11月 19 2017

15/J3第32節FC東京U-23戦マッチレポート

投稿者: at PM 10:53  記事カテゴリー: 試合結果



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2017明治安田生命J3リーグ第32節

2017.11.19 13:03KICKOFF@相模原ギオンスタジアム

SC相模原0−0FC東京U−23 

[得点]相模原:—/FC東京U−23:—

|J通算500試合出場を達成したレジェンド

相模原ギオンスタジアムには、その瞬間を祝福するかのような晴天が広がっていた。J3第32節のFC東京U−23戦で、Jリーグ通算500試合出場を達成したGK川口能活は、節目となる試合に臨んだ心境をこう明かした。

「勝ち負けというのは時の運もあるので、勝ちたいからと言って勝てるものではない。でも、自分が最低限(失点を)ゼロに抑えるということを考えて臨みました。500試合ということで、特別な試合ではあるけれど、いつもと同じように準備をして、同じ姿勢で、同じ気持ちで相手に向かっていきました」

大記録を達成したSC相模原の守護神は、その言葉どおり、ゴールマウスを死守した。8分にはFW内田宅哉のミドルシュートをしっかりキャッチすると、33分にもCKからDF山田将之に見舞われたヘディングシュートを正面でキャッチした。0−0で折り返した68分には、FWユ・インスに、FW久保建英とのコンビネーションからペナルティーエリア内へと侵入されたが、川口は左手一本でシュートを弾き、最大の窮地を救った。

試合終了のホイッスルが鳴ると、FC東京サポーターからも「能活コール」が沸き起こる。SC相模原のサポーターからは『炎の守護神俺達の能活J500試合達成!この街とどこまでも!』という横断幕が掲げられ、そのメッセージと大声援に「心を打たれましたし、本当に素晴らしい時間を過ごすことができました」と感謝の言葉を述べた。

「やっぱり、400(試合)から500(試合)に行くまでというのは、自分にとってすごく険しい道のりだった。大ケガをして、磐田から岐阜、相模原とチームを渡り歩き、シーズンを通して出られない時期が続いて、自分の中でも現役をやっている間に500はいかないのではないかと諦めたときもあった。でも、そこに辿り着くことができたのは、起用してくれた監督、コーチ、そして僕を常にサポートしてくれた家族、それ以外の面でいろいろとサポートしてくれた人たちの力があったからこそ達成できたと思う。あとはJ1、J2までしかなかったら、この記録もなかった。J3ができたことにも感謝したい。いろいろな人たちの思いがあって、こういう記録を達成できたんじゃないかなって、本当に感謝の気持ちしかないですね」

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|安定してきた守備と可能性を示した攻撃

試合は0−0のスコアレスドローに終わり、日本サッカー界が誇るレジェンドの節目を勝利で飾ることはできなかったが、それでもチームは成長であり、可能性を示してくれた。

4−4−2システムを採用するようになり、攻守が安定してきたことで、3試合連続無失点を継続。さらには7試合負けなしとなった。ボランチから本来のCBにポジションを移して守備を統率する岡根直哉も、「今日の試合では何度かペナルティーエリア内に侵入されましたけど、それでも守れるという自信はある。自分が後ろに入ったときには、絶対にゼロ、やられても最低1失点に抑えるというメンタリティーをチーム全体に出したいと思ってやっている」と、手応えを話してくれた。

得点こそ奪えなかったが、攻撃にも可能性は感じられる。千明聖典の組み立てから、新井瑞希がドリブルで突破すれば、辻尾真二がスピードを活かしてDFの裏へと抜け出す。22分にはFKの流れから岡根がポスト直撃の惜しいヘディングシュートを放ち、後半開始直後の46分には、DF工藤祐生の縦パスをFW岩田拓也が落とすと、FW久保裕一が狙った。前節2得点を決めた久保は、今節は得点こそなかったが、積極的にシュートを打とうとする姿勢であり、怖さが見られた。

「2トップだと、高い位置でボールを取れるので、今までよりもゴールに近づいている感じはある。今までよりも行けるという雰囲気があるので、それが良い方向に向かっている」

確かに、久保建英や米本拓司を筆頭に、FC東京U−23の面々は技術も高く、随所でうまさを感じた。ただ、その彼らに身体を張って食らいつくSC相模原の選手たちに、何より可能性を感じたし、未来を見た。

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|来季につなげる戦いと思い

正直、優勝の可能生もなければ、J2昇格が懸かっているわけでもない。例年ならば、この時期になると、それぞれが目標を見失い、チームのモチベーションは低下していた。だが、今シーズンの選手たちは、最後まで身体を投げ出して守備に奔走すれば、ゴールを目指して走り続ける姿勢が見られる。そこに選手の未来であり、クラブの未来を感じたのである。再び岡根が言う。

「確かに昇格も降格もないですけど、だからこそ試合に出してもらっている以上、しっかりプレーしなければならない。来年もプレーできる保証は、正直、誰もされていないですからね。そういう危機感をヤスさん(安永聡太郎監督)が言ってくれていることも大きいんだと思います」

その岡根の言葉を、まるで解説するように川口が引き取ってくれた。

「正直、昨季の最後は今季につなげられなかったという思いがありました。今季はもう、優勝もなければ、順位もある程度決まってきているのかもしれないですけど、来季につながる試合ができている。もちろん、全員が来季もこのチームに残れるわけではないし、それぞれの道を歩むことになるかもしれない。でも、来季につなげるという思いで、個人としても、チームとしても前向きに、ポジティブにやれている」

川口はそう言ったあと、「それにね」と言って、言葉を続けた。

「急にこういう状況になっているわけではないと思うんですよね。今季もいろいろなことがありましたけど、1年間、みんなががんばってきたこと、それぞれがサッカーに向き合ってきたことが、ようやくチームとしての一体感になってきている。最後だから、がんばっているわけでもなく、積み重ねてきた結果。結果が出ていない時期も何とかしたいというみんなの思いが、今、シーズン終盤に来て、こういう状態につながっているんです」

今シーズンは、システムであり、戦術であり、それこそ選手の起用やポジションに至まで、模索し続けてきた。その末に4−4−2というシンプルな形に落ち着いたことで、数字であり、結果もついてきている。だが、その過程すべてが無駄になっているわけではない。久保が「試合に出られない悔しい気持ちが前節のゴールにつながった」と話してくれたように、中盤で千明聖典が輝いているのも試合への飢えであり、岡根がCBで力を発揮しているのも、「本来の居場所」で出場したかった発憤である。

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|もがきながら戦ってきた結果

SC相模原は、創設から10年という節目を迎えた。かつてJFL昇格を懸けた大会では2度躓いたように、その道程は決して平坦ではなかった。そのたびに模索し、もがき、未来を探してきた。おそらく、これからもその繰り返しなのであろう。

ただ、優勝が懸かっているわけでもなければ、昇格が懸かっているわけでもない試合に、今季4番目の記録となる5,259人もの来場者が訪れたように、SC相模原には、相模原市には、ポテンシャルがある。バックスタンドがぎっしりと埋まる光景を見て、川口が多くのサポーターに囲まれ、記念撮影をする姿を見て、やはり未来を感じた。

いつも筆者は取材を終えると、バスで帰路につく。バス停へと向かう道では、しみじみと感傷に浸ることもあれば、苛立ちを覚えることもあった。その歴史を見届けてきたからこそ、抱いた喜怒哀楽すべてを思い出しながら「うん。きっと大丈夫だな」と思った。だから最後に、このチームでプレーすることを選んでくれたレジェンドの言葉を贈りたい。

「もがきながら戦ってきた結果が、こうなっているんです」

そんな川口は「501試合目も出られるように、来季も現役を続けられるように、アピールを続けられたらと思います。1試合1試合が勝負なので」と、早くも先を見据えていた。

今シーズンも残り2試合。その後も、その先もクラブの未来は続いていく——。

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