SC相模原

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10-04-2018

 お知らせ 

KITAKEN MATCHREPORT vol.8『ミラーゲーム』

KITAKEN MATCHREPORT Vol.8
vs ザスパクサツ群馬
ミラーゲーム

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「前半は相手のペースだったと思う」

 試合後の記者会見、先に登場したアウェーのザスパクサツ群馬・布啓一郎監督は渋い表情で振り返った。

「前半は相模原の長身の選手に入れられて、ヘディングの競り合いのセカンドボールを拾われることが多かった」

 SC相模原・西ヶ谷隆之監督は前節のAC長野パルセイロ戦からシステムを変えた。GKは田中雄大、DFラインは3バックで右から米原祐、梅井大輝、森本大貴、ボランチに千明聖典、徳永裕大、ウイングバックの右に保崎淳、左に丹羽竜平、前線は1トップに松本孝平で、2列目に谷澤達也と梶山幹太が入った。

 西ヶ谷監督が「DFラインが自信を失っていると感じたので、相手と(人数を)合わせることでしっかり行けるのではないか」と話したように、守備時の混乱を防ぐために、DFラインの人数を相手のFWに合わせた。

 実際に、前半はSC相模原のペースだった。ファーストチャンスは2分、今季初めて左ウイングバックで起用された丹羽が左足でふわりと上げたボールに松本が頭で合わせる。枠に飛んだものの、ポストに弾かれて先制はならず。

 5分にはスローインをペナルティーエリア内で受けた松本が相手を背負った状態から反転して左足でシュート。これはGKにキャッチされる。

 この試合ではJ3で3位、チームではトップの13ゴールを挙げているジョン・ガブリエルがスタメンから外れた。エースとして相手にマークされるようになったジョンは、9月のリーグ再開以降、5試合ゴールから遠ざかっている。

「ジョンがいるけれども、そこに負けずに自分の良さを出して、スタメンを奪うつもりでやっていきたい」と強い気持ちでピッチに立った松本のプレーは、積極性にあふれるものだった。

「怪我から復帰して4カ月経つので、やっと自分のプレーができるようになってきたという手応えがあります」

 前線でボールをおさめたり、空中戦で競り合ったりといった仕事に加えて、目立っていたのが前線からのプレスだ。「味方からのコーチングを待つのではなく、自分から行くようにした」ことで、プレスに行く・行かないという判断が速くなった。残念ながらゴールはなかったが、松本が本来の実力を発揮し始めたのは明るい材料だろう。

 12分、相模原に惜しいシーンが生まれる。3バックの左でボールを持った森本がゴール前にクロス性のボールを送る。「雨も降ってきていたので、誰か触ってくれればいいし、触らなくてもそのまま枠に行くようなボールを蹴った」。森本がイメージした軌道を描いたボールは、しかし、ポストに弾かれた。

 前半の相模原が優位性を持ってゲームを運べたのは、フリーになる選手をうまく作り出せたことが大きい。「FWの脇から攻めようというのは練習中からやっていた」と森本が言うように、3バックのサイド(森本、米原)がボールを持ったら自分で運んでいくシーンが目立った。

 キックオフ時の群馬は3-4-1-2、前線は2トップ+トップ下の並びだった。守備時に2トップは中央付近に残るため、相模原の3バックの両サイドはマークが空きやすい。分析力に長ける西ヶ谷監督はそれを見抜いていただろうし、だからこそ、森本と米原にボールを運んでいくタスクを与えたのだろう。

 ただ、群馬も修正してきた。試合中に2トップ+トップ下から1トップ+2シャドーにして、相模原の3バックに対しては2シャドーがマークするようにしたのだ。サッカー用語では、お互いが全く同じシステムで戦うことを「ミラーゲーム」と言う。こう着状態になった試合は、ゴールが生まれないまま後半に突入する。
   後半、先に動いたのは相模原だった。57分にチッキーニョ、69分に辻尾真二が投入される。裏に抜ける速さを持ったチッキーニョと、サイドから鋭いクロスを入れる辻尾によって、ゴールに向かうアクションを増やすという狙いがあった。78分には3枚目の交代カードとしてジョン・ガブリエルがピッチに入る。

 しかし、83分、フリーキックを跳ね返しきれず、こぼれ球を押し込まれて失点してしまう。「あの時は雨で濡れてスリッピーになっていましたし、もっとハッキリとプレーしなければいけなかった」(米原)

 梅井を前線に上げてパワープレーに切り替えた相模原だったが、同点ゴールは生まれず。0-1。81分に決勝点を決められた長野戦に続き、終盤の時間帯に失点しての敗戦となった。

 プレーそのものは、2チームにはほとんど差がなかった。ただし、ゲーム運びがうまかったのは群馬だった。我慢すべきところで我慢できた群馬と、我慢しきれなかった相模原。それが勝敗となって分かれた。

「前回の長野と、今日の群馬と、ボールを持っている時間も長くなっていますし、良くなってきているんじゃないかという手応えはあります。だからこそ、結果がほしかったんですけど……」(徳永)

 勝てなかったが、全てがダメだったわけではない。良いところは次につなげて、悪かったところは改善する。今の相模原に必要なのは、地味かもしれないが、そうした積み上げではないかと思う。

 

取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)