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07-26-2018

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KITAKEN MATCHREPORT vol.5『チームは生き物』

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KITAKEN MATCHREPORT Vol.5
vs福島ユナイテッドFC
チームは生き物

めまぐるしく変化したチーム

 チームは生き物だ。
 

 オフィシャルライターとしてSC相模原の試合を常に追いかけるようになって、改めてそのことを強く感じる。3月9日に開幕してからここまでの変化の多さは、実にめまぐるしい。

 思い返せば、開幕当初のシステムは4-4-2で、谷澤達也はボランチとしてプレーしていた。ただ、開幕から4試合で勝利に恵まれず、一時は最下位になってしまう。

 初勝利を挙げたのは第6節、ギラヴァンツ北九州戦。この試合の後半から採用した3バック、2シャドーの3-4-2-1は、その後しばらく基本システムになっていく。

 暗いトンネルを抜け出したかに思えたものの、5月6日の第10節、グルージャ盛岡戦での勝利を最後にSC相模原は1カ月半も勝利から見放されてしまう。とりわけ、6月10日の第13節、FC琉球戦の2-5の大敗はショッキングなものだった。

 その2日後、J2の松本山雅からDFの森本大貴が期限付き移籍での加入が発表された。関東学院大学出身の大型DFは5日後に行われたアウェイの福島ユナイテッドFC戦に先発出場を果たし、2-2の引き分けに貢献した。

 久々に歓喜の瞬間が訪れたのは6月23日、ホームでの第15節、FC東京U-23戦。11分にジョン・ガブリエルが挙げたゴールを守り切って、1カ月半ぶりの勝利を飾った。

 7月1日には名古屋グランパスから松本孝平が加入。186cm、85kgの大型ストライカーもまた、森本と同じく移籍後すぐに先発リストに名を連ねた。

 松本が先発した7月8日の第17節・ブラウブリッツ秋田(◯2-1)、7月15日の第18節・グルージャ盛岡(◯3-0)は2連勝。東北アウェイ2連戦で最高の結果を出して、相模原ギオンスタジアムに帰ってきた。

大型2トップがもたらしたもの

 福島ユナイテッドFC戦のスタメンは、GK田中雄大、DFは右から加納錬、米原祐、森本、工藤祐生、MFはボランチに丹羽竜平と千明聖典、右に保崎淳、左に谷澤、2トップはジョン・ガブリエルと松本。

 前半から目立ったのは、SC相模原が相手のゴール前まで攻め込む回数の多さだった。

 6分のシーンがわかりやすい。ジョンの横パスから谷澤が浮き球をワンタッチで前方に送り、丹羽が頭で落としたボールをジョンが打った。シュートは外れたものの、ゴール前に複数の選手が侵入していく「今まであまりなかった」(丹羽)仕掛けを何度か見せた。

 その要因として西ヶ谷監督は「ようやくFWが2枚揃ったところで、相手のラインを下げる作業、攻撃の起点を作る作業など、前線でのタメが作れるようになってきた」と語る。

 194cmのジョン、186cmの松本の2トップが高い位置でボールを受けてキープする。その間に味方の選手たちはポジションを押し上げていく。2トップと中盤の選手の距離感が近くなれば、必然的に複数の選手が絡んだコンビネーションも出やすい。

 タメを作れる2トップがいるメリットは攻撃面だけではない。相手陣内でプレーする時間が長くなれば、DFラインから前線までをコンパクトに保ちやすい。相手ボールになった時に、ボールの周りに人数が多いので、プレスをかけやすくなる。

 全体的にはSC相模原ペースだったが、先制したのは福島だった。67分、左サイドからのクロスに飛び込まれて決められて0-1。ここで西ヶ谷監督は素早く動く。70分に松本に代えてチッキーニョ、72分に加納に代えて辻尾真二を投入する。

 西ヶ谷采配が当たったのは、わずか数分後。76分、チッキーニョが左サイドで相手を交わしてGKと1対1のチャンスを迎える。「ゴールを狙った」というファーへのシュートに、長い足を伸ばして詰めたのはジョン・ガブリエル! ピッチの外でも仲が良く、常に行動を共にするブラジル人コンビが同点弾をもたらした。

 何度か勝ち越すチャンスを迎えながらもゴールは生まれず1-1でタイムアップ。勝ち点3はとれなかったものの、4位につける福島に先制されながら追いつき、引き分けに持ち込んだ。

“チーム”になるということ

 なぜSC相模原が調子を上げてきたのか? 要因としては大きく3つが挙げられると思う。

 一つ目が的確な補強を行ったこと。
 23歳と若いながらも声を出して味方を動かせるセンターバックの森本、186cmと大柄な体格を生かしてボールを収められる松本は、加入してすぐに先発出場したようにチームが求める人材だった。

 森本は松本山雅、松本は名古屋からの期限付き移籍。ポテンシャルは高いながらも、所属クラブで出番に恵まれていなかった選手を引っ張ってこられたのは大きい。

二つ目が若い選手が台頭してきたこと。

 23歳の森本や松本だけでなく、2年目の米原、加納なども出場のチャンスをつかんで勝ち点に貢献している。西ヶ谷監督は「まだ1、2試合なので」と簡単に褒めることはしないが、若手の台頭が喜ばしいのは間違いない。

 若手が起用されることでサブに回ったベテランの選手たちが、「もっとやらなければ」と競争意識を持っていけば、チーム全体のレベルアップにつながっていく。

 三つ目がチームになってきたこと。

 3試合で2勝1分という結果について、西ヶ谷監督は「当たり前のことをやれるようになってきたというのと、チームとして戦えるようになってきたというのはあります」と語った。

 森本の言葉もそれを裏付ける。「全員が力を合わせて、運動量も多かったし、球際も1人1人が負けず、最後まであきらめずに全員で戦えたとは思っています」

 ロシアW杯では優勝候補だったドイツ代表がグループリーグで姿を消した。どんなに優秀な選手がたくさんいても、歯車がうまく噛み合わなければ、全員が同じような気持ちで戦えなければ負けてしまう。それがサッカーだ。

 開幕戦から4カ月半。SC相模原は本当の意味で“チーム”になりつつある。7月28日に行われる、中断前の最後のゲームは、3月21日に予定されながらも雪のために中止になったアスルクラロ沼津戦。

 9勝5分3敗で2位つける沼津に勝てば、SC相模原は上位陣との勝ち点差を一気に詰められる。

 良い時も悪い時も足を運び続けているサガミスタのみなさんには、ぜひ周りの人を誘ってもらいたい。「SC相模原、強くなってるよ」「今のチームは見ていて楽しいよ」と。緑に染まったスタジアムが、勝利の喜びに包まれるシーンが見たい。



取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)