SC相模原

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10-30-2017

 試合結果 

14/J3第29節富山戦マッチレポート

20171029_MR_J329_01 2017明治安田生命J3リーグ第29節 2017.10.29 13:33KICKOFF@相模原ギオンスタジアム SC相模原3−2カターレ富山 [得点]相模原:8分、62分辻尾真二、80分ジョン ガブリエル/富山:33分木本敬介、38分佐々木一輝 |右MFの起用に応えた辻尾の先制点 殴りつけるように降り注ぐ豪雨の中、相模原ギオンスタジアムに駆けつけたサポーターは、いわゆる勝ち組だろう。前座として行われた『さがみはらドリーム』を見た後も、寒さと戦いながら声援を送り続けたからこそ、歓喜は訪れたとも言える。試合後、記者会見場に現れた安永聡太郎監督は、開口一番、「今シーズンの中でもベストなパフォーマンスが出たのではないかと思います」と語った。 それほどに見事な逆転劇だった。 カターレ富山を迎えたJ3第29節、SC相模原は、4−4−2システムで試合に臨んだ。みそだったのは、これまで主に右SBで起用されてきた辻尾真二が、1列前の右サイドMFで出場したことだ。安永監督は、辻尾の攻撃力を活かしたいという狙いがあったと語ったが、その辻尾がいきなり起用に応える。8分、前線でセカンドボールを拾ったジョン・ガブリエルが、ドリブルで中央に持ち込む。 「辻尾がフリーで走り込んでくるのは見えていた」とはジョンである。 「ただ、タイミング早くパスを出してしまうと、オフサイドになってしまうし、遅すぎても通らない。だから、ぎりぎりのところを狙ってうまくパスをを出せたかなと思います」 スピードに乗ったランニングで、DFの裏へと走り込んだ辻尾は、フリーで受けると、冷静にシュートを流し込んだ。 「僕が幅を取って、そこから展開していく動きを監督的には求めていたと思うんですけど、相手もCBが代わっているとあって、立ち上がりはぎくしゃくしているかなというのもあった。だから、ちょっとDFの裏を狙って抜けてみようかなと」とは、辻尾のコメントだ。 幸先の良い先制点だった。対する富山が主力CB2人を出場停止で欠き、急造の3バックで臨んできたことも奏功していた。先制点を奪った後、これまでならば受け身に回ってしまうことの多かったSC相模原だが、富山戦では、そうした姿勢が見られることもなかった。3バックの両サイドにできるスペースを、右は辻尾、左は保﨑淳と新井瑞希がうまく突き続けた。 ただ33分、富山に、中央から右サイドに揺さぶられると、その折り返しを苔口卓也に頭で流され、走り込んだ木本敬介に決められてしまう。さらに38分には、早いリスタートから苔口に深くえぐられると、折り返しを佐々木一輝に叩き込まれて逆転を許してしまった。 1−2でハーフタイムを折り返したときには、今季見続けてきた、いつもの流れかと脳裏を過ぎった。今まで以上に、ボールも保持できていたし、攻撃の形も作れていた。失点シーン以外は危ない場面もなく、むしろ決定機もたくさんあった。それでも、いつもの展開、いつもの結果を想像した。 ただ、選手たちにはやれるという手応えであり、自信があった。その気持ちに火をつけるかのように指揮官は選手たちを焚き付けた。ハーフタイムに安永監督は、こう声を掛けていたのだ。 「このまま負けたら、お前ら、もう終わっちゃうよ。今日のこのゲーム内容で、このまま下を向いて終わるようだったら、これから先、どんなチームと対戦しても、ひっくり返すことなんてできないぞ」 力強い檄を飛ばし、その上で、やるべきことを整理させた指揮官は、そうして選手たちを後半のピッチへと送り出した。まるで、この試合で、何かを伝えようとしているかのように……。 20171029-_MR_J329_03 |後半巻き返して今季初の逆転勝利 先制点を決めた辻尾が言う。 「(前半で)逆転はされましたけど、それ以外ではボールを持つ時間も長かったですし、自分たちがリードしている試合よりもボールを保持できていたと思うんですよね。それで攻撃にパワーが出せる状態だったし、だから後半も前に出て行く迫力につながったのかなと思います」 狙いは左から右だった。これまでならば、右SBを務めてきた辻尾の縦への突破が生命線だったが、左の保﨑と新井で作って、逆サイドに展開することで、好機を見出す。実際、53分にも左サイドで起点を作り、右スペースを駆け上がった辻尾にボールが渡ると、SC相模原はチャンスを迎えていた。 結実したのは、62分。相手が無理に蹴ったロングボールを梅井大輝がカットする。これを左SBの保﨑が受けると、千明聖典とのワンツーで中に切り込む。そして保﨑は、斜め前方に絶妙なスルーパスを送る。これを大外から走り込む辻尾がトラップしてシュートすると、DFの足に当たりながら同点弾は決まった。1試合で2得点。試合後、辻尾に聞けば、「プロになって初めてです」と言って、笑った。 「3バックの脇は空いていたので、淳がよく見てくれていたなって思います。それで走り込んだらパスが来たので、打ってしまえって思って打ったら入りました」 さらに80分だった。決定機を演出したのは再び保﨑である。FKの流れだったため、自陣に残っていた保﨑は、相手のクリアボールを右タッチラインぎりぎりで拾うと、そこからDFの背後にロングボールを入れる。反応したジョン・ガブリエルが抜け出すと、GKの股を抜く技ありのシュートで逆転に成功した。1得点1アシストにも「一番大事なのはチームの勝利」と謙虚な姿勢を変えることのないジョン・ガブリエルが語る。 「その前に惜しいヘディングのシュートもありましたし、常に得点は狙っている。あの場面は、淳が受けたときに、自分のところに出てくるかなって思ったので、走りました。DFも自分を把握できていないようだったので、あのポイントに走ったんです」 後半だけで2アシストを記録した保﨑は、彼らしく「絶対、みんな適当だと思ってるでしょ?」と笑う。 「(同点弾は)真二が走っているのが見えたから、ジョンを囮に使いつつ、奧の真二に出したんだよね。ただ、ふたりが被っていたから、『ジョン、さわらないで、さわらないで』と思った。足もとぎりぎりを狙ったら、抜けるかなって。(逆転弾も)ちゃんと見て出してるからね。ぎりぎりまでジョンを待って、あとは球が(雨で)滑らないでくれって思ってた。蹴った瞬間に、思わず『ジョン、ジョン』って名前を呼んでたからね。ただ、(シュートが)、うまかったよ。あのタイミングで股だもんね」 20171029-_MR_J329_04   |自分たちのストロングを活かすためのプレー 逆転できた背景には、保﨑も話していたが、これまでならばSC相模原がそうして後手に回ってしまっていたように、相手がリードを奪ったことで、引き気味に戦ってきたこともあっただろう。それによって、SC相模原は、この試合でボールを保持することができた。 ただ、同点弾が決まった直前のシーンがそうであったように、この試合での選手たちは、ボールを下げる勇気を持っていた。CBの梅井であり、岡根、ときにはGKの川口能活にまでボールを下げることで、自分たちが保持する時間を確保した。決してボールを下げることが良いと言っているのではない。縦につなぐパスを大切にすることで、攻守がめまぐるしく入れ替わり、体力を消耗することを防げたのが重要なのである。後半も、攻撃の勢いが衰えなかった背景は、まさにそこにある。 また、右一辺倒、左一辺倒になることなく、両翼からバランス良く攻撃を仕掛けられたことも大きい。左ならば、再三、仕掛け続けた新井のドリブルであり、右の辻尾もより高い位置でプレーしたことで、2得点を挙げることができたのだから。 20171029-_MR_J329_02 |指揮官が記者会見で発したメッセージ 逆転を許してもなお、後半に見せたリバウンドメンタリティーと、自分たちのストロングを活かすための判断であり、勇気。それを選手たちは90分間、遂行することで、今シーズン初となる逆転勝利という結果を手にした。今シーズンは、かつてないほどにチームは試行錯誤を続けてきたが、ようやく、ひとつの答えであり、指針を示したとも言えるだろう。おそらく安永監督も、納得のいく内容と結果を手にしたときに、この言葉を発しようと心に決めていたのであろう。 「残り5試合しかない中で、シーズン当初から1戦1戦勝利を目指していくと言いながら、(ここまで)こういう結果なので、私は責任を取らなければいけないなと思っています。ただ、この『4−4−2』というのが、うちの(望月重良)会長のひとつの考え方であるというのも、シーズン当初から話をしてきた中では分かっています。残り5試合で、来シーズンのSC相模原のために、この『4−4−2』でどんなものを残せるか。それを選手たちに提示することで、選手たちが次につなげていけるか。サポーターのみなさんにとっても、この『4−4−2』で来季に向けて希望を抱ける、ワクワクするような終わり方をしなければいけないと思っています。これだけの勝ち点にしかなっていないというところでは、本当に多くの責任を感じています。すべては私の責任なので、だからこそ残りの5試合で、次につながる意味での『4−4−2』で終わりたいなと思います」 4−4−2というのはあくまでシステムを表す数字でしかない。だが、苦しみながら、もがきながらも、SC相模原は形を模索し続けててきた。それはシステムという数字だけでなく、今シーズンという時間だけでもなく、未来へとつながるクラブとしての指針みたいなものなのかもしれない。 ワクワクする残り5試合を——。 20171029-_MR_J329_05