9月 04 2017

10/J3第21節福島戦マッチレポート

投稿者: at AM 12:49  記事カテゴリー: 試合結果



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2017明治安田生命J3リーグ第21節

2017.09.03 15:00KICKOFF@相模原ギオンスタジアム

SC相模原2−1福島ユナイテッドFC

[得点]相模原:76分米原祐、90分岩田拓也/福島:78分ヘナン

今季初の連勝をもたらした執念のゴール

押し込まれていた試合終了間際に訪れた突然の歓喜は、ホームの雰囲気とサポーターの後押しも強く影響していただろう。

その瞬間は、1−1でアディショナルタイムに突入しようかという時間帯に待っていた。ピンチをしのいだSC相模原は、自陣からボールを運ぶと、中央で菊岡拓朗が受ける。菊岡は前を向くと、左サイドを疾走する途中出場の呉大陸へと浮き球のパスを出した。この日が誕生日という呉が懸命に追いつくと、ゴールラインぎりぎりで折り返す。そこに走り込んでいたのは、やはり途中出場していたFW岩田拓也だった。岩田は右足でも左足でも、それこそ頭でもなく、身体ごと胸でボールを押し込むようにシュートを決めた。

まさに執念のゴールだった。2−1で福島に勝利したSC相模原は、今季初の連勝。それは同時に、昨季途中に就任した安永聡太郎監督にとって、初の連勝となった。試合後、記者会見に臨んだ指揮官はこうコメントした。

「チームにとっては大きな前進。今日の試合で勝つか引き分けるかでは非常に違う。失点した後に、何度かピンチがあって、カイジ(藤吉皆二朗)が止めきれずに失点していれば、あの(勝ち越し)ゴールもなかったと思う。そういった意味では、本当に次につながる、大切なものになったかと思います」

会見では「ダブルボランチにしてから連勝。俺の戦術がどれだけダメだったんだというところが(結果に)表れたのかなと(苦笑)」と、自虐して記者の笑いを誘ったが、4−2−3−1システムへの変更とともに、リーグ中断期間中に試みてきた“ボールを握る、運ぶ”というスタイルが浸透してきたからこその笑みでもあっただろう。

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ダブルボランチの一角を担う千明聖典の気が利く動き

試合を振り返れば、SC相模原は、前半から先制できる好機を幾つも作り出した。12分には、相手のクリアを奪った徳永裕大のパスに、抜け出した普光院誠が、GKと一対一になったが、シュートを阻まれた。19分にも右SBを務める辻尾真二のクロスに普光院が頭で合わせたが、これもゴールならず。30分にも辻尾の縦パスに抜け出した徳永が、右サイドから折り返すと、三度チャンスに顔を出した普光院のシュートは大きく枠を逸れた。

「2回目の決定機はちょっと難しかったですけど、どれかひとつでも決めておけば、流れが作れたかなと思います。本当に今日はチームメイトに助けられました」

そう言って普光院は猛省したが、「ヤスさん(安永監督)が言っているペナ角(ペナルティエリアの角)は取れるようになってきている。だからチャンスも多くなっているので、あとは本当に決めるだけです」と、話したのも頷ける前半だった。

先に挙げた以外にも、いわゆる“ペナ角”に侵入して、決定機になりそうなシーンはあった。守備にしても、前半33分には福島ユナイテッドのFW小牟田洋佑にヘディングされるピンチこそあったものの、組織的な守備でボールを奪い返すと、的確につないで逆襲に打って出られていた。

SC相模原が、“前線へ蹴る”のではなく、自ら”ボールを握る、かつ運ぶ”戦い方ができるようになってきている過程には、変更されたダブルボランチもさることながら、そこに入った千明聖典の存在が大きいだろう。試合後に話を聞けば、明るいキャラクターの彼は、「もう必死ですよ。だって、もう、俺、前節、今節と、ちょー久々に(試合に)出たので、とりあえず結果だけほしいなって。何かを変えなければ、また試合に出られなくなるかなって」と、はぐらかす。だが、明らかに彼が中盤の底に位置していることで、攻守が安定してきているのは間違いない。

本人がおどけるなら他の人の証言を用いよう。安永監督は「オカ(岡根直哉)だけではできないことを、千明はすべてやってくれている」と語り、言葉を続けた。

「オカがバンって相手に行って、その後ろをカバーしたり、オカが寄せきれないところを俊敏性を活かして潰してくれる。特にセカンドボールの予測に関しては、かなり貢献してくれているよね」

指揮官がそう話すように、千明は何度も相手のパスをカットすれば、際どいところでは身体を張ってボールを奪い切った。劇的な決勝弾が決まった直前の窮地では、最終的にGKの藤吉がボールをキャッチしたが、一緒になってボールに向かっていたのは、他でもない千明である。そのことを聞けば、「ああいうシーンは嫌で、まじで吐きそうでしたよ」と、また、こちらを笑わせる。そう言った後で「これまで失点も多かったので、守備でがんばろうというところは意識していますね」と、核心を匂わせることも忘れない。

「がつがつとキャプテン(岡根)に行かせて、自分はおいしいところをもらっていくって感じです」と、本人は再びおどけるが、その補完関係もばっちりだ。ここは、先制点を決めたCBの米原祐の言葉を借りよう。

「守備でも自分が行ったところをカバーして挟んでくれたりと、走り回って貢献してくれている。ダブルボランチのほうがやっぱり守備の安定感はありますよね。それと千明くんにボールが入ることで、ボールが落ち着く場所ができて、千明くんに預ければ、さばいてくれるという安心感もあります」

守備だけでなく、攻撃にもその効果は見受けられる。シュートにはつながらなかったが、千明が狙ったDFの背後を突いたパスが通っていれば、チャンスになりそうな場面もあった。そのことを本人に聞けば、また、煙に巻かれたのだが……。

「数秒、(自分のパスが)遅かったんですよね。前線が動いてくれているけど、本当に裏を取れているのかなって思っちゃって。迷うことなく出していれば、パスが通ったと思います。そこは、やっぱり、動きの質が悪いってことにしておこうかな(笑)」

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菊岡が攻撃に専念できることで若手が躍動する

また、このスタイルになって活き活きとして見えるのが菊岡である。千明と岡根のダブルボランチになったことで、持ち前の攻撃センスは、セットプレーだけでなく、流れの中でも発揮されつつある。菊岡自身は「4−1−4−1システムの中でも自分の良さは出せなければいけないんですけどね」と、課題を感じつつ、「今のほうがやりやすいというのはある」と、きっぱりと明言する。

「守備はある程度、オカと千明に任せられるので、自分としては楽させてもらっています」

菊岡が攻撃に比重を置き、高い位置で時間を作れることで、運動量のある徳永であり、普光院が“ペナ角”を狙いに行ける。また、そこに出せるパスの技術を、菊岡は持ち合わせてもいる。菊岡が続ける。

「監督が言っているペナの角を取りに行くことができてきているので、あと、決めるところは個人の問題になってくる。ただ、チャンスは増えてきていると思うし、セットプレーで得点できていることも大きい。チームがちょっと軌道に乗りはじめたかなって、自分としては思います」

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千明と菊岡——背丈であり、雰囲気も似ているふたりではあるが、プレーを見えれば際立ってミスが少ない。その正確なプレーと、気の利く動きは、安永監督が試みる新たなるスタイルに欠かせないピースだと言えるだろう。また、彼らがいるからこそ、徳永であり、普光院であり、さらには途中出場した呉や岩田といった若手がのびのびとプレーできるのだ。ずっとおどけていた千明が最後にこう言った。

「若い選手が多いので、彼らは(監督から)言われたことしかできなくなってしまう。でも、それで中途半端な感じで戦って、負けたり、引き分けたりするのであれば、自分たちでこうしようという表現をしてもいいのかなって思います。すごく言い方は悪いですけど、どうせ負けるなら、思い切りやってみようというのも必要かなと」

実は、それこそが安永監督が求めていることのひとつでもある。福島戦でも後半30分を過ぎ、押し込まれる展開が明らかに増えた。そのときにどう守るのか、そしてどう攻めに転じるのかが、これからの課題であろう。また、途中交代も含め、対峙する相手の特徴を即座につかみ対応することも、選手個々に求められる要素だと、試合後に安永監督は話してくれた。

次節はAC長野パルセイロとのアウェイゲームに挑む。前節、今節は順位的にも近い相手であり、似たようなスタイルを用いてきた相手とあって与しやすかった。ボールを保持する戦い方をするようになったSC相模原に対して、相手が構えてきたら、守備をセットしてきたら、選手たちはどう対応するのであろうか。いぶし銀の選手たちにより、若手が躍動しはじめた。連勝という自信を手にしたSC相模原が目指す新たなるスタイルの構築は、第二段階に突入する。

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