルも上がっているので、それに追いつき、引っ張っていけるようにしたいです」

 プロデビュー戦で初勝利をした歓喜の地で味わった悔しさ、辛さ、ふがいなさ。田中雄大が本当の意味で“相模原の守護神”になるためには、それらすべてを力に変えて乗り越えるしかない。


取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)