SC相模原

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05-11-2018

 お知らせ 

KITAKEN MATCHREPORT vol.4


最高の1日


 5月6日の相模原ギオンスタジアムには幸せな空気が充満していた。「住宅情報館スペシャルサポートマッチ」と銘打たれたこの日は、12時にはなでしこリーグのノジマステラ相模原の試合も行われる、相模原初のダブルヘッダー開催だった。


 スタジアムの周りの様子は、お祭りそのもの。オリジナルTシャツの配布に大行列ができている。高校生が特設ステージで和太鼓を打ち鳴らせば、子供たちは巨大なサッカーゲームやシャボン玉作りに興じている。射的や輪投げのできる縁日ブースまで出ている。相模原名物、フードパークの充実ぶりは相変わらずだ。


 試合前の選手紹介にも仕掛けがあった。スタメンが読み上げられると、子供が描いた選手の似顔絵がスクリーンに映し出される。「かわいい」「似てる」という声が上がる。サッカーライターの仕事を始めてから15年、世界中のスタジアムに行ったけど、こんな選手紹介は初めて見た。


 ふと、思った。サッカー観戦って、こんなに楽しいものだったっけ。こんなこと言っちゃいけないのかもしれないけど、この日スタジアムに足を運んだ人たちは、“メインイベント”のSC相模原vsグルージャ盛岡の試合がつまらなくても、ホームチームが負けたとしても、「楽しかった」と感じてスタジアムを帰ったんじゃないかと思う。


 SC相模原を応援する人にとって、ゴールデンウィーク最終日は最高の1日になっただろう。何しろ、試合以外のところでこれだけ楽しめて、なおかつホームチームが勝ったのだから。


 1勝1分け。ゴールデンウィークの2連戦でSC相模原は負けなかった。もちろん理想は2連勝だが、中2日という試合日程を考えれば、勝ち点4は上々の出来と言っていい。順位も10位になった。消化試合数で2試合多いチームもあるので、上位陣の背中がついに見えてきた。


 勝因は「ローテーション」にある。西ケ谷隆之監督は群馬戦で先発していたダブルボランチ、成岡翔とサムエル・アウベスをベンチスタートにしたのだ。


「まったり感を出したくなかったというか。盛岡は後ろからつないでくるチームなので、守備からしっかり入って、奪ったところですぐに切り替えて推進力を出したかった。チームとして、中盤の前の3人とボランチの2人の5人でまずは守備へのアクションを仕掛けるために、(前節から)ダブルボランチを変えた面もあります」


 体力的にフレッシュな選手を、最もプレー強度が求められるボランチに配置し、試合の主導権を握る。スタメンには、そんな狙いが感じられた。強い風が吹いていた中、風上をとった前半は一方的に相模原が押し込んだ。


 とりわけ、効果的だったのがロングボールだ。GK田中雄大のゴールキックは風に乗って、相手ペナルティーエリア付近まで飛ぶ。ボールを失った後は高い位置にポジションをとって素早く回収し、二次攻撃、三次攻撃を仕掛けていった。


 だが、前半はスコアレスで折り返してしまう。チャンスの数を考えれば0点はいただけない。13分の徳永裕大、18分の辻尾真二、28分の大塚翔平、少なくとも3回は「決定的」と表現していいシーンがあった。


「前半は風上をとったので、(風下になる)後半はああなることはわかっていた」(菊岡拓朗)


 風上の前半で押し込むのも、ボランチが運動量を生かしてアグレッシブに奪いに行くのも、プラン通りだった。ただ、ゴールは決められなかった。それによって、自分たちでゲームを苦しくしてしまったのは反省点だろう。


 後半は風下になった相模原が押し込まれる展開になった。守勢に回っていた流れを変えようと、相模原が動く。60分、ベンチスタートだった谷澤達也と成岡翔の2人を同時に投入したのだ。


「後半の交代は1枚ずつにする考えもありましたが、ホームですし、勝ち点3を取りに行こうというメッセージを込めて2人を同時に交代しました」


 西ヶ谷監督のメッセージは、すぐさま結果になって表れた。65分、ショートコーナーでつないでから菊岡が左足でクロスを上げる。梅井大輝がそらすと、ファーのジョン・ガブリエルが押し込んだ。頼りになるエースの、今季5点目はホームに勝利をもたらす貴重なゴールになった。


 狙い通りの試合展開だったわけではい。前半でゴールを決めていれば、谷澤、成岡といったベテランを休ませることもできたかもしれない。


「今日は1-0で勝ちましたけど、もっと自分が攻撃のパイプ役になったり、決めるところを決めたりしないと、レギュラー争いには食い込んでいけないですね」と悔しがったのは久々にスタメンのチャンスを与えられた徳永だ。


 今週末13日には天皇杯・神奈川県予選の決勝戦、Y.S.C.C.横浜戦が控えている。初の天皇杯本大会出場をかけた試合は、この日のリーグ戦と同じぐらい大事なものだ。


「今まで出たことがない大会なので、チームのみんなが勝ちを望んでいるというのはわかっています。勝てるように、また1週間準備していきたいと思います」(菊岡)


 天皇杯の決勝は、結果以外には何もいらない、そんな試合だ。ニッパツ三ツ沢球技場に、この日のようなお祭りムードは全くないだろう。お祭りになるのは試合が終わった後、勝利のファミリアを踊る時だ。



取材・文 北健一郎(SC相模原オフィシャルライター)