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07-03-2018

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HONDA MATCHREPORT vol.3『糸口はサイドのコンビ?』

糸口はサイドのコンビ?

6月のホームゲームは2試合続けて雨に降られたものの、前節は約1カ月半ぶりに勝利を手にした。それから1週間後、今節も17時キックオフのナイトゲームで、2週連続の歓喜へと向かって突き進むはずだった。

 梅雨から一転、30度を超える真夏日が続き、夕方にも関わらず気温29℃・湿度57%と、相模原ギオンスタジアムは暑すぎるくらいだった。しかも上空は、強風が吹き荒れている。この試合もまた、天候が試合に影響するのではないかと思われた。前半、風上に立ったSC相模原にとってはチャンスの到来か──。

 だが、試合は期待どおりにはいかなかった。

 前半18分、相手FWが鮮やかなマルセイユ・ルーレットで中盤を突破して、右サイドで受けたサイドハーフからのクロスはGK田中雄大がパンチングで弾いたものの、これが丹羽竜平を直撃して、跳ね返ったボールは無情にもゴールへと転がった。さらに32分、エリア外の中央で、相手FWのお手本どおりのポストプレーから、MFに豪快なミドルシュートを決められた。SC相模原は、前半で2点のビハインドを負ってしまった。

 38分、反撃を開始。この試合4本目の左CKで、保﨑淳のクロスをファーの工藤祐生が受けて対角にループシュートを放つと、GKと競り合った谷澤達也がおでこで触れて1点差に。試合の行方はわからなくなった。

 だが、総じて前半は、相手にいいようにやられた。元日本代表の宮本恒靖監督が率いるガンバ大阪U-23の若い選手たちはポテンシャルが相当に高く、そして実際に強かった。

 中盤で相手に強いプレッシャーを掛けられないために、ボランチが前を向き、中央突破、左右への展開を含めて「相手のプレッシャーを感じないようなポジショニングや味方の関係性の構築は、分析を踏まえて今週のトレーニングでやってきた」(宮本監督)と、狙いどおりの形から主導権を握られてしまった。

 SC相模原は後半から成岡翔を投入したこともあって、中盤でしっかりとボールをつなぎながらチャンスを生み出し、自分たちのペースで試合を掌握しているかのように見えた。だが、それは少し違う。

「相手が落ちたというだけ」と西ヶ谷隆之監督が振り返ったとおり、中盤でボールを持てていたが、無理をしないでカウンターを狙う相手からすれば、むしろ好都合だったのかもしれない。結果的に、ゴールにつながったのは右サイドのジョンの突破から、ゴール正面で受けた谷澤達也が倒された一度だけ。ジョンは2試合連続のPK弾でランキングトップに立つ9ゴール目をマークしたが、その得点は勝利には結びつかなかった。

 SC相模原は2-3で敗れ、連勝を取り逃がしてしまった。

 試合後の記者会見は、少し異様な空気だった。ここ数試合の“恒例”かのように、西ケ谷監督は、普段と変わらない柔らかな物腰と表情で語り始めたが、口をつく言葉は、まったく柔らかなものではなかった。

「勝負は大事だが、(観客の)心を打つとか頑張っている姿勢を見せないといけない」、「選手たちはこのステージで何をしようとしているのか」、「選手には“やらせないといけない”」、「岐路というか、(そもそも)何を変えないといけないのかというところ」、「こんなチームになってしまっている責任を感じる」

 SC相模原が正念場を迎えていることは明らかだろう。経験値の高い選手が集まっても、J3は簡単に勝てるような舞台ではないことは、ここまでの戦いでよくわかった。では、活路はないのだろうか。

 西ケ谷監督が最近の試合でよく語るのは「トレーニングや試合、戦術うんぬんの前に、そういう(選手の気概、戦う気持ち、姿勢などメンタリティーの)ところがないとサッカーにはならない」ということだ。

 確かにピッチでは、意図の見えづらいプレーや、逃げの選択肢を選ぶシーンが多いように感じる。監督も選手も、まるで呪文のように「変わらなければいけない」と口にしている。やはり、選手の意識改革を続けることでしか、クラブは上昇していけないのだろうか。だが、それも少し違うように感じている。

 もちろん、選手がピッチで戦う姿勢を見せることは絶対条件だ。しかし選手が“戦っている”姿は随所に見られるし、戦術的な見どころも、チャンスを作り出す過程もある。ヒントは、すでにピッチ上にあるはずだ。

 その最たる例が「コンビ」ではないだろうか。どういうことか。

 例えば前節、貴重なPKを獲得したのは、左サイドの保﨑淳とジョンのパス交換だった。今節も引き続き、そうした“縦や横”の連係が光っていた。左サイドハーフの起用が続いている保﨑は、2トップの左の谷澤達也との何気ないコンビネーションで、縦に抜け出すイメージを共有していた。

 後半、61分に丹羽竜平に代わって大塚翔平がピッチに立つと、前半途中から菊岡拓朗と左右のポジションを入れ替えていた保﨑が右サイドバックに移り、今度は右サイドでスムーズな連係を見せる。大塚がインサイドに動けば保﨑がラインを上げてスペースを埋めて高い位置を取り、右サイドから相手を攻略していた。

 77分、菊岡に代わって辻尾真二が投入されると、大塚が左へ動き、辻尾は右サイドに配置された。今度は保﨑と辻尾の縦のラインが呼吸を合わせている。いずれも、2人の関係からチャンスが生まれていた。

 疑いようもなく、最後まで闘志を出して戦うピッチ上のキーマンは保﨑だろう。誰が、どこに入っても、身近な2人の関係を生かした質の高いコンビネーションを見せ、戦況を変えるプレーを続けていた。

「ポジションも(今シーズンが始まってから)いろいろと変わっているけど、別にやることは変わらない。見えてる局面では、ちゃんとやれているんだよ」(保﨑)

 チーム全体としてイメージを共有し切れていなくても、局面では質の高さをはっきりと示している。そうであるならば、こうした「コンビ」をスタートにして、左サイドのコンビ、右サイドのコンビ、ボランチとFWのコンビとやれることを増やし、その関係性がトリオとなり、ユニットとなっていけばいいのではないか。成岡翔が「アタッキングサードでどう崩すのかは、まだ選手のイマジネーションでどうにかしないといけないところでもある」と語っていたが、コンビのイマジネーションこそ、SC相模原の糸口に思えてならない。

「クラブはいろんな問題を抱えています。プロ選手、アマチュア選手がいる中でのトレーニングですし、選手の力やバランスなど、いろんなことをもっと整理していかないといけないと思っています」

 西ケ谷監督はそう言って現状を省みるが、だからこそ、一つずつ整理していけばいいのだ。もう14試合が過ぎたが、まだ18試合ある。少し先にあるトンネルの出口へと向かう時間は、まだある。

 ピッチには確実に、ぼんやりとした光が差し込んでいる──。
 

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取材・文 本田好伸(SC相模原オフィシャルライター代行)
※オフィシャルライター・北健一郎がロシアW杯取材中のため、6月のホームゲームはライター・本田が担当します