SC相模原

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10-15-2018

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.9『理にかなった勝利』

KITAKEN MATCHREPORT Vol.9
vs ギラヴァンツ北九州
『理にかなった勝利』

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相模原ギオンスタジアムに勝利の歌が響いた。4連敗というトンネルから、ようやく脱出してつかんだ勝ち点3だった。

ただ、試合後の西ヶ谷隆之監督は冷静だった。

「勝った時は気分は良いですし、その良さで勝てる部分もあるけど、本当の力をつけていくためには、勝っても負けても次に目を向けていかないといけない」

J3で最下位、17位のギラヴァンツ北九州をホームに迎えての第27節。キックオフ時間の17時には、空はすっかり暗くなって、ひんやりとした空気に包まれていた。

前節のカターレ富山戦から、西ヶ谷監督はシステムもスタメンも入れ替えてきた。

GKは田中雄大、DFは4バックで右から工藤祐生、米原祐、梅井大輝、丹羽竜平だ。工藤は右サイドバックでは今シーズン初先発。中盤はボランチがトロと千明聖典、右に保崎淳、左に梶山幹太、2トップはジョン・ガブリエルと、やや下がり目に谷澤達也という組み合わせだ。

システムを富山戦の3-5-2から4-4-2に変えたのは相手に合わせてのものだろう。北九州のシステムは4-4-2。だが中盤の並びは異なる。SC相模原がボランチ2人+サイドハーフなのに対して、北九州はトップ下を頂点に、サイドハーフ、ボランチが1人という、いわゆるダイヤモンド型だ。

前半のシュートはSC相模原が8本、北九州が4本と倍以上放っている。この数字からもわかるように、ゲームを優位に運べていたのはSC相模原だった。ポイントになったのは西ヶ谷監督の言葉を借りれば“ミスマッチ”をうまく作れたことだと思う。

「相手のサイドハーフが中気味に位置をとるから、そこのスペースをうまく使っていこうと考えていた」(工藤)

攻撃時にSC相模原はサイドハーフの保崎と梶山があまり中に絞らず、タッチライン際に開いて幅をとっていた。北九州からするとサイドバックが開いて見るのか、サイドハーフが横にずれてマークにつくのか、判断を迫られる。

相手のサイドバックがマークにくれば、DFラインの選手間の距離が広がる。そうなれば、前線にいるジョンや谷澤のマークがゆるくなりパスを引き出しやすくなる。もしも、サイドハーフがスライドして対応してくれば、中盤にスペースが生まれる。そこを活用するのは、主にサイドバックの工藤と丹羽だ。

今日の試合のスタメンを見た時に不思議だったのが工藤と丹羽のサイドバックだった。SC相模原よりも順位が下の北九州に対し、なぜDFラインにセンターバックタイプを4人並べるのかと。もっと攻撃的な選手、例えばオーバーラップが得意でクロスをあげられる辻尾真二などを起用したほうが良いのではないかと思っていた。

ただ、試合を見ていくと西ヶ谷監督の狙いがわかってきた。工藤と丹羽は相手のどこにスペースがあって、どのタイミングで上がっていくかの判断が良い。オーバーラップの回数は多くはなくても、質の高いフィードを前線に供給できる。

相手のシステムとの噛み合わせや、チームとして狙うことを考えれば、工藤と丹羽のサイドバックは理にかなったものだった。

前半を0-0で折り返すと、51分に歓喜が訪れる。前を向いてボールを持ったジョンから左サイドの保崎にパス。相手のDFと1対1になった保崎がドリブルで仕掛けて、縦にボールを運んでから左足でクロスを上げる。これをファーサイドで叩き込んだのは193cmのジョンだった。

ジョンの今シーズン15点目となるゴールが飛び出し、SC相模原が1-0でリードする。

「良いクロスが上ってきたので、ファーに自分から入って合わせた」(ジョン)。ゴールを演出した保崎は「適当に蹴ったんだよ」とうそぶいたが、GKに触られずに、ジョンが空中戦で勝ちやすいように、高く浮かして蹴ったボールは見事だった。

その後、北九州は197cmの大型FW、フェホを投入する。「早い時間でパワープレーになったのでハッキリした」(西ヶ谷監督)というように、SC相模原の守備陣はロングボールを放り込んでくる北九州の攻撃を、全員で体を張ってしのぐ。

1-0。

7月15日のグルージャ盛岡戦以来となる完封勝利で、SC相模原は勝ち点3を手にした。

とはいえ、西ヶ谷監督がいうように一喜一憂は禁物だろう。次節の対戦相手はセレッソ大阪U-23。「U-23のチームに我々はあまり相性が良くない」というように、今シーズンはセレッソ大阪(1-2)、ガンバ大阪(2-3)、FC東京(1-0、0-3)とU-23チームには1勝3敗だ。

良い試合をしても、次の試合では嘘のように崩れてしまう--。今シーズンのSC相模原は安定感のない戦いを繰り返してきた。すでに上位とは大きく離れてしまっている。そんな中で、なんのために戦うのか。2010年からクラブに在籍する工藤は言う。

「このチームのために、未来のために、そういう姿勢を見せることが結果につながると思うので。たとえ優勝できなくても、上位に行けなくても、一つでも順位を上げることが僕たちの使命なので、それをしっかりやっていきたい」

取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)