7月 10 2017

07/J3第16節鳥取戦マッチレポート

投稿者: at AM 1:21  記事カテゴリー: 試合結果



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2017明治安田生命J3リーグ第16節

2017.07.09 15:00KICKOFF@相模原ギオンスタジアム

SC相模原1−1ガイナーレ鳥取

[得点]相模原:50分岩田拓也/鳥取:42分岩元颯オリビエ

加入後、いきなりの初出場で初得点を記録したFW岩田拓也

0−1で折り返した50分だった。相手GKのロングフィードを拾ったDF米原祐が、中央に構えるMF保﨑淳へと素早く展開する。前を向いた保﨑は、左サイドを駆け上がる麦倉捺木に、クロスを上げろと言わんばかりの、優しいパスを送った。得意の左足で絶妙なクロスを上げた麦倉が、その場面を振り返る。

「仲間が3人ぐらい(ゴール前に)走り込んでいるのが見えた。そこで(岩田)拓也くんが一番フリーかなと思って、スペースに落とす感じで(クロスを)上げました。自分で打っても良かったのかもしれないですけど、クロスを上げたほうが可能性が高かったので、より確実なほうを選択しました」

FW久保裕一がニアに走り込み、相手のマークを引きつける。ファーサイドにはMF徳永裕大が流れた。中央に走り込んだのは、4日前に育成型期限付き移籍によりザスパクサツ群馬から加入して、後半頭から途中出場したばかりのFW岩田拓也だった。岩田は、麦倉のクロスに合わせて右足を伸ばすと、ゴール右スミにシュートを決めた。初出場初得点を記録した岩田が、得点シーンを回想する。

「本当に、自分の前に良いボールが上がってきて、その前で(久保)裕一さんがフリーランニングしてくれて、相手を引き連れてくれたことで、自分のところにスペースができたので、あとは冷静に流し込むだけでした」

FWジョン・ガブリエルに代わって、急遽、後半開始からの出場となったが、指揮官から何と声を掛けられたのかを聞けば、「試合前日から『とにかく得点に絡め」と言われていた」と話す。それだけに、結果を残せたことには「合流して4日目で戦術的には慣れていないところもありますけど、とにかく自分の良さを出して、得点に絡もうと意識していたので、最初のプレーで得点できたことは本当に良かった。幸先の良いスタートになりました」と、話してくれた。

岩田の得点は、今後の活躍を期待させるものとなったが、それ以上に大きな意味を持つのは、チームが意図した形から生まれたゴールだったということだ。

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両翼を活かすべく、さらにバージョンアップした可変システム

4−1−3−2システムをベースとするSC相模原は、攻撃時と守備時でその形を変える”可変システム”を採用している。これまでは、あくまで右SBである辻尾真二の突破力であり、クロスを活かすためのものだった。そのため攻撃時には左SBを担う工藤祐生がスライドし、最終ラインが、工藤、梅井大輝、米原といった3バックにシフトチェンジ。それにより守備時は右SBの辻尾が高いポジションを取り、迫力あるサイド攻撃を可能にしていた。

だが、前節のセレッソ大阪U−23戦で麦倉が2アシストを記録したように、安永聡太郎監督は、ガイナーレ鳥取戦でその“可変システム”を、さらにバージョンアップさせた。辻尾だけでなく、左サイドを担う麦倉のクロスを活かすために、である。ベースはあくまで4−1−3−2のため、麦倉のスタートポジションは中盤の「3」である。鳥取戦の前半は特にそうだったように、そのため麦倉は中央に絞っている。だが、クロスボールが弾き返された際のセカンドボールを拾う役割が、アンカーのMF岡根直哉だけだと、広範囲にわたりすぎるため、これまで3バックへとスライドしていた工藤が、岡根の横に並ぶことで、2人でクリアボールと相手の攻撃を食い止める役割を担う戦術を試みたのである。岡根と工藤がダブルボランチとなり、中央をケアすることで、右SBの辻尾だけでなく、攻撃時には麦倉が、サイドに開くことができるようになる。だから、後半5分に生まれた岩田の得点は、そうしたチームとしての意図が得点へと結実した瞬間でもあったのだ。

これは前節のC大阪U−23戦を経て、新たに試みられた戦術であり、練習期間もわずか2日とあって、前半からすべてがうまく機能していたわけではない。そこは“可変システム”のキーマンである工藤も認める。

「(前半の最初の時間帯のように)前に放り込む展開が増えると、バランスが崩れてしまうため、自分自身もあまり中央にポジションを移せなくて難しいところもあった。だから、まだ、うまくできていたという感じはしなかったですけど、(麦倉)捺木は良いボールを蹴るので、良い状態でボールを持たせたい。後半は話し合いながら、何度か、『オレが中に入るから、外に開いていいよ』と声を掛けることもできた。監督からは、『このシステムはお前、次第だからな』って言われてますし、もうちょっと周りを見ながら、うまくやっていければと思う。この年齢にしてチャレンジだと思っています」

かく言う麦倉も、自分のために生まれたこのシステムを活かそうとしている。それは1アシストでは満足していないコメントにも現れている。

「あくまで自分のファーストポジションは中盤(の中央)なので、まずはセカンドボールを拾うというところで、ポジションは絞り気味になる。ただ、後半はボールを持てるようになり、スペースができてきたことで、サイドに開くことができるようにもなった。(工藤)祐生くんが分かりやすく指示してくれるので、お互い意見交換しながらも、少しずつ形ができた。そこは後半になればスペースができてくると、監督から言われていたので、狙い通りだったかなと。自分がクロスを上げるためのシステムだったので、その中で1アシストしたことは自信になりますけど、前半から、もっとチャンスを作れたらなと思います。何より、勝つためのアシストがしたい。(第7節の)アスルクラロ沼津戦も、前節のC大阪U−23戦も、今日(の鳥取戦)も、自分がアシストした試合は、引き分けですからね。次こそは勝つためのアシストがしたい」

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かつてないほどのチャンスを作り出した鳥取戦

4−1−3−2システムを軸とした可変システムが機能しつつあり、サイドからのクロスという攻撃も形になってきた。安永監督も「打った相手選手を褒めるべき」と賞賛したほどのゴールで失点したとはいえ、相手のクロスを弾き返せるとの自信を漲らせる守備にも堅さがある。

ただし、鳥取戦も1−1の引き分けに終わったように、SC相模原は勝ち切ることができずにいる。そこには、安永監督が試合後、指摘した「(ペナルティーエリア内で)振り抜く覚悟」が課題として挙げられるだろう。

鳥取戦はかつてないほどの決定機を作り出した。前線からのプレスがはまり、19分には工藤の斜めのパスから久保が、フリーでミドルシュートを放った。続く29分には相手GKへのバックパスにジョン・ガブリエルが猛追してボールを奪うと、拾った久保がシュートを相手に当ててしまう場面もあった。さらに40分にもDFが弾いたボールを拾った麦倉のシュートが浮いてしまうシーンもあった。後半も、68分に岩田のパスから徳永裕大が切り返してシュートしたが、これも枠を捉えることができなかった。他にも挙げれば、キリがないほど決定機を作りながら、SC相模原は1点しか奪えなかったのである。

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勝ちきるには、ゴール前で枠へと振り抜く覚悟があるか

試合後、安永監督は、Jリーグを代表するストライカーのコメントを引用して、こう選手たちにメッセージを送ったことを教えてくれた。

「あの佐藤寿人が言ってたんだよね。『僕は覚悟を持ってペナルティーエリアに入っているし、覚悟を持ってボールをを要求しています。その全責任を負う覚悟を持ってプレーしている』と。その言葉は彼らにも伝えました。だからこそ、その覚悟を持ってペナルティーエリアの中で足を振ってほしい。それはFWだけでなく、あのエリアに入ったら、ポジション関係なく、全選手に覚悟を持って、足を振り抜いてほしいと思う。それができるトレーニングをこれからは積み上げていきたい。まあ、その行程にチームが辿りつきつつあるというのは前向きに考えられるところかもしれないですけどね」

68分のシーンで、強引にシュートを打つのではなく、徳永へのパスを選択してしまった岩田も、初ゴールに喜ぶだけでなく、自らを省みていた。

「徳永裕大選手に出した場面は、自分で行ける場面でもあったんですけど、そこでパスを選択してしまった。FWとしてはそこでシュートを打つというのも大事になってくる。周りを使いながらというのはありますけど、自分の良さはFWなので、積極的に足を振ってゴールを狙っていきたいなって思います」

明治大学の後輩である岩田がゴールを決めただけに、チャンスを外した久保は悔しさを噛みしめていることだろう。それは前半途中で交代したジョン・ガブリエルにしても、岩田からのパスをものにできなかった徳永にしても同じはずだ。途中出場ながら77分に決定機を外してしまった普光院誠も含め、『枠へと振り抜く覚悟』を持てるかどうか。

それは、守備陣が奮闘して相手の攻撃を防ぎ、味方が大事にゴール前までつないできてくれた大切なボールではある。そのチームメイトたちが紡いできたボールを、自分がシュートする覚悟を持てるか。チームの責任、自分の覚悟が問われている。そして、その重みをゴール前で解き放つことこそが、勝ち切ることへとつながるのかもしれない。

ホームでの連戦となる7月16日の鹿児島ユナイテッドFC戦で、J3リーグも前半戦を折り返すことになる。その一戦で、選手たちが見せてくれる“確かな覚悟”に期待したい。